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2016年10月13日

霊使い達の旅路 第一章・五話(遊戯王OCG二次創作)




 ホントに久々。遊戯王OCG霊使いSS更新です。
 大概サボりすぎでしたね・・・・・・orz
 しばらくは、これの作成に集中したいと思います。更新頻度は減りますが、どうぞご容赦の程を。
 ではでは。



ライナ2.jpg




                 ―5―


 「はぁ〜。この衣の肌触り、エリアさんを思い出しますぅ〜」
 「そ…そうですか……?」
 自分の肩に頬ずりをしながらウットリとする少女に、ライナは顔を引きつらせながら言った。
 その様を見たダルクとハッピー・ラヴァーも、一歩離れた場所に身を引きながら囁き合う。
 「……苦戦してるな……」
 『いつもは、引かれる方だからねぇ……。慣れてないんだろうなぁ……』
 「……それにしたって、何だってこう行く先々で変人に会うんだ……。ついてない……」
 「おいおい。その行く先々の変人ってのは、俺達も入ってるんじゃないだろうな?」
 横から、アバンスがそんな事を訊いてくる。
 「……馬鹿だなぁ。例外なんて、ある筈ないだろう……?」
 朗らかに笑みながら、答えるダルク。
 「そうか、そうか。正直な奴だな。お前は」
 やっぱり朗らかに笑みながら、剣を抜くアバンス。
 「……いやいや。褒めても何も出ないぞ……?」
 笑うダルクの杖にも、光が灯る。
 「こらこら、やめなさい。全く、似た者同士なんだから。」
 そんな事を言いながら、間に入るエミリア。
 二人が声を揃えて叫ぶ。
 「「誰と誰が似た者同士だ!?」」
 『……息ぴったりデスネ……』
 そしてD・ナポレオンはまた一つ、溜息をついた。

 ここは氷結界の本殿。その大広間。
 只今、歓迎の宴の真っ最中。
 人々で賑わうその中で、ライナは他のメンバーが見守る中、一人の少女に執拗に絡まれていた。
 酒精の香りとともに、まとわりついてくる少女。それに辟易するライナ。
 ゲンナリ顔の一同に対し、氷結界の面々は面白そうに事を見つめている。
 すっかり、酒の肴状態である。
 何故、この様な事態に陥ったのか。
 話は数刻前に巻き戻る。


 入口の一件で散々もみくちゃにされた後、一行は氷結界領地の中に建立された寺院に案内されていた。
 そこの主である修験者は彼女達を歓迎し、一人の少女と引き合わせた。
 何でも、以前に訪れたエリアと並ならぬ縁を結んだらしい。
 そうだろうな。と思った。
 並ならぬどころか、只事ではなかったのだろうな。と思った。
 何しろ、件の少女。
 それまで、物静かに書を書いていたのに、部屋に案内されたライナとダルクを見た途端、一瞬で肉薄してきたのだから。
 その様、まさに獲物に飛びかかる肉食獣の如きであった。
 「そ、そそそその衣装!!よ、よも、よもやエリアさんの縁の方では!?」
 「……お、おお……!?」
 「そ、そうなのですけど……?」
 そう答えた途端、
 ギュウゥウウウウウ―――ッ
 「ぐぅえぇえええ!?」
 絞め殺す様な勢いで、抱きしめられた。
 「ああ、エリアさん!エリアさん!!エリアさん!!!」
 「ラ……ライナはエリアちゃんではないのですぅ!!っていうか、ギブギブ!!しんじゃう!!マジでしんじゃうのですぅううううう――――!!!!」
 「エリアさ――――ん!!!!」
 「ぎゃ――――!!!!!」
 「こら。いい加減にせんかい」
 ボコンッ
 「ぎゃうっ!?」
 近づいてきた修験者に数珠で叩かれ、ひっくり返る少女。
 開放されたライナ。床に手をつき、ゼハゼハと息を吐く。
 「し……しんりのとびらのむこうが、みえたのです……」
 「すまんな。次の役付きの者への引き継ぎが長引いていてな。”そちら”への留学の準備がなかなか進まなんだ。おかげで、すっかりフラストレーションが溜まってしまってなぁ」
 「う、うう……。あれ?私は一体……?」
 頭を押さえながら起き上がった少女は、我に戻った様に辺りを見回す。
 「正気に戻ったか?風水師。此方の方達は、お主の恩人の同胞だ。良くさせていただくがいい」
 「は、はい。修験者様……」
 フラフラと立ち上がった風水師は、改めて一同に向き直る。
 「『氷結界の風水師』です……。皆様、どうぞよしなに……」
 「「「「『『は……はぁ……』』」」」」
 一歩下がって頷く一同。
 「うむ。それでいい」
 言いながら、ニヤニヤする修験者。
 「それにしても若い者はいい事よ。風水師、件の方の近況、しっかりと聞かせてもらえよ。積もった鬱憤も、それで幾ばくかは晴れよう」
 「し、修験者様!!」
 「ははは。今、本殿では歓迎の用意がされておる。準備が出来るまで、客人の相手を頼むぞ」
 言いながら、部屋の出口へ向かう修験者。
 扉を閉める前に、ヒョイと振り返ってこんな事を言う。
 「おう、そうそう。その方々、互いに想い人がいる様だぞ。血迷って手を出すなよ」
 ビュンッ
 飛んできた硯を、閉じる扉でガードしながら、修験者は笑い声と共に回廊の奥へと消えていった。
 「あ……あの生臭坊主……!!」
 肩で息をしながら、怨嗟の呟きを漏らす風水師。
 確かに、悟りの道は遠そうではある。
 と、ふと視線を感じ、振り返る。
 そこには、一歩どころか部屋の隅まで下がってこっちを見る一同の姿。
 その眼差しには、怯えの色が濃い。
 顔を引きつらせる、風水師。
 「ち、違いますからね!?あれは生臭……もといあの方の冗談ですからね!?」
 「「「「『『……』』」」」」
 返る視線は、あくまで冷たい。
 「ほ、本当ですってば〜!!」
 「「「「『『……』』」」」」
 「信じてくださ〜い!!!!!」
 仄明るい殿の中に、風水師の泣き声が響いた。


