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2023年01月28日

【短編小説】『雪の妖精 待ち焦がれ』後編

【MMD】Novel Snow Fairy SamuneSmall1.png
前編からの続き


<登場人物>

雪吹 月永(いぶき るな)
 ヒロイン、20歳、大学2年生
 白夜(はくや)とは小学生からの幼馴染み

冬城 白夜(とうじょう はくや)
 月永(るな)の幼馴染み
 同じ大学に通う20歳、2年生

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



私の手術の日が近づいてきた。
最近、ふっと身体の力が抜けることが増えた。

一瞬、ガクっと崩れ落ち、ハッと正気を取り戻す。
そんなことがよくあった。

あぁ、やっぱり…。
(保存治療で引き伸ばすのは、そろそろ限界でしょう。)

お医者さんの言葉、本当だったんだ。

私は驚かなかった。
自分の身体のことだ。なんとなくわかっていた。


ーー


私が入院してから、
白夜(はくや)はよくお見舞いに来てくれた。

私が手術を受けると決断できたのは、
白夜(はくや)のおかげ。

だから、病室で話しているときも、
不安が湧き上がることはなかった。

明日から面会謝絶。
手術前に会えるのは、今日が最後。

来て、くれるかな…?


私の不安をよそに、彼は隣にいた。
私たちはいつものように、たわいない会話をした。

何も不安はない、何も。
私には、白夜(はくや)がくれたお守りがあるんだ。

だから…。大丈夫…。

--

いつの間にか、私の眼から
ぽろぽろと涙がこぼれていた。


あ、あれ?おかしいな…。
私、もう大丈夫って思ってたのに。
もう、手術への不安なんてないはずなのに。

やっぱり、白夜(はくや)の隣は安心する。
気を張っていても、ゆるんでしまう。

白夜(はくや)はまるで、
私の気持ちをすべて見通したように、
私にハンカチを差し出した。

少しだけ、私に寄り添いながら。

--

私は彼の優しさに触れ、
抑えていた不安と恐怖が決壊した。

『私…怖いの…!』
『死ぬかもしれないことじゃなくて!』
『もし死んじゃったら、別々の世界に行っちゃう!』
『そしたら白夜(はくや)に会えなくなっちゃう!』


私は、白夜(はくや)からプレゼントを受け取った
あの日の言葉を繰り返した。

『だから、余命3年って知らされたときに思ったの!』
『あと3年、一緒にいられたら十分、って!』

『だけど…!やっぱりイヤ…!』
『たった3年なんてイヤだよぉ!』

『もっと2人でいたい!』
『元気になって、いろんな場所へ遊びに行きたい!』
『ずっと…白夜(はくや)と、一緒にいたいよ…!』


私が悲しみを吐き出す間、
白夜(はくや)は何も言わず、私の頭をなでてくれた。

そして、私が悲しみを出し切った頃、彼は言った。

「…つらかったね。」
「今まで、本当によく頑張ってきたね。」

「僕だって月永(るな)と会えなくなるのは悲しい。」
「もし失敗したら、なんて考えたくない。」

「でも、月永(るな)が決めたことだから。」
「どんな結果になっても受け入れる。」


『白夜(はくや)…!』

彼の存在が、言葉が、すべてが私を支えてくれる。
彼の声を聞くだけで、私には怖いものなんてなくなる。


ーー


私が安心感に包まれていると、
白夜(はくや)は唐突に、私の手をぎゅっと握った。


ドキッ

私の耳が、心臓の鼓動の音でいっぱいになった。

「ずっと月永(るな)に伝えたくて、伝えられなかったけど…。」
「僕は月永(るな)のことが大好きなんだ!」
「だから、僕と付き合ってください。」


『!!ふぇ?!』

私は驚きのあまり、変な声が出た。

白夜(はくや)…それは反則だよ。
私の心臓が、もたないよ。

幼馴染みで、兄妹で、お互い近すぎて。
ずっとずっと抱いてきて、まだ伝えられていない言葉。

