2021年06月14日
【おすすめ本】『国会議員を精神分析する』PART1 ”強烈な自己愛パーソナリティの持ち主が生き残る世界”〜。
- 「今の子どもたちは我慢を知らない」
と言いながら、会議中のタバコを我慢できない議員 - 批判されたかと思えば、
その内容とは無関係な演説を延々と繰り広げる議員 - 差別的な発言をとがめられても
「そんなつもりではないので、差別と受け取った相手が悪い」
という態度を崩さない議員
国会議員には、なぜこんな「ヘンな人たち」が多いのか。
『国会議員を精神分析する』
この本では
精神科医であり、国会議員を経験した著者が、
国会に集まる「ヘンな人たち」の心理を分析していく。
ー目次ー
- 国会議員に”ヘンな人たち”が多い理由
- 出身別:政治家の自己愛のタイプ
@世襲議員
A政治家になりたくてなった議員
B番外編:タカ派 - なぜ自己愛が強い人が生き残るのか
@目立ってなんぼの選挙活動
A多忙と閉鎖空間による洗脳
Bさまざまな特権による自己愛の強化
C政治主導したい官僚におだてられる - まとめ
1.国会議員に”ヘンな人たち”が多い理由
選挙を勝ち抜き「政治家」になる人。
そしてそこへ長くとどまっている人たちは、
強烈な自己愛パーソナリティを持っているから。
自己愛パーソナリティとは、
- 自分は特別に優れた存在で、
「自分のすることは正しい」
という前提で物事を見る - 「自分が、自分が」と、
他者を踏みつけてでも
自分が最前列に出ることをためらわない - 他者への共感性が低く、
自分の言動が他者を傷つけることに気づかない
というような意識が強い状態のこと。
「自分は大切な人間」
という感覚は生きる上で必要だ。
しかしそれが強すぎると、
「自分は特別で偉大なのだから何をやってもよい」
という特権意識を育ててしまう。
その特権意識が強すぎる人たちが
国会議員として生き残っているという。
2.出身別:政治家の自己愛のタイプ
「自分は特別で偉大な存在である」
という特権意識をどうやって担保するか。
これは政治家の出身によって、
大まかな傾向があるという。
@世襲議員
世襲議員、特に物心ついた頃から
「将来は父の後をついで政治家に」という場合は、
偉大な政治家である親や祖父に
自分を重ね合わせることで自己愛を満たす。
「私の父はこれだけ偉大な政治家だ、
だからその子である自分は選ばれた存在だ」
という意識を強く持っている。
A政治家になりたくてなった議員
政治家になりたくてなった議員の場合、
「政治家という権威の象徴」に
自分がなることで自己愛を満たす。
その動機はたとえば、
権力がほしい
コンプレックスを晴らしたい
利権でお金を儲けたい
偉い人になりたい
いずれの動機にしても、
政治家になることで
権威の象徴たる国会議事堂に入り、
限られた指定席に堂々と着く、
という特権意識を持てる。
B番外編:タカ派
タカ派とは、
戦争や武力行使を容認する傾向のこと。
国会議員、特に
政治家になりたくてなった議員は
タカ派になりやすいという。
彼らは政治家という特別な指定席を目指して
ガツガツと進んできた人が多いため、
世襲議員より力や権力志向になりやすい。
強い国家
→それを作りだした自分こそ強い
強い軍事力
→それを操れる自分にこそ力がある
他国
→「強い国=自分」という自己像を傷つける存在
というように、
国家という最大の権威に
自分を同一化させたい欲求が強いのだ。
3.なぜ自己愛が強い人が生き残るのか
このように、国会議員には
「自分は特別で偉大な存在」という
強烈な自己愛を持った人が多い。
では、なぜここまで強い自己愛を持った人が
国会議員として生き残るのだろうか。
それは
政治家になる過程と、なってからの境遇で
さらに自己愛が強化される仕組みがあるからだという。
@目立ってなんぼの選挙活動
先日、某自民党議員が
「政治の世界では、悪名は無名に勝る」
と言っていたが、確かにその通りで、
知られなければ話にならないのは事実である。
第3章”自己愛が強くなければ選挙に勝てない” より
日本では選挙区選挙が中心である以上、
選挙は「目立ってなんぼ」である。
政策が優れている、人柄がすばらしい、
という以前に、
存在を知られなければ
当選すらできないという現実がある。
そのため、
候補者は「自分が、自分が」と目立ち、
支援者も目立たせるために動く。
その繰り返しが
「脚光を浴びるべき特別な存在」
という自己像を大きくしていく。
A多忙と閉鎖空間による洗脳
- 各種会議
- 所属政党での活動
- 選挙区へ何度も足を運ぶ
など、国会議員はとにかく多忙。
休日は基本的になく、
睡眠不足と疲労で思考力が落ちていく。
そんな状態で、国会という
「私は特別、自分が自分が」
という人に囲まれているうちに
それが正しいと洗脳されていく。
激務でストレスフルなため余裕もなく、
ますます他者に寛容でなくなる。
Bさまざまな特権による自己愛の強化
- 電車やバスのフリーパス
- 黒塗りの高級公用車
- 議員専用エレベーターの赤じゅうたん
など、議員にはさまざまな特権がある。
分刻みで激務の議員活動のための便宜だが、
こういった特別扱いは、
「自分は重大な仕事をしているので、
順番など待たなくてもよい」
という
自己愛パーソナリティ特有の
誇大な自意識や特権意識を強化していくことになる。
第4章”なぜ「政治家」は官僚の手玉に取られるか” より
C政治主導したい官僚におだてられる
日本の政治は、表向きには
「政治家が法律を作り、官僚が実行する」
しかし実質的には
「法律を作るのも、実行するのも官僚」
「法律は各省庁の利益になるように作る」
だから官僚たちは、
自分たちが作る法律を通してほしいため、
政治家を「先生」と持ち上げる。
そして、政治家たちは
「偉大で完璧な存在でいたい」思いが強いために、
わからないことを素直に「わからない」と言えない。
官僚が、通してほしい政策の説明をしたとき、
内容がわからなくても「わかったフリ」をする。
答弁などでも素早くフォローする。
こうして、実際には手玉に取られている官僚に
チヤホヤされ、特権意識が強化されていく。
4.まとめ
<国会議員に「ヘンな人」が多い理由>
強烈に自己愛の強い人が生き残る世界だから
<自己愛が強い人が生き残る理由>
政治家になる過程と、
なってからの多忙や特別扱いにより、
自己愛がどんどん強化されていくから
「どうして平気であんなことを?」
と思えるような言動。
それは、彼らが
「自分という存在は特別だ」と
強く思いたいがためだった。
裏を返せば、彼らの自己愛は、
親の偉大さや国家という巨大な力に
重ねなければ崩れてしまうのだろう。
本当は弱く、もろい自分を守るのに必死なのだ。
この本は、彼らの一見、不可解な言動を、
「どう自分を守ろうとしているのか」
という視点で見る方法を教えてくれた。
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