2016年04月08日
霊使い達の旅路 第一章・二話(遊戯王OCG二次創作)
はい。遊戯王OCG二次創作、「霊使い達の旅路」第二話掲載です。
まだ序盤なので文章量が少ないですね(汗)
次回あたりからボリュームが出てくると思うので、しばしお待ちくださいな。
―2―
一日目の道中は、何事もなく過ぎた。
時折休憩をしながら歩き、峠越えの途中で日が落ちた。
「・・・今日は、ここまでだな・・・。」
杖に『闇をかき消す光(シャイニング・ウィスプ)』を灯しながら、ダルクが言う。
するとそれに応じてD・ナポレオンとハッピー・ラヴァーが木々の間を飛び回り、薪を集める。
しばしの後には、明々と燃える焚き火が森の闇を照らし出していた。
「・・・この調子だと、明日の夕刻頃には氷結界の領域に入れるな・・・。」
「そうですね・・・。」
折った薪を火にくべながら言うダルクに、膝の上で眠るラヴァーを撫でながらライナは答えた。
パチパチパチ
爆ぜる焚き火。
それを見つめていたライナが、ポツリと呟く。
「なつかしいですね・・・。」
「・・・ん・・・?」
視線を上げるダルク。
その横に、いつの間に移動してきたのか。ライナがポトンと腰を落とした。
トン・・・
肩にかかる重み。
ライナが、その身をダルクに寄りかからせて来ていた。
「・・・どうした・・・?」
「・・・なつかしいです・・・。」
かけられる問いに、繰り返す。
腕の中で眠るラヴァーを気遣いながら、何処か遠い所を見る様な眼差しで焚き火を見つめる。
「・・・”あの頃”以来ですね・・・。」
炎の光に揺れる、明灰色(ライトグレー)の瞳。
その口調に、いつものおちゃらけた様子はない。
「こうやって、夜を二人で過ごすのは・・・」
「・・・そう言えば、そうだな・・・。」
自分の相方(D・ナポレオン)が眠り込んでいるのを確認しながら、ダルクは言う。
「・・・最初の頃は、大変だったな・・・。お前、一緒のベッドじゃないと嫌だって駄々こねて・・・。」
パキリ
枝を折る音に、ダルクの忍び笑いの声が重なる。
「・・・先生、随分と困ってたぞ・・・?」
「言わないでくださいよ。」
わざとらしく膨れてみせるライナ。
「あの頃は、ライナにはダルクだけだったんですから・・・。」
そんな事を行って、ライナはダルクを見る。
「いいえ・・・。」
その目が、熱を持った様に潤んでいるのは気のせいだろうか。
「・・・おい・・・」
言いかけたダルクの手に、ライナの手が重なる。
「今だって・・・」
白い指が、絡もうとしたその時―
「・・・よせよ・・・。」
言葉と共に、ダルクの手がするりと抜ける。
「・・・”そういう事”は、もうなしだって決めただろ・・・?」
穏やかな、けれどはっきりとした拒絶の声。
「・・・分かってますよ。冗談です。」
苦笑いしながら、手を引っ込めるライナ。
「ちょっと、からかっただけです。」
そして、背後の木にもたれなおす彼女。ダルクは問う。
「・・・不安か・・・?」
「・・・何がですか?」
「・・・モイの奴に、会えるかがさ・・・。」
その言葉に、ライナの顔に影が差す。
「そうですね・・・。」
「・・・宛はあると言ったろ・・・?」
「確実な話では、ありませんから・・・。」
そう言って、息をつく。
「でも、それにかけるしか術はない・・・。」
「・・・そもそも、モイ自身で戻って来れる可能性はないのか・・・?」
「モイ君の母星があった場所は、この星から数千光年クラスで離れています。彼の時空移動の能力を使っても、数百年はかかってしまいます。」
それを聞いたダルクもまた、ハァと息をつく。
「・・・数百年、か・・・。」
「そうです。それだけの時間を彷徨って、彼はこの星にたどり着きました。」
「・・・一人で、か・・・?」
「はい・・・。」
頷くライナの顔に、苦痛の色が浮かぶ。
「・・・似てる、か・・・?」
「・・・・・・?」
「・・・僕達に、さ・・・。」
その言葉に、しかし今度は首を振る。
「ライナには、ダルクがいました。けれど、モイ君は本当に一人ぼっち・・・。」
「・・・そう、だな・・・。」
自分も木に背をあずけながら、ダルクは遠い星空を仰ぐ。
「・・・何とかして、やらなくちゃな・・・。」
「はい・・・。」
そこにかの者の姿を探す様に、ライナもまた空を仰ぐ。
見つめる星空。
けれど、そこに答えを返す者はない。ただ、煌々と瞬く星々が揺れるだけ。
「・・・もう、寝ろ。・・・明日は、早いぞ・・・。」
「・・・そう、ですね。」
視線を戻したダルクに言われ、頷くライナ。
「・・・僕が見張りをしてるから、安心して寝ろ・・・。」
「はい・・・。」
そう言うと、ライナは渡された毛布を被って横たわる。
「おやすみなさい・・・。」
囁く様な声。
毛布の中から聞こえる息遣いは、すぐに寝息へと変わる。
余程信頼しているのだろう。その顔には、森の夜闇の中で眠る不安は微塵も見られない。
それを確認すると、微かな笑みを浮かべてながらダルクはもう一度夜空を仰ぐ。
「・・・モイ・・・。」
誰ともなしに呟く。
「・・・戻ってきてくれよ・・・。”こいつ”を、友達だと思っているのなら・・・。」
放つ言葉は、夜の空へと溶けていく。
―と、
「ん・・・」
小さな声を上げ、横たわるライナがもぞりと動いた。
「・・・・・・。」
息を潜め、様子を伺うダルク。
けれど、少女が目を覚ます様子はない。
ほどなく戻ってくる、安らかな寝息。
その寝顔を見つめていたダルクが、ふとその目を細める。
「・・・冗談、か・・・。」
チャリ・・・
微かに響く、金属音。
はめた手枷の鎖を鳴らしながら、ダルクの手が伸びる。
「・・・こっちは、冗談でもないんだけどな・・・。」
そんな言葉とともに、布を巻いた指がライナの頬を優しく撫ぜた。
続く
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明日にも氷結界の領域に入るようですね。なるほど、エリアもこの道を通ったのかと想像しつつ、物資調達員の脚力の強さにも思いを巡らせてみる。彼は今日もまた鉄道も通っていない未開の地へ物資を運んでいることでしょう。
氷結界までは歩いて2、3日くらい?徒歩や馬しか移動手段がないにしても、そんなに離れていない感じがするな。そんなに広くないところに色々な土地があって、様々な種族が住んでいるようだ。地水火風の四大元素の影響だろう。