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2020年09月29日

映画で旅するニューヨーク第二弾 New York in Cinema A

ニューヨークを舞台にした映画の第二弾は、ちょっとありえないシンデレラ・ストーリーと、正反対にリアルなニューヨーク・ライフを描いた2本をお届け。

★いつだって全力投球。一生懸命さが運命の恋と夢の人生、両方ゲットの秘訣です。

メイド・イン・マンハッタン
 Maid in Manhattan

  2002/米 ウェイン・ワン監督

シングル・マザーの客室係が、ある誤解をきっかけにハンサムな若き政治家と出会い、恋に落ちていく姿をロマンティックに描く。
上院議員候補のクリス(レイフ・ファインズ)は、ホテルのスウィートルームで、マリサ(ジェニファー・ロペス)と出会い、たちまち夢中になる。しかし彼は知らなかった、彼女がこのホテルで働くメイドであることを……。
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私のごひいき俳優レイフ・ファインズ様が珍しく軽い感じのロマンティック・コメディに出演!ということで期待して見たわりに、少しがっかりだったこの作品。

理由は、第一に無理のあるストーリーなのでリアリティが薄いこと。
第二にノラ・ジョーンズの音楽が著しく合わないこと。なんでだろう。ノラ・ジョーンズは好きだけど、この映画に彼女の歌のムードは全くない。キャラにもリアリティがないから?
第三にレイフ・ファインズとジェニファー・ロペスの相性が良いとは思えないこと。レイフは素敵だけど、こういうプレイボーイっぽい役はあまり似合わない気がする。第一、イギリス演劇界出身のレイフだけに、彼とニューヨークというのがあまりにもピンと来ないのである。


マイノリティでもシングルマザーでも成功できる

映画のテーマは良いだけに勿体ない。
ジェニファー・ロペス演じるマリサは、ホテルの客室係として働くシングル・マザー。貧乏な移民系である彼女は、母親の「どうせ無理。あんたにできっこない」という刷り込みで、ヒスパニックの労働者階級はろくな仕事につけない、ホテルのマネージャーになんてなれるはずがないと、能力はあるにもかかわらず諦めていた。

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セントラルパークのザ・モール(左)もフィルムの中で多くの俳優たちが闊歩した。
うだるような真夏には涼しい木陰を提供してくれる。
ここで子連れデートをした二人は、それと知らず身分違いの恋に落ちていく。

ところが、ある日突然賢い息子タイの助けもあって、議員のクリス・マーシャル(レイフ・ファインズ)と運命の恋に落ちたことで、本当に母親の言うことは正しいのか、移民階級でも実力があれば上に登っていけるのではないかと思い始める。

成り行き上、クリスはマリサをお金持ちの宿泊客だと思いこんでいるうえ、労働者ならではの視点ではっきりとモノを言うマリサの新鮮さに惹かれて、積極的にアプローチ。しかし、真実を伝えることができないマリサは消極的。

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マリサがメイドとして働くホテル・ベレスフォードは『セレンディピティ』にも登場した最高級ホテル、ウォルドルフ・アストリアで撮影された。

従業員がゲストの服を勝手に着たりしてゲストのフリをするなんて、あんなことが発覚したらホテル側だって大損害なのに、出てくる人は皆いい人。皆でマリサの嘘がバレないように協力するのだ。結局彼女がクビになっただけでなく、彼女をかばった上司であるバトラーまで仕事に誇りを持っていたはずなのに責任を取って自ら辞職。ああ、そうなることは目に見えていたじゃないの〜

レイフ・ファインズ演じるマーシャル議員だって、簡単にメイドとの交際オープンにしちゃうし、記者やパパラッチに無防備すぎる。ドレスを着てのパーティは確かにロマンティックだし、頑張り屋のマリサがチャンスを掴んでいく姿や、彼女の機転の利く切り返しとかは良かったんだけど。リアリティがなさすぎてロマンティックさが盛り上がらないんだなー。シングル・マザー応援映画の色の方が濃い気がする。

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セントラルパークの敷地内にあるメトロポリタン美術館はパーティ・シーンでよく登場する。デンドゥール神殿(左)がパーティ会場として使われ、クリスがマリサの美しいドレス姿にメロメロになる(右)。

この映画で二人のキューピッド役を果たすのが彼女の賢い息子タイ。彼とマーシャル議員の素朴なやりとりは心に残ったけれども、何となくこれはジェニファー・ロペスのプロモ・フィルムという感じが否めませんね。

ジェニファーのファンには彼女のメイド服姿プラス、ゴージャスなドレス姿も見られるので美味しい映画かも。そうでない方はとりあえず、ノーブルなレイフ様と豪華なホテル、ウォルドルフ・アストリア内部、そしてセントラル・パークを楽しみましょう

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

             
  ★苦い恋を知ると、住み慣れたニューヨークが違って見える…

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さよなら、僕のマンハッタン
The Only Living Boy in NewYork

 2017/米 マーク・ウェブ監督

満たされない思いを抱える地味なニューヨーカーの青年、トーマス。同じアパートに引っ越してきた作家と知り合いになってから、彼の平凡な人生が動き出す。
彼の助言に従い、思い切った行動をするようになった彼は、父親の愛人と深い関係に。今まで知らなかった世界、思いもかけなかった自分自身を知っていく。
素顔のニューヨークと、ニューヨーカーの日常をリアルに描いた、ある青年の成長物語。



