2018年12月25日
スペイン巡礼の映画 Movies of the pilgrimage in Spain
今回は、キリスト教三大聖地のひとつ、サンティアゴ・デ・コンポステーラへ向かう
スペイン巡礼に関する代表的な映画2作を取り上げます。
誰もが見上げてしまうサンティアゴ・デ・コンポステラ大聖堂の威容
『サン・ジャックへの道 SAINT-JACQUES...LA MECQUE』
スペイン巡礼というものがあると知った頃に見た映画。
個人ではなく、全行程ガイドの付いたツアーに参加してスペインの聖地を目指す人々の群像劇コメディ。
喧嘩し根をあげ、諦めかけながらも歩き続ける9人の姿は笑いを誘い、さわやかで楽しい時間を一緒に過ごしたような気持になるが、本人たちにとっては人生の壁にぶち当たって必死で越えているのと同じ。自分ひとりのペースで進みたいが、ツアーではそうもいかないのが集団行動のつらいところだ。
野を越え山を越え、街を通り過ぎながら聖地を目指す巡礼の旅。それは苦しく、時に幸せな人生に似ている。美しく雄大な景色の中で、心を洗われていく巡礼者たち。人間くさいリアルなその姿に、追体験したくなる。
豊かな想像力や人間臭い彼らに笑わされ、それぞれが抱えた事情に少しホロッとさせられる。見たらきっと巡礼に旅立ちたくなる、そして長い人生という名の旅に勇気をくれる映画。
この映画を見て私も、この道を歩いてみたい、と思ったことを思い出す。レオンのパラドールや、サンティアゴ・デ・コンポステラまであと5キロの、モンデ・ド・ゴゾにある800人収容可能な巡礼路最大の巨大アルベルゲなど、ぜひ泊まりたい宿泊箇所が網羅されているので、巡礼開始前には絶対に見ておきたい作品。
映画でも、彼らは最後の100キロ地点サリアの手前、サモスの修道院(世界遺産)に宿泊している。残り少ない旅程にそれぞれ思うことがあり…。果たして長い旅路の終わり、彼らは一体何を思うのだろうか。
『星の旅人たち The way』
フランスの道を歩いた後に見た映画。
巡礼を始めるきっかけ、人がカミーノ(スペイン巡礼路)を歩く理由にフォーカスしたこの映画、実に感慨深い。自分も歩いた美しい北スペインの風景を目にするたびに、ああ、あそこでこんなことがあんなことがあったと、懐かしく思い出していた。一緒に見に行った巡礼で知り合った友人は、感極まってほぼ全編泣き続けていたくらいだ。
ただ、一人で歩き始めた人がトムのように全行程をほぼ同じ仲間と歩くことは稀なので、他人との関わりの中で息子の死と向き合う初老の男といういかにも家庭的な、正統派アメリカ映画だと感じた。全く一人で歩いていないトムは、他人との関わりの中で自分を見つめることができた稀有な例かもしれない。
「カミーノを歩く理由」はほぼ確実に尋ねられることなので、トムのようにごまかし続けるのは難しい。ヨリスがサラにトムの秘密を喋ったように、私も「日本から来た42歳の小柄な女性が一人で歩いている」とヤンに吹聴された。プライバシーをどう扱われるかわからない、という問題もカミーノにはある。他人に心を開かざるを得ないのがカミーノを歩くということなのかもしれない。
大聖堂が有名なレオンで彼らは、5つ星のパラドール(昔の巡礼宿や救護院をホテルに改装した宿泊施設)に宿泊している。『サン・ジャックへの道』の一行もここに泊まって、久々の贅沢を満喫する。私には無理だったが、余裕があればここに泊まってみるのも良い思い出になるだろう。
以上、同じ巡礼を描いた作品でも、このふたつはフランス映画とアメリカ映画というだけでなく、扱っているテーマも視点も違うので、巡礼前にはぜひ見ておきたい2作品だと思う。もちろん巡礼の予定がなくても、人生を考えさせられる良い作品でもある。
スペイン巡礼に関する代表的な映画2作を取り上げます。
誰もが見上げてしまうサンティアゴ・デ・コンポステラ大聖堂の威容
『サン・ジャックへの道 SAINT-JACQUES...LA MECQUE』
(2005/フランス)監督:コリーヌ・セロー ♪人生って、捨てたもんじゃない♪ 仲の悪い三人兄弟が遺産をもらうため、亡き母の遺言通りフランスからスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの1,500キロを歩くことに。ガイドを含め訳アリ9人の捧腹絶倒巡礼ツアーが始まった。果たして一人も欠けることなく目的地までたどり着けるのか。 |
