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2022年01月25日

映画で旅するスペイン Spain in Cinema

スペインを舞台にした映画には、人生讃歌と共に激しいパッションを感じさせる映画が多い。

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今回はスペインを代表する監督であるペドロ・アルモドバル監督作品2作『ボルベール帰郷』『オール・アバウト・マイ・マザー』、アレハンドロ・アメナーバル監督の問題作『海を飛ぶ夢』、そして自分が好きな作品で非常にスペインらしい『マルティナの住む街』の4作をご紹介します。


★人生讃歌を撮らせたら世界一のアルモドバル監督作品。若き日の清楚なペネロペ・クルスが鮮烈!

『オール・アバウト・マイ・マザー
 Todo Sobre Mi Madore』


(1999/西)監督:ペドロ・アルモドバル

♪女であるために、女を演じるすべての女性たちへ♪

マドリードに暮らすマヌエラは、父について問いただす息子に答えられないまま、最愛の息子を事故で失う。行方不明の夫を探すため青春時代を過ごしたバルセロナを訪れたマヌエラは、偶然息子の死に関わった大女優の付き人をすることに。そんな中、懸命に生きる女性やゲイたちとの出会いを通して、マヌエラは人生を振り返りながら、女としての自分を取り戻していく。

果たして行方不明の夫はみつかるのか。そして何故、夫のことを息子にひた隠しにしたのか。
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この素晴らしい女性応援映画には多くの著名人がコメントを寄せているが、とにかく全ての人に見てもらいたい作品。男でも女でもゲイでも、偏見のある人は自分の間違いに気づくはず。母と息子の絆、女性同士の友情、同性愛者たちの悲しみなどを真摯に描き、人間愛というものをこれほど強く感じさせる映画はない。

ゴールデングローブ最優秀外国語映画賞始め、数々の国際的な映画賞を総なめにした。ペドロ・アルモドバル監督は、情けない事実を容赦なく描くことで、それでも人生とはこんなにも愛おしいと思える人生讃歌的な映画を撮る監督。

真っ直ぐな汚れのない瞳で鮮烈な印象を残す若き日のペネロペ・クルスが素晴らしい。
「孤独を避けるためなら女は何でも受け入れるわ」「女は心が広いのよ、海のように」「いいえ、女は愚かよ」など、詩情豊かなスペイン人を感じさせるセリフが一々心に残る。


★誰もがつらい過去を抱えている。それでも人生は素晴らしい!

『ボルベール 帰郷 VOLVER』

(2006/西/120分)監督:ペドロ・アルモドバル

♪人生は滑稽なもの。それでも女は明るくたくましく生きていく。♪

失業中の夫の代わりに一家を支えるライムンダ。娘が父親を刺殺した夜、故郷に住む母親同然だった伯母の訃報が。死体を隠そうと奔走するライムンダをマドリッドに残し、故郷ラ・マンチャで葬儀を済ませた姉ソーレは、死んだはずの母を見たという近所の噂を聞く。

果たして死んだはずの母は生きているのか。母の、そしてライムンダの過去には一体何があったのか。ひた隠しにしてきた真実が時を経て今、明かされようとしていた。
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アルモドバル監督による『オールアバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥ・ハー』に続く女性讃歌三部作の最終章にして、最高傑作との呼び声が高い作品。女たちの強くしなやかな生き様を、色鮮やかに哀切をもって描く。

主演のペネロペ・クルスがアカデミー主演女優賞に初ノミネートされた。
レストランで「ボルベール」を歌うペネロペ・クルスは、鳥肌が立つほど素晴らしい。歌は吹き替えだが、娘を見つめる母の映像とともに、濃密な人生の悲哀を感じさせる心に残る名シーンだ。

母娘で同じ悲劇に見舞われるという尋常ならざるストーリーだが、誰もが何かを抱え、胸に秘めて必死に生きていることを教えてくれる。近所との何気ない会話、生前の母の匂いに関する記憶。ウケ狙いではなく、ストーリーの中から自然に湧き出てくる、どこまでも真面目だからこそこの滑稽さがそこにある。殺されてしかるべきロクでもない男たちはほとんど姿を見せず、女ばかりの異色作ながら、母と娘の悲しい運命に負けず懸命に生きる女たちの、やはり讃歌なのだなあ、としみじみ思う。


