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2020年04月11日

岩田健太郎医師「ロックダウンと言い続けた理由」内田樹との対談で明かしたコロナ対策の実情




 岩田健太郎医師「ロックダウンと言い続けた理由」 

 内田樹 との対談で明かしたコロナ対策の実情


           〜〈AERA〉AERA dot. 4/11(土) 7:00配信 〜


      041142.jpg

 いわた・けんたろう 1971年生まれ 医師・神戸大学病院感染症内科教授 / うちだ・たつる 1950年生まれ 思想家・武道家・神戸女学院大学名誉教授 写真 楠本涼

 〜新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が7都府県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・大阪府・兵庫県・福岡県)に発出されて3日が経った。期間は5月6日迄の1カ月間。10日午後には、愛知県も独自の緊急事態宣言を出した。各都府県の知事が住民の外出自粛要請などの措置を執る。只強制力は無く飽く迄「要請」と為る。
 そんな中、以前から外出を控える要請の必要性を強く提唱して居たのが、神戸大学病院感染症内科の岩田健太郎教授だ。記憶にも新しいクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」内の感染対策をYouTubeで配信した事が切っ掛けで、新型コロナウイルスに対しての世間の目と意識は大きく変わった。その後もツイッター等のSNSを通じて、敢えて「ロックダウン」の言葉を用いて喫緊の規制を求めて来た。
 週刊誌「AERA」では4月3日(金)岩田医師と本誌コラムニストで思想家の内田樹氏との緊急対談を行った。聞き役に廻った内田氏は水際での対応や東京五輪への影響等様々テーマを岩田医師に投げ掛けた。此処では、その対談の一部として「外出を制限する事」の意義に付いて論じる〜


 内田樹 2月に、岩田先生がクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の状況をYouTubeで世界に向けて発信されたのを見て、大きな衝撃を受けた次第です。以来、新型コロナの問題は私達の生活のアラユル側面に影響を及ぼして居ます。岩田先生は感染拡大を防ぐ為に外出を制限するロックダウンの様な規制が必要と言われて居ますが、医師の視点からどう云う事なのでしょうか。

 岩田健太郎 先ず、ロックダウンには二つの意味が有ると私は考えて居ます。一つはエリアの内外の出入りを原則禁ずる事。もう一つは、中に居る人が外に出無い事で「ステイ・ホーム」の事です。その二つが骨子に為ります。
 但し、運用に当たっては濃淡が有ります。今イギリス・アメリカ・スペイン等、ロックダウンして居る沢山の国が在りますが、その内容に付いては様々です。食料品を買うのは全面OKな国も在れば、外出に時間制限を設けて居る国も在ります。
 最近イタリアでは、子供達が外出するのを認めました。フランスのパリでは散歩もOKにして居ます(その後この方針を転換したとの報道もあり 4月8日時点)鉄道やバスも完全にストップするのでは無く、警察官や救急隊員医療従事者は通勤出来る様にする等運用の仕方は様々です。


 内田 日本では法的な問題も有りますね。

 岩田 はい。ですので、戒厳令的なロックダウンは難しいですが、新型インフルエンザ特措法に依って外出を控える要請を出すのが現実的だと思います。

 ・・・対談から4日後の4月7日夕方、東京・埼玉・千葉・神奈川・大阪・兵庫・福岡の各都府県に緊急事態宣言が発令され、住民の外出自粛要請等が現実化した。

 岩田 では、何故外出を規制する必要が有るのかをご説明します。感染症は細菌やウイルス等の微生物が身体の中に入って病気を起こします。そして、その微生物が他の人に感染する事で病気が広がって行きます。詰り、感染症には必ず感染経路が・・・即ち「道」が有る訳です。道が無い感染症は存在しません。

 内田 コロナウイルスの場合は?