スペイン巡礼というものがあると知った頃に見た映画。
個人ではなく、全行程ガイドの付いたツアーに参加してスペインの聖地を目指す人々の群像劇コメディ。
喧嘩し根をあげ、諦めかけながらも歩き続ける9人の姿は笑いを誘い、さわやかで楽しい時間を一緒に過ごしたような気持になるが、本人たちにとっては人生の壁にぶち当たって必死で越えているのと同じ。自分ひとりのペースで進みたいが、ツアーではそうもいかないのが集団行動のつらいところだ。
野を越え山を越え、街を通り過ぎながら聖地を目指す巡礼の旅。それは苦しく、時に幸せな人生に似ている。美しく雄大な景色の中で、心を洗われていく巡礼者たち。人間くさいリアルなその姿に、追体験したくなる。
豊かな想像力や人間臭い彼らに笑わされ、それぞれが抱えた事情に少しホロッとさせられる。見たらきっと巡礼に旅立ちたくなる、そして長い人生という名の旅に勇気をくれる映画。
この映画を見て私も、この道を歩いてみたい、と思ったことを思い出す。レオンのパラドールや、サンティアゴ・デ・コンポステラまであと5キロの、モンデ・ド・ゴゾにある800人収容可能な巡礼路最大の巨大アルベルゲなど、ぜひ泊まりたい宿泊箇所が網羅されているので、巡礼開始前には絶対に見ておきたい作品。
映画でも、彼らは最後の100キロ地点サリアの手前、サモスの修道院(世界遺産)に宿泊している。残り少ない旅程にそれぞれ思うことがあり…。果たして長い旅路の終わり、彼らは一体何を思うのだろうか。
『星の旅人たち The way』
(2010/アメリカ) 監督: エミリオ・エステヴェス ♪さあ、人生の旅に出かけよう!♪ 疎遠だった息子が単独での巡礼開始後すぐに亡くなったとの報を受けたアメリカ人のトム(マーティン・シーン)は、息子が歩こうとしていたサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの約800キロの道のりを息子の遺灰と共に歩こうと決意。道中知り合った仲間と歩く中で、頑なだった心を開いていく。 |
フランスの道を歩いた後に見た映画。
巡礼を始めるきっかけ、人がカミーノ(スペイン巡礼路)を歩く理由にフォーカスしたこの映画、実に感慨深い。自分も歩いた美しい北スペインの風景を目にするたびに、ああ、あそこでこんなことがあんなことがあったと、懐かしく思い出していた。一緒に見に行った巡礼で知り合った友人は、感極まってほぼ全編泣き続けていたくらいだ。
ただ、一人で歩き始めた人がトムのように全行程をほぼ同じ仲間と歩くことは稀なので、他人との関わりの中で息子の死と向き合う初老の男といういかにも家庭的な、正統派アメリカ映画だと感じた。全く一人で歩いていないトムは、他人との関わりの中で自分を見つめることができた稀有な例かもしれない。
巡礼の初日、標高1,430mのピレネー越えの途中で息子が亡くなった現場に立ち尽くすトム。 毎年ここで命を落とす人が絶えない難所。(私はここをパスしてこの先のパンプローナから歩き始めたけれど…) |
「カミーノを歩く理由」はほぼ確実に尋ねられることなので、トムのようにごまかし続けるのは難しい。ヨリスがサラにトムの秘密を喋ったように、私も「日本から来た42歳の小柄な女性が一人で歩いている」とヤンに吹聴された。プライバシーをどう扱われるかわからない、という問題もカミーノにはある。他人に心を開かざるを得ないのがカミーノを歩くということなのかもしれない。
大聖堂が有名なレオンで彼らは、5つ星のパラドール(昔の巡礼宿や救護院をホテルに改装した宿泊施設)に宿泊している。『サン・ジャックへの道』の一行もここに泊まって、久々の贅沢を満喫する。私には無理だったが、余裕があればここに泊まってみるのも良い思い出になるだろう。
以上、同じ巡礼を描いた作品でも、このふたつはフランス映画とアメリカ映画というだけでなく、扱っているテーマも視点も違うので、巡礼前にはぜひ見ておきたい2作品だと思う。もちろん巡礼の予定がなくても、人生を考えさせられる良い作品でもある。
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