★当たり前に動けることがいかに幸せなことかを知り、あらためて死を見つめ直す。

『海を飛ぶ夢 Maradentro』

(2004/西)監督:アレハンドロ・アメナーバル

♪もしも愛する人が死を望んだらー?♪

四肢麻痺の障害を負ったラモンは、魂の開放を求めて尊厳死を認めてほしいという訴えを起こす。スペインに賛否両論を巻き起こした彼を取材しに一人の女性記者が訪ねてくる。自らも病に犯された彼女と心を通わせるラモン。共に死のうと約束して、一度夫の元へ戻る彼女。しかし彼女は意思を翻し・・・。

命を消すのではなく、ベッドから動けないという一生から解放されるための尊厳死を望むことは本当に罪なことなのか?そしてモンは彼を死なせてくれる味方を見つけることができるのか?
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主演のハビエル・バルデムは、『それでも恋するバルセロナ』でも共演しているペネロペ・クルスのパートナーであり、スペインのアカデミー賞であるゴヤ賞主演男優賞にも毎年のようにノミネートされる、日本で言えば役所広司のような名優。

ベッドに横たわったまま、首から上しか動かせない主人公ラモンを感情豊かに演じていて素晴らしい。声と表情だけで、豊かな彼の感情が伝わる。

彼の魂が体から飛び出し、野を越え山を越えて海に出るまでの映像は、まさに私がよく見る翼を持った夢に似ていて感動的だ。動けない体になり、家族に面倒を見てもらいながら生き続けるという人生を自分が計画して生まれてきたのだとしたら、それにはどんな意味があるのか。死にたいほどつらい人生を送っている人には、生きる意味、そして魂の成長について深く考えさせる映画だろう。

共に旅立つことを約束した女性記者の、突然の心変わりもわかる。死を目前にして残していく者たちの苦痛を考えれば、誰だって臆病になるだろう。しかし、彼女の裏切りに傷ついたラモンには、もう生きる意味なんかなかった。哀切な、一遍の詩のような、童話のような秀作。


★心の中の塵や芥が知らない間に飛んでいってしまいそうな、笑えて泣けるハートフルな人生応援映画!

『マルティナの住む街 Primos』

(2011/西)監督:ダニエル・サンチェス・アレバロ

♪もう、君を泣かせない(ハズ…)♪

結婚式当日の婚約破棄という悲劇に見舞われたディエゴ。いとこのフリアン、ミゲルと共に3人で幸せだった思い出を求めて青春時代を過ごしたリゾート地の村へとやってきた。そこで昔の恋人マルティナと再会したディエゴはマルティナの息子と意気投合し、今でも美しいマルティナともいい感じに。いとこの二人もそれぞれ抱えている問題があり、懐かしい村の人々とすったもんだを起こすのだが…。
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皆どうしようもない大人たちなのに愛すべき奴らで、一生懸命生きているんだなぁ〜、と思わせてくれる抱腹絶倒のナイスなスペイン産ロード・ムービー。スペイン映画はこういう人生讃歌的なものが多くて好きだ。

人生とは本来滑稽で恥ずかしいものなのだということをよく知っていて、それを笑い飛ばす強さがあるのがスペイン人なのかも。アメリカン・コメディのようにシモネタで下品な笑いを取るのではなく、日本人にも共感できる間だったり、無意識の行動だったり、本人は真剣なのだが周囲から見るとその言動が滑稽に映るという種類の、ヒューマンな笑いに満ちていて、これでいいのだと勇気をくれる。

マルティナの住む街、スペイン北部のコミーリャスは、サンティアゴ・デ・コンポステーラへ向かう巡礼道(北の道)の通り道。私もこの街のアルベルゲに泊まってました!

なんと!そっかぁ、この街が舞台だったんだ〜、知らなかったよ〜(T_T)
海のそばで、ガウディ設計のサマーハウスなどもあって「観光したいリゾートタウンだなぁ」と思ったのだが、その日の行程がキツすぎて、とても観光に出歩く身体的余裕がなかったのはめちゃくちゃ残念でした…





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