 「くすん……それで、エリアさんはお元気なのでしょうか……?」
 半泣きの目を拭いながら、そんな事を訊いてくる風水師。
 他にも訊く事があるだろうに、何よりもまずそんな事を訊いてくるあたり、こじらせっぷりが伺える。
 「は、はい。落ち込む事もあったけど、エリアちゃんは元気なのです」
 風水師の一挙手一投足に警戒しながら、ライナは答える。
 「そうですか。それは重畳……」
 「はい」
 ホッとした様に綻ぶ風水師を見て、ライナも微笑む。
 横で話を聞いていたエミリアが、ダルクに囁く。
 「エリアって、確かエリアルの縁者の娘よね……」
 「……ああ、らしいな……」
 それを聞いたエミリアは、その視線を風水師に向ける。
 「ちょっと、ごめんなさい?」
 不意に声をかけられた風水師が、驚いてエミリアを見た。
 「は、はい。何でしょう?」
 「そのエリアと言う娘、氷結界(ここ)で何をしたの?」
 かけられた問い。
 途端、何処か浮ついていた風水師の顔が引き締まる。
 「それは、言えません」
 キッパリと断る彼女。
 そんな風水師に向かって、エミリアは笑顔で言う。
 「あらあら、そう気張らないで」
 「そうはいきません。これは、エリアさんとの約定なれば」
 凛とした態度ではねつける風水師。
 エミリアは困った様に、小首を傾げながら頬に指を添える。
 「そう。エリア(彼女)に公言するなと言われているのね?」
 「はい。」
 「エリア(あの娘)らしいわね。余計な所に迷惑がかかるのを嫌っているのね」
 その言葉に、頷く風水師。
 「お察しがいいですね。それなら……」
 しかし、エミリアは言う。
 「でもね、考えてもみて」
 そう言って、笑顔を深める。
 「私達は、エリア(あの娘)の同胞(はらから)なのよ。友人の事を想って知りたいと思うのは、当然の事ではないかしら?」
 「はぁ?」
 「……おい、何処の誰がはらか……ムガモガ……」
 突っ込もうとしたライナとダルクの口を、アバンスが背後から塞ぐ。
 「大丈夫。私達も、友人の思いを無下にはしない……」
 言いながら、エミリアはスス、と風水師に近づく。
 白い手が上がり、風水師の顎に添える。
 「へ……?」
 そのまま、クイッと彼女の顎を上げると艶かしく囁きかける。
 「言い回る様な真似はしないわ。だから、ね?」
 ふわりと漂う甘い香。
 艶のある視線が、間近で見つめる。
 途端、ドギマギする風水師。
 「な、何を言ってるんですか!?私は絶対に……」
 「ほらほら。そんなに力むと、可愛い顔が台無しよ?」
 言葉とともに、白魚の様な指が唇を優しくなぞる。
 背筋を走る、ゾクゾクとした感触。
 硬直する、風水師。
 触れんばかりの距離で、艶かしい唇が囁く。
 「エリア(彼女)の思い、私達も分かち合いたいの……」
 「あわ……あわわ……」
 真っ赤な顔で戦慄く風水師。
 「ね……?お・ね・が・い……」
 そして、火照った頬に冷たい唇が軽く一触れ。
 「―――――っ!!!」
 腰からヘナヘナと崩れる風水師。
 ――詰みであった。


