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2016年05月29日

霊使い達の旅路 第一章・四話(遊戯王OCG二次創作)




 遊戯王OCG小説、「霊使い達の旅路」、久々の更新です。


ライナ2.jpg



                ―4―

 いつの頃からだろうか。
 氷龍達が封じられ、平穏を取り戻した筈の氷結界。
 その本山内で、奇妙な噂が流れる様になっていた。
 曰く、入り組んだ氷の迷宮内で、響く馬の蹄の音を聞いた。
 曰く、夜闇に沈んだ回廊で、蠢くおぞましい影を見た。
 曰く、広場に築かれた慰霊碑の前に、佇む人影を見た。
 捉えどころのない、空虚な噂。
 怪談話。
 日々賑わいを取り戻していく界隈の中で、霞もうとも消えずに流れる虚ろ話。
 本気にする者は僅か。
 気にする者も、僅か。
 時折の茶請け話に登らせながら、好事家達が笑うだけ。
 日々は変わらず流れゆく。
 噂に釣られ、かの地を訪れる者達。
 その中に、二度と帰ってこない者がいる。
 そんな、ささやかな事実も置き去りにして。


 「……ここが、氷結界の本山……」
 「ゆうそうですねぇ」
 目の前にそびえる銀峰を前に、ダルクとライナが感嘆の声を上げる。
 「あそこが、入口よ」
 隣りにいたエミリアが、示す先。
 そこには、氷結界の紋章を模した門があり、東洋風の衣装を着た人々が大勢出入りしていた。
 「……随分と賑やかだな……」
 人賑わいが苦手なダルクが、眉をひそめる。
 「そんな顔しないの。氷結界(ここ)の人達は、ようやく外界とつながれる様になったのだから」
 溜息をつくダルクを姉の様に諌めながら、エミリアは先立って門に向かう。
 「なんか、みょうにじじょうにくわしいのですね」
 「ああ……。”俺達”には、つてがあるからな」
 ライナの問いに答えながら、アバンスがエミリアに続く。
 「つて…?」
 「……考えてもしょうがないