アフィリエイト広告を利用しています

広告

posted by fanblog

サルカメ合戦 I


綺麗になりたければココ←




フィリピンの「サルカメ合戦」
-「サル」の古語に関する脱線の多い考察-


この稿では、古代日本語の「サル」を表す語がフィリピンのものと同じである事を述べるのですが、まずはフィリピンの民話の紹介から話しを始める事にします。

フィリピン中部に伝わる民話に、

"How Pagong Made a Fool of Matsing" (いかにカメはサルをコケにしたか)


というのがあって、これが日本に伝わる「サルカニ合戦」の前半部分に非常に良く似ているのです。どれくらい似ているかというと百聞は一見に如かずで、私が見た絵本に載っていたさし絵を見て下さい。日本の民話ではサルがカニに青柿を投げつけるのですが、フィリピンではサルがカメにバナナの皮を投げてます。

(出典: The Carabao-Turtle Race and Other Classic Philippine Animal Folk Tales Tahanan Books for Young Readers Manila [1993] 収録) 

お話しはこの絵から想像される通りですが、一応、紹介しておきます。

ある日、カメ(Pagong)と彼女の親友のサル(Matsing)が魚を取りにいきました。

すると河からバナナの木が流れてきました。サルはカメに頼んで木を岸に引き上げさせます。

カメは木を植えてバナナの実が成るのを待とういうのだけれど、サルはすぐに分け前をよこせと駄々をこねます。そこで木を半分に分けるのですが、サルは葉っぱの付いた上半分を取り、残りの根の付いた部分をカメに渡します。浅はかなサルは根っこの部分は不要と考えたのです。

サルが受け取った木はすぐに枯れてしまうのですが、カメが植えた根は見事に育ってバナナが実ります。それで図のような展開になる次第です。

ここから先がよく分からんのです。

カメがバナナの木の根元にイバラを敷いて仕返しするのだけれど、怒ったサルがカメを捕まえると、カメが「私は水が怖いので河に投げ込むのだけはやめてくれ」と言うのでサルはカメを河に投げ込むのですね。それでカメがまんまと逃げおおせて、お話しは終わり。

そもそも、サルはカメに頼んで河を流れるバナナの木を取らせたワケですよ。水が怖いというカメのウソをなぜ見抜けなかったか、私には全然分からない。

さて。
後半から、日本版はフィリピン版と大きく異なり、日本人が好んだ「仇討ち話し」に展開していきます。後半の仇討ち話しの方は、なんとグリム童話に良く似た話しがあるのです。


グリム童話 第41話 「コルベス氏」

オンドリとメンドリが、ハツカネズミに馬車を引かせ、コルベス氏の家へと旅に出る。このコルベスという人物が何者なのかは全く説明がない。一行にネコが加わり、更に、石うす、タマゴ、カモ、留め針、縫い針が加わる。

やがてコルベス氏の家に着くが、コルベス氏は不在で、全員が家のあちこちに隠れる。

そこへコルベス氏が帰ってくる。コルベス氏が暖炉のそばに行って火をおこそうとするとネコがコルベス氏の顔じゅうに灰を投げつける。コルベス氏は急いで台所に行き、顔を洗おうとするとカモが水をかける。手ぬぐいで拭こうとすると、タマゴがころがってきて、つぶれ、コルベス氏の目にこびりつく。コルベス氏は一息つこうと椅子にこしかけると留め針が刺す。

最後は、家を出ようとしたコルベス氏に石うすがとびおりて殺してしまう。

悪者のサルをやっつける方法が、「猿蟹合戦」とソックリです。これに似た話は27話の有名な「ブレーメンの音楽隊」にもあります。

「平凡社・世界大百科事典」によると、類似した民話は広く分布(ヨーロッパ・モンゴル・インドネシア)しており、アジア起源ではないかとの事です。

仲間が一緒に旅をすること、悪者が弱い者いじめをすること、数個の動物または品物がそれぞれの場所に隠れ、その習性に従って悪者を襲い、追い出しまたは殺すというストーリーが共通しています。

仲間としてはロバ、イヌ、ネコ、雄鶏、雌鳥、カモ、サソリ、ハチ、留め針、縫い針、卵、栗、牛糞、石臼、しっくい、などで、悪者としては泥棒、コルベス様、宿屋の亭主、オオカミ、サルなどが現れる、そうです。(青字は日本民話の登場動物あるいは登場物。)


古形の再構

おそらく、日本の「サルカニ合戦」は元は異なるフタツの話が合体して形成されたものと考えられます。

ヒトツは前半部分の「手に入れた拾得物をめぐり強者が弱者を収奪する話し」ですが、日本版、フィリピン版ともに「目先の利益に捕らわれず栽培作物を辛抱強く育てた方が最後には大きな利益を得る」という「農民向け教訓話」の要素を含むのが興味深いところです。

もうヒトツは後半の「悪者を弱い者が団結してこらしめる、もしくは殺す話し」で、上に述べたように、モンゴル・インドネシア・日本・ヨーロッパに分布しています。但しインドネシア版には石臼は出てこないそうです。石臼が出てくるのはモンゴル版だそうです。

単純に考えれば、「猿蟹合戦」は、前半がフィリピン、後半が北ユーラシア系です。このHPでは、日本語はオーストロネシア語とアルタイ系言語が混合してできたという説を紹介かつ展開しているワケですが、この例では民話までもが北と南の混合要素で出来ているのです。

柳田國男がこの民話の古形を推定する論文を書いていて、やはり前半と後半の二つの独立した話しが合体したものと結論を下しているそうです。更に柳田は、前半部について、日本各地に伝わる類話を分析し、「サルとカニが餅をめぐって争いになるという話しが古形」と考えたそうです。(後半部についてはフィンランドの学者が論文を書いているとの事。)

しかしそうだとすると、日本版とフィリピン版がともに、
  1. サルは目先の利益を優先する
  2. 弱者は作物を辛抱強く育てるがサルに収奪される
いう顕著な共通要素を持っている事を説明できません。

私の「空想」ですが、「猿蟹合戦」は有史以前に遡る古い起源を有するのではないか?この「空想」を証明する何の助けにもならないのですが、以下に日本版とフィリピン版の民話に共通して登場する悪者、「サル」の語源について考察します。少なくとも「猿」を表す語が有史以前にフィリピンからやってきた事はかなり確かだと思われます。
(この語は村山先生も取り上げてません。)

この記事へのコメント

   
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。