 「さあ、聞かせて……」
 「は……はひ……」
 力なく座り込んだ風水師。
 そんな彼女に、笑顔で言うエミリア。
 その様を見たダルクが、アバンスに問う。
 「……お前の相方、ジゴロでもやってたのか……?」
 「……言うな……」
 少なからず疲れた表情で、呟くアバンスだったりするのだった。


 「……と言う、訳です」
 そう言って、言葉を結んだ風水師。
 場にいる皆が、一斉に息をつく。
 「……エリアちゃん、ライナたちのしらないうちに……」
 「強い、娘ね……」
 ライナとエミリアの言葉に、風水師は「はい」と頷く。
 「とても、お強い方でした……」
 少し離れて聞いていたアバンスも呟く。
 「あの時、只者じゃないとは思ったけどな」
 ジールギガスとの最後の戦いの時、共に戦場を駆けた少女。その姿を思い描きながら、隣りのダルクに尋ねる。
 「あいつ、エリアルの側にいるのか?」
 「……ああ。昼も夜も、暇があれば会いに行っているよ……」
 「そうか……。心強いな……」
 「……もう、十分だ。あまり背負わせるな……」
 「お前が決める事じゃ、ないだろう?」
 その言葉に、ダルクはふてくされた様に口を噤んだ。


 「あなたも、エリアちゃんをたすけてくれたのですね……。ありがとなのです……」
 「いえ、私のした事など……」
 改めて頭を垂れるライナに、風水師はそう言って首を振る。
 「エリア(あの方)は、私のみならず、氷結界の者全てを縛っていた鎖を砕いてくれました。その恩義には、何をもってしても釣合いません」
 そして、溜息を一つ。
 「だから、せめて約定だけは守ろうと思っていたのですけれど……」
 言いながら、恨めしげな視線を送る先にはエミリアの姿。
 当人、素知らぬ顔でニコニコ笑んでいる。
 「……恐ろしい女(ひと)……」
 その呟きは、果たして届いたものかどうか。


