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来日は予定の半数以下に−2008年重大ニュース(8)「インドネシア人看護師・介護福祉士候補者受け入れ」
2008年12月27日00時43分 / 提供:
医療・介護情報CBニュース 夏の盛りの8月7日、色とりどりのシャツに身を包み、大きな荷物をカートに載せた一団が成田空港に降り立った。経済連携協定(EPA)に基づき、初めて国が受け入れたインドネシア人の看護師・介護福祉士の卵たちだ。
経済連携協定とは、物品やサービスの貿易の自由化のほか、人の移動や投資などについても含む包括的な協定。日本は2002年11月30日に発効したシンガポールとのEPAを皮切りに、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイとEPA、東南アジア諸国連合(ASEAN)と包括的EPAを結んでいる。また、今年12月11日から新たにフィリピンとのEPAが発効した。
このうち、看護師・介護福祉士候補者らの受け入れを含んでいるのは、インドネシア、フィリピンの2か国とのEPAのみ。当初、インドネシアよりも先にフィリピンとの間で協定が締結されていたが、フィリピン国内の批准の遅れにより、インドネシアとの協定が先に発効することになった。
フィリピン人の看護師・介護福祉士候補者らについても、来年から2年間で1000人を受け入れることが決まっている。
インドネシアとのEPAは、今年7月1日に発効した。「『自然人』の移動及び関連する協力」について、看護師・介護福祉士候補者の入国、一時的な滞在を許可するものだ。
入国の条件は、看護師の場合、インドネシアで看護師資格(看護学校の修了証書V取得または大学看護学部卒)を持ち、2年以上の看護師実務経験があり、日本人と同等報酬の雇用契約を締結していること。
介護福祉士の場合は、「大学または高等教育機関の修了証書V以上を取得し、かつ6か月程度の介護の研修を修了して介護士として政府から認定された者あるいは看護学校修了証書V取得か大学の看護学部卒業者」で、日本人と同等報酬の雇用契約を締結していることが条件だ。
入国後は、6か月の日本語研修、看護・介護導入研修を受け、その後、病院や介護施設で看護助手やヘルパーとして働きながら研修を受ける。看護師や介護福祉士の国家試験を受験し、合格すれば看護師、介護福祉士として就労できるとされている。
資格取得までの在留期間は、看護師が3年、介護福祉士が4年。看護師は3回、国家試験を受ける機会があるが、介護福祉士は国家試験受験には3年間の実務経験が条件になるため、試験は1回しか受けられない。
2年間で看護師400人、介護福祉士600人の計1000人が来日することになっており、初年度は看護師200人、介護福祉士300人を受け入れる予定だった。
ところが、準備期間が短かったため、送り出す側、受け入れ側とも体制が整わず、7月15−18日に行われたマッチングの結果、正式に受け入れが決まったのは介護福祉士候補114人、看護師候補112人の計226人にとどまり、予定の半数にも満たなかった。
その後、雇用契約の段階で辞退した例などもあり、最終的に来日したのは看護師、介護福祉士共に104人の計208人だった。
■受け入れは人材不足解消のためか
今回の受け入れについて、「看護、介護の人材不足解消のためでは」との声がある。
インドネシア人看護師候補者2人を受け入れることを決めたある医療機関の担当者は、「今後の医療現場で、少子・高齢化などにより間違いなく訪れる人材不足を念頭に置いて、今ではなく、将来について考えて決めた」と語る。
しかし、看護師候補者1人の受け入れに、この医療機関では3年間で1000万円掛かると試算。それだけの費用を掛けても、候補者らが国家試験に合格する保証はなく、「賭けと同じだと思っている」と、担当者は本音を明かした。
一方、日本看護協会は「今回の受け入れは、EPAに基づくものであって、看護師不足への対応ではない」との見解を表明。
同協会の久常節子会長は、「看護職の確保対策は、離職防止が基本であり、労働条件の改善なしには看護師不足は解決しない」と指摘。さらに、米国の例を挙げ、「外国人看護師を受け入れることによって、労働条件が悪化した結果、看護師不足がさらに加速した」として、受け入れ後の状況を注視していく必要性を強調している。
■候補者らは、今
候補者らは現在、海外技術者研修協会(AOTS)と国際交流基金が行う日本語研修の最終段階を迎えている。その様子を取材した。
当日、取材したクラスで行われていたのは「専門日本語」の授業。看護、介護の現場で実際に働き始めた際に、できるだけスムーズに溶け込めることを目的としている。
スクリーンには「ガーゼを交換する」「結果を予測する」といった日本語の文章が並んでいた。来日時、日本語をほとんど知らなかった彼らだが、平仮名だけでなく漢字も少しずつ読める程度にまで、語学能力が高まっていることをうかがわせた。
研修開始時に記者が取材した看護師候補者のヌル・フダさんが、再度取材に応じてくれた。
日本での生活に「慣れました」と語るヌルさんは、「日本語の勉強は面白いけど、漢字は難しい」と、流ちょうな日本語で話した。
研修後は、青森県内の医療機関で国家試験の合格を目指すヌルさんだが、「国家試験は漢字がいっぱいで、振り仮名がない。自信がない」と不安をのぞかせた。日本語研修の担当者も、「医療機関側が学習支援環境をつくることが不可欠」と強調している。
この担当者は今回の受け入れについて、「準備期間が非常に短かった」と振り返る。AOTSでは、7月までにフィリピン人が来ることを想定して教材を開発していたという。「7月になり突然、インドネシア人が、しかも8月に来るということで、急きょ教材を変えるなど、自転車操業で準備した」。
今後の候補者らの受け入れについては、「国家試験までを見据えたプログラム作りが必要なのではないか」と指摘した。
来年も、外国人看護師・介護福祉士候補者らの受け入れは続く。インドネシアに続き、フィリピン人の候補者らの受け入れも決まり、2年間で1000人が来日する予定となっている。
外国人看護師の受け入れで見解-日看協会長
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