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2023年06月17日

【短編小説】『スマホさん、ママをよろしくね。』4 -最終話-

【MMD】Novel Sumaho Mom Samune2.png

【第3話:住んでいた”かもしれない”少女】からの続き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<登場人物>
影山 慈玖(かげやま いつく)
 8歳、少女
 母親がスマホにかかりきりなため、
 自分は”存在してもいいのか”を疑い始める

影山 夕理(かげやま ゆり)
 慈玖の母親
 スマホに夢中になるあまり、
 娘の気持ちに気づけないまま…

天野 慧惟(あまの けい)
 19歳、大学生
 他人に無関心で、
 自身の歩きスマホを正当化していたが、
 ある出会いをきっかけに変わっていく
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第4話:”存在”と引き換えに届けた約束】



翌日。

夕理
『どこいったの?!!!』


少女の母親”だったかもしれない”女性は、
慌てふためいていた。

彼女が朝起きると、娘(?)の姿はなかった。

あの子は昨夜、間違いなく部屋へ入ったはず。
なのに、ベッドやシーツにはシワ1つなかった。

まるで、最初から誰も寝ていなかったように。



誘拐?
いや、家に誰かが侵入した形跡はない。

夕理
『まさかあの子、夜中に1人で外へ?』


動揺した母親は、少女を探しに家を飛び出した。
警察へ捜索願を出し、親戚や保育園をあたり、
八方手を尽くした。

だが、ついに少女が見つかることはなかった。


ーー


数ヶ月後。

母親は近い未来、
娘(?)の捜索願が失踪届になる現実から
必死で目を逸らしていた。

そんな折、
彼女の”すまほ”に差出人不明のメッセージが届いた。



 ----------
 ママのやくに立てなくてごめんね。

 イイコになれなくて、
 ママの”すまほ”のじゃまばかりしちゃってごめんね。

 けど、わたしね、
 駅で会ったお兄さんのやくに立てたの。
 お兄さんが”あるきすまほ”をやめてくれたよ!

 あのあと、お兄さんがね。
 わたしの心に「ありがとう」って言いにきてくれたよ。

 わたし、わるい子だから、
 もっとママに抱っこしてもらいたかったの。

 わたしも、ママの”すまほ”みたいに、
 やさしくなでなでしてもらいたかったの。

 けど、ママをこまらせたくないから、
 悲しいけど消えるね。

 わたし、さいごにだれかのやくに立てたから、
 幸せだったよ。

 ”すまほ”さん、ママをよろしくね。
 ----------




ーーーーー



数年後。

僕、天野 慧惟は大学を卒業。
社会人として忙しい日々を送っていた。

あの日以来、
いつもの駅で母娘を見かけることはなかった。

引っ越したのかな?
娘さん、元気かなぁ…。

そんなことを考えながら駅のホームに立っていると、
見覚えのある女性を見かけた。

例の母親?

慧惟
「あの人…あんなにやつれていたっけ…?」


かろうじて面影が残っていたが、
見た目は別人だった。

慧惟
「今日は娘さん、一緒じゃないのかな?」
「娘さん…?名前…なんだっけ?」


まもなく電車が到着した。

電車の窓から見る彼女から、
後悔と罪悪感がにじみ出ていた。



僕はもう歩きスマホをしていない。

母娘にぶつかったときの反省もあるが、
それだけじゃない。

ある少女と、
大切な約束をしたような気がするからだ。


「誰かを困らせたり、悲しませたりしないでね。」
って。



その子の顔も名前も、思い出せない。

確かに覚えているのは、
僕がその子に「ありがとう」と伝えに行く夢。

その子はまるで、
自分の”存在そのもの”と引き換えに、
僕に大切なことを教えてくれた気がする。




ーーーーーENDーーーーー



<あとがき>

たとえ十分な衣食住の世話をしても、
子どもの心のケアを怠れば、
それは立派なネグレクトです。


子どもは、
最初の他人である親の反応を通じて、
この世界とのつながりを確かめます。

その親からの反応がないと、子どもは、

・本当に存在していいのか
・本当にこの世界に歓迎されているのか


それがわからないまま成長してしまいます。



スマホは「楽で、今すぐ楽しい」を生み出します。
その誘惑を蹴って、つらい現実を選ぶのは酷です。

ですが、その”つらい現実”の片隅に、
寂しさでうずくまる子どもがいます。

どうか少しでも、子どもの
”甘えたい””抱っこしてほしい”を叶えてあげてください。


大人になった彼らが、
「もう、親の愛情は手に入らない」と絶望する前に。



ーーーーーーーーーー



⇒他作品
【短編小説】『アロマンティックと孫のカオ』全2話

【短編小説】『どんな家路で見る月も』1話完結


⇒この小説のPV


⇒参考書籍











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理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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