2024年04月20日
【短編小説】『鳥カゴを打ち破って』4 -最終話-
⇒【第3話:私自身の意志で】からの続き
<登場人物>
・山口 光夢(やまぐち みむ)
♀主人公、大学1年生
親の意向で地元の大学へ進学していた
・宮野 明輝(みやの あき)
♀光夢の幼馴染
・終夜 彩雪(しゅうや あゆき)
♂大学1年生
地元の北国を離れ、遠い西方の大学へ進学してきた
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【第4話:鳥カゴを打ち破って】
女バスの宅飲みが始まってしばらく経った。
みんなすっかり出来上がっていた。
明輝
『親の説得、大変だったでしょ〜?』
光夢
「うん、けど私…。」
「明輝がくれたチャンスを逃したくないの。」
明輝
『そこまで終夜くんのことが好きなんだ〜。』
『練習で最初にバテる彼がねぇ。』
光夢
「そんなことないよ!」
「最近はみんなよりたくさん走ってる!」
明輝
『さすが〜よく見てらっしゃる〜(笑)』
光夢
「うぅ…///(照)」
明輝
『光夢、覚悟しな〜。』
光夢
「え?」
明輝
『終夜くん、もうすぐ着くってさ〜。』
光夢
「いつの間に呼んだの?!」
明輝は早くから出来上がっていたのに、
きっちり仕事をこなしていた。
さすが1年生ながら
スタメンを張る幼馴染だ。
ピンポーン、ガチャ
彩雪
『こんばんは。』
明輝
『よぉ終夜〜待ってたわ〜。』
ドキッ
ついに終夜くん…彩雪くんが来た。
彩雪くんは
「なぜ自分が呼ばれた?」という顔をしていた。
軽い雑談が続いてしばらくすると、
明輝
『あ〜お酒切れちゃった〜。』
光夢
「あれ?買い置きがまだ…むぐ!」
明輝は私の口を塞ぎながら、
明輝
『終夜、悪いけど買い出し頼んでいい〜?』
『私らのおごりだから〜。』
彩雪
『いいよ。そのために呼んだの?』
明輝
『まーまー、行けばわかるから〜。』
『光夢も付き添いよろしく〜。』
光夢
「わ、私…?」
これが、明輝が言った
「いい感じに2人きりにする作戦」?
動揺する私に、
明輝はうつろな視線を向けた。
明輝
(あとはがんばりな!)
私は明輝からのエールを受け取り、
覚悟を決めた。
光夢
「そ、それじゃ終夜くん、買い出し行こ?」
彩雪
『うん。』
私と彩雪くんは
2人で明輝のアパートを出た。
アパートの周囲には水田が広がっていた。
沢の水音が響き、蛍が飛び交っていた。
私と彩雪くんは
近くのスーパーで買い出しを済ませ、
無言で水田のあぜ道を歩いた。
光夢、ここだよ!
ここで勇気を見せて!
光夢
「あの、あのね…?」
「今日は来てくれてありがと!」
彩雪
『こちらこそ。』
光夢
「終夜くん、いつも練習すごく頑張ってるよね。」
彩雪
『玄関で休んでばかりだけどね。』
光夢
「そんなことないよ!」
「最近はダウンしてないし、誰より走れてるよ!」
彩雪
『ようやくこっちの暑さに慣れてきたよ。』
『なんでそれを知ってるの?』
光夢
「実はずっと男バスの練習を見てて…。」
「終夜くんの頑張ってる姿が…。」
「か、かっこいいなって思ったの!!」
彩雪
『はは、ありがと。かっこいいのかな?』
光夢
「かっこいいの!」
「それでね…もっとお話してみたくて…。」
「彩雪くんって呼んでもいい?///(照)」
彩雪
『うん、僕も光夢さんって呼んでいいかな?』
光夢
「もちろん!嬉しい!」
「彩雪くんよろしくね!」
私と彩雪くんとの距離は、
明輝のアパートを出たときより
近くなっていた。
私にとって1番大切なものは、
親の鳥カゴなんかじゃない。
初めてできた好きな人に、
私の気持ちを伝えること。
それが私の「大学デビュー」
ーーーーーENDーーーーー
⇒【短編小説】『白だしうどんは涙色』へ続く
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