豪華キャストで贈るニューヨーク青春ストーリー

ニューヨークに住む自分探し中の若者、トーマス・ウェブ。演じるのは『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』でエディ・レッドメインの兄役を演じたカラム・ターナー。あの映画で「お、イケメン発見!」と思ったのだが、それより前に主演したこの映画では、冴えない若者が青春の傷を負いながら自分の人生をみつけていくにつれていい男になっていく様を、等身大な魅力全開で演じていたんですねー。

監督は『500日のサマー』のマーク・ウェブ。主人公に自分と同じ姓を付けてしまうくらい、恐らく主人公に自分を重ねて撮っている、ニューヨークを愛して止まない監督らしい。ニューヨークという刺激の多い特別な街で生きる人々独特の、繊細な心の機微が静かに伝わってきます。

脇を固める役者がけっこう豪華。主人公トーマスに風変わりなアドバイスをする作家にジェフ・ブリッジス、父親役に007シリーズのピアース・ブロスナン、母親役に『セックス・アンド・ザ・シティ』のシンシア・ニクソン、そしてトーマスとも深い中になる父親の愛人役に『アンダー・ワールド』『セレンディピティ』のケイト・ベッキンセール

最初はナイーブで目立たない少年に見えるトーマス。そんな彼の純粋さが好きで友達付き合いをしているミミ。ある日アパートに越してきた作家ジェラルドに「心の声に従え。窓を見つけて飛び出すんだ」と助言を受け、日常が少しずつ変わり始める。

右:セントラル・ステーション内のレストランで父と食事をするトーマス
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その頃、カフェで父親と若い美女との不倫現場を目撃したトーマスは、ミミと共にその女を尾行する。知らなかった父の姿を目にして動揺するトーマス。精神的に不安定な母親を気遣いながらも、父の愛人ジョハンナと接触したトーマスは彼女に惹かれていき、ついに関係を持ってしまう。ミミに彼女と寝たのかと問われ嘘をつくトーマスだったが、「あなたはこの街の人間たちとは違うから信じている」と言われ、自分がしていることの罪悪感に苦しむ。

しかしやがて、ジョハンナとの関係が父に知られ、父の不倫も母の知るところに。果たしてウェブ一家とジョハンナ、そしてジェラルドらの関係はどうなるのか。さらに隠されたトーマスの出生の秘密が明らかになり、物語は思わぬ展開へ…。

◆名セリフ発見!◆

❝ あなたは私に求愛してる。気付いてないだけ。 ❞

「父と別れろ」とけんか腰で詰め寄るトーマスに、ジョハンナが自信たっぷりに放った挑発的なこのセリフ。まんまとそれに乗っかってしまうトーマスなんだけどね。確かに、こんなこと言われたら、事実はそうでなくともそんな気になってしまうのが男というものかも。イイ女は会話もオシャレ。悪女役が似合うケイト・ベッキンセール姐さん、さすがです〜ちなみにこれはかなりの意訳。すごいセンス

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したたかな悪女

興味深いのは、愛人ジョハンナの心理。父と息子の両方と関係を持ち、両方を愛しているとのたまってなかなか関係を終わらせようとしないどころか、反省の色さえ見せない彼女の真意は一体…?苦しんではいるようだけど、よくあんな結論(見てのお楽しみ)を出せるわね

父子双方と関係を持つ女、といえば思い出すのが『ダメージ』。あちらはジェレミー・アイアンズが息子のフィアンセであるジュリエット・ビノシュとの泥沼不倫にはまっていく、ヨーロッパの香り高いダークな作品でゾクゾクしながら見てしまったが、こちらは同じ父子相手の不倫でももう少しライト。とりあえず死人は出ない(ホッ

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素顔のニューヨーク

この映画の舞台は、思いっきりニューヨーク。トーマスとジェラルドの住む古いけどめちゃくちゃニューヨークっぽいアパートや、トーマスが父親と食事するグランド・セントラル駅構内の老舗レストランGrand Central Oyster Bar & Restaurant、ミミが働いているレトロな古書店Argosy Book Store(写真左上)、ジェラルド行きつけのカフェバーBrooklyn Inn(写真右上)、ハリウッドスター御用達のオシャレなナイトクラブの数々と、ツーリストがなかなか見られないニューヨークがわんさか出てくる。

トーマスとジョハンナが深い関係になってしまうパーティ会場は、Brooklyn Museum(右)だ。

ニューヨークを舞台にした映画では、美術館がパーティ会場として使われることが多い。日本ではちょっと考えられないけど。
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原題であるサイモン&ガーファンクルの「The Only Living Boy in NewYork」ほか懐かしいメロディをバックに、両親と息子であるトーマスの青春時代が重なっていく。それは同時に男としてのトーマスの成長過程でもある。ニューヨークという大都会で生きる人々の愛憎に満ちた物語。それでいてどこか優しい愛情も含んでいる。

小品ながら、隠しておきたい宝物のような映画だ。
ニューヨークに住んでいるような気になれるかも!?

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最後はトーマスと父がセントラル・パークを歩くシーンで終わる。ニューヨークを愛する監督の作品だけあって、いたる所に素顔のニューヨークが散りばめられている。






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