 岩田 コロナは、感染者のクシャミや咳で飛んで行く飛沫が「道」に当たります。飛沫が飛ぶ距離は約2m。それを吸い込む事で感染します。もう一つの経路は「接触」です。何処かに付着した飛沫を手で触り、そのウイルスが着いた手指が口や鼻等の粘膜に触れる事で感染します。
 詰り、その二つの感染経路を遮断すればコロナには感染しません。只それを遮断するのが難しい。皆さんが着けて居るマスクは、自分の咳の飛沫の飛散を防ぐ効果は有りますが、残念な事に、横や下の隙間から空気中の微細な飛沫が入り込んでしまう。感染ブロックには余り役に立た無いのが現実です。「布マスク」が流行語の様に為って居るそうですけど、綿の繊維は隙間だらけなのでウイルスをブロック出来ません。


 内田 なるほど。

 岩田 マスクと共に、感染拡大を防ぐ為に好く言われる「ソーシャル・ディスタンシング」は、他人と2mの間隔を空ける事で飛沫を浴び無い様にすると云う対処法です。東京都が求めている「3密を避ける」と云うのも飛沫の曝露を防ぐ事が目的です。しかし、現実的にソーシャル・ディスタンスを保って生活するのは困難です。電車やバスに乗れば周囲に人が沢山居ますし、街を歩いて居ても2mの距離を常に保つのは難しい。
 そこで各国で行われて居るのがロックダウンです。家から外に出ず人に会わ無ければ、原理的にウイルスに感染する事も他人に感染させる事も絶対起こりません。新型コロナには現在、治療法もワクチンも無い。対処法が存在しないので感染し無い事が一番なんです。
 その為にはロックダウンの様な制限を加えるしか無い。東京の感染者は3人・17人・40人・97人・・・と日を追う毎に指数関数的に増えて居ます、この増え方が危ない。ニューヨークもイタリアも当初は今の東京と同じ様な増え方でした。ですが、直ぐに1日で1千人・2千人と患者が増えて制御出来無く為りました。


 ・・・国内で確認された感染者数は、4月9日23時時点で5448人・死者は108人(クルーズ船を除く)内、東京の感染者数は1519人に上る。

 岩田 新型コロナの特徴は「数のウイルス」で有る事です。5人や10人が感染してもどうって事有りません。殆どは自然に治りますが、これが1,000人・1万人に為ると抑えられ無く為ります。昨日(4月2日)東京で97人の感染者が出たと報道されました。
 これは夜空の星の光が何年も掛かって地球に届くのと同じ様に、現在より前の時点でウイルスに感染した人の数を表して居ます。新型コロナは潜伏期が大体5日間、発症して病院で感染が判る迄4〜5日なので、およそ「10日前」の感染の姿を見て居る訳です。と云う事は、今日東京をロックダウン等の制限を加えても、その効果が現れるのは10日後と云う事に為ります。
 その間は、患者が増え続けるのを傍観するしか有りません。しかし、規制を1日延ばせば、その時間分、指数関数的な増加を続ける事に為る。手が着けられ無く為る前にロックダウンを判断するなら、直ぐにでも遣ら無ければ為ら無いと云うのが、僕がズッとロックダウンと言い続けて来た理由です。


 内田 デメリットもありますね。

 岩田 はい。勿論大きなデメリットがあります。外出を規制する事で社会生活が或る程度ストップする訳ですから、経済的な損失は大きいしお店を営業して居る人に捕っては死活問題です。一般の人も快適な生活が営め無く為ります。失うものは多く有りますが「東京の人口に比べて97人は大した事無い」と考えて、後1週間先延ばしにしたら、感染者が飛んでも無い数に増える可能性が有ります。その時に為って例えばロックダウンしたとしても手遅れなんです。その状態では、更に人々の動きを厳格に規制する激しいものと為らざる得ません。
    
 ※クルーズ船の内情やポスト・コロナ期等、岩田健太郎医師と内田樹氏の対談の続きは、4月13日(月)発売の週刊誌「AERA 4月20日号」で詳報する 文・構成 大越 裕   以上














 




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