私のバカ…。先、越されちゃった。

--

「びっくりさせてごめん。」
「手術前に、どうしても伝えたくてさ。」


『うん…ありがと。私もずっと…。』

言いかけた私に、珍しく白夜(はくや)が言葉を続けた。

「でも、今は返事はいらない。」

『え…?』

「返事は…完治して、元気になった月永(るな)から聞きたい。」

本当にあなたは、優しすぎだよ…。
私に、未来への希望まで持たせてくれるなんてさ。

ゼッタイに治って、
白夜(はくや)に思い切り『大好き』と伝える。
そんな、未来への希望を。


あれ…?
さっき、涙は出し切ったと思ったのに。

また、こぼれてきた。
今度は、嬉し涙が。



ーーーーーーーーーー



月永(るな)の手術の日から、数週間後。
今日も、雪がしんしんと降っていた。

僕、冬城 白夜(とうじょう はくや)は
いつも通りの日々を過ごしていた。

大学に通って、それなりに勉強して、それなりに遊ぶ。
幸せとは、そんな平凡な日常を指すんだろう。

ただ1つだけ、僕には欠けていた。
いつも僕の隣にいる、大切な幼馴染みがいないんだ。

--

僕はあえて、手術の結果を聞かないことにしていた。
いや、それは言い訳だ。僕には聞く勇気がなかった。

(万が一、手術が失敗していたら…。)

そう思うと、僕の心が耐えられなかったから。

僕は月永(るな)が言うような、頼れるお兄ちゃんじゃない。
本当の僕はこんなに弱くて、いくじなしだ。

--

僕は自宅のカレンダーに印をつけた。
その日は、月永(るな)の手術の日から、ちょうど3年後。

そして、僕はその日まで、
月永(るな)からの連絡を待つことにした。

月永(るな)に告げられた余命は3年。

もし、彼女が生きていれば、
あの日、僕が伝えた気持ちへの返事をくれると信じて。

3年経って連絡がなければ、
それは大切な幼馴染との、今生の別れ。


そして、僕が前を向き、
人生を歩き出すためのスタートライン。


ーー


降り続いた雪が、少し弱まってきた、ある朝。
僕のスマホに1件の着信が入った。

画面に映し出された名前を見た瞬間、
僕の心は嬉しさで満ちていった。

『ごめんね、連絡が遅くなっちゃって。』
『手術、成功したよ!』


幼馴染みの月永(るな)は、
成功率30%をくぐり抜けていた。


術後の経過も順調。
医師も驚くほどの回復を見せ、
もうすぐリハビリも完了するそうだ。

『●日に退院なんだ。』
『それでさ…よかったら、迎えに来てくれないかな…?』
『誰よりも早く、会いたいから。』



ーー


月永(るな)の退院の日。
昨日まで降っていた雪は止み、青空が広がっていた。

僕は駅を出ると、
居ても立っても居られず、病院までの道を走った。

息を切らせてたどり着いた、病院の入口。

そこに立っていたのは、
リハビリを終え、元気になった幼馴染みだった。


『来てくれて、本当にありがとう。』
『白夜(はくや)のおかげで、手術を乗り越えられたの。』
『だから、あの日の返事をさせてください。』


月永(るな)は、頬を紅く染めながら言った。

『私もずっと、白夜(はくや)のことが好きでした。』
『これからもずっと、私の隣にいてね。』




陽の光が、雪の結晶を照らした。

キラキラ輝く、白いじゅうたんが、
2人の幸せの門出を祝福してくれた。



ーーーーーENDーーーーー



⇒この小説のPV



⇒過去作品
【短編小説】『心だに 君の際なられば 果報』

【短編小説】『また逢いましょう、ホタル舞い降りる川で』1

【短編小説】『シアワセの薄い板』前編

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自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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