 その後、しばしの会話を交わし、一同と風水師が打ち解けた頃、
宴の準備が出来たとの報が届いた。


 そして、話は今に至る。


 「えへへへへぇ〜〜〜。エリアさ〜〜〜ん♡」
 「いや、だからライナはエリアちゃんじゃないのです!!」
 「つれない事言わないでくださいよぅ〜〜〜。もう、3ヶ月も予定が遅れちゃってぇ〜〜エリア分が欠乏症なんですよぉ〜〜〜〜」
 「エリアぶんって、なんですかぁ――――!?」
 すっかり酔いの回った風水師が、グダグダになってライナに絡む。
 ライナの衣に頬ずりしながら、クンカクンカ匂いを嗅ぐ姿はすっかり危ない人である。
 「な、なんとかしてくださいぃい〜〜〜!!」
 ライナは助けを求める様に視線を巡らすが、肝心のダルクは面倒事はごめんとばかりに距離を置いている。
 エミリアとアバンスはいつの間にか、姿が見えない。
 氷結界の連中は、皆いい具合に酒が回ってライナの受難を見てバカ笑いするばかり。
 最後の良心たる使い魔2体に至っては、そんな氷結界の酔っ払いに酒を注ぎ込まれて酔い潰れている。
 救いはない。
 孤立無援である。
 「エリアさぁ〜〜〜ん♡」
 「ちょっとまってくださ―――い!!」
 耐えかねたライナ。ついに禁断の切り札を切る。
 「なんか、エリアちゃんエリアちゃんいってますけど、エリアちゃんにはもういいひとがいるですよ!?」
 ピタリ
 途端、動きを止める風水師。
 あれ?上手くいったかな?とライナが思った瞬間――
 「なぁ〜〜にぃい〜〜〜〜〜!?」
 地の底から響く、亡者の怨嗟の如き声が響く。
 ガバァッ
 俯いていた風水師が、バネ仕掛けの様に跳ね上がる。
「ひっ!?」
 至近距離でさし向かう視線。
 異様に収縮した瞳孔が怖い。
 「それはぁ、どういう事ですぅうかぁあああ!?」
 「え?ええ?」
 「あぁのぉお時ぃいい、一緒に来いってぇえ言ったのぉお、エリィアさんじゃあぁああなぁいぃでぇすぅかぁあああ!!」
 獲物を呑み込まんとする毒蛇の様な顔で、ライナに迫る風水師。
 ライナ、真っ青。
 「い、いや、そのくだりはしらないですよ!?」
 「弄んだんですぅかぁああ?私の事ぉお、もぉてあそぉおおおんだんでぇすかぁああ!?」
 「いや、ですから、その、あのね?」
 焦るライナに、さらに迫る風水師。
 酒臭い息が、猛火の様に顔にかかる。
 「って言うかぁ、誰ですかぁ?エリアさんのぉ、いい人ってぇえ、だぁれでぇすぅかぁああ?」
 「えぁ?あ?そ、その、ギゴくん、ですけど……?」
 「ギィゴォオオオヲヲヲ!?」
 胡乱げだった目にカッと灯る、昏い焔。
 「ひぃ!?」
 風水師の手の中の盃が、バキャンと悲鳴を上げて砕け散る。
 そのまま、ギシギシと手の中の欠片を握り締める。
 「ちょ、血!!血ぃ出てますよぉ!!」
 もはや、ライナの悲鳴も届かない。
 「あぁのぉ!!トカゲ野郎ぉおおぉお!!抜け駆けしやがったなぁああああ!!!!」
 血塗れの破片を握り締め、迫る風水師。
 ポタポタと床に落ちる、赤い雫。
 はっきり言って、めちゃ怖い。
 「ち、違います!!ライナはギゴ君じゃないですよぅ!!」
 「血の盟約を忘ぅれたかぁあああ!!??」
 「ちょ!!誰か助けてぇえええ!!」
 ライナの悲鳴は、酒宴の喧騒の中に埋もれて消えた。


 酔っ払いのヤンデレと言う、およそこの世で最も厄介な存在にライナが絡まれていた頃、

 「向こうは、賑やかね」
 そう言ってクスリと笑う、エミリア
 「……向こうにいたいんじゃないのか?」
 そう問うアバンスに、薄く目を閉じて頭を振る。
 「前にも言ったでしょう?光(あそこ)は私達のいる場所じゃないわ」
 そして、エミリアはもう一度眼下の闇夜に目を向ける。
 「……”いる”な……」
 「ええ……」
 アバンスの言葉に頷くエミリア。
 「行くか?」
 「ええ。今の私達は、そのために在るのだから」
 「……”あいつら”に、一言言わなくていいのか?」
 「……もともと、そんな仲じゃないでしょう?」
 どこか寂しげな眼差しで、エミリアは言う。
 「……利用されたと思ったら、怒るかしら?あの娘達……」
 「謝ればいいだろう?」
 「いつ?」
 「いつか、さ」
 何でもない事の様に言う相方に、薄く微笑みかけるとエミリアはフワリと窓辺に上がる。
 それを追う様に、アバンスも飛び乗る。
 「行きましょう」
 「ああ」
 言葉と共に、翻る法衣とマント。
 そして、二人の姿は満ちる夜闇の中へと溶けて消えた。


                                 続く
この記事へのコメント
 氷結界の龍三体の攻撃から風水師をかばい、『我が身を盾に』を発動したエリア。その後倒れこむエリアを風水師が抱きとめた。そう、エリアが風水師に外の世界の広さを説き、氷結界を解き放つと語ったのは、彼女の腕の中であった。この時初めて風水師はエリアの心と身体に触れ、その思いを知ったのだった。

「はぁ〜。この衣の肌触り、エリアさんを思い出しますぅ〜」
Posted by zaru-gu at 2016年11月04日 23:55
小説が更新されていたので読みました。
久しぶりに風水師ちゃんが見れましたがヤンデレ属性が追加されているとはw
アバンスとエミリアの行動も気になりますが、ライナはモイ君を連れ戻す事ができるのか、目が離せませんね(≧▽≦)
Posted by 里ノ月 一 at 2016年10月16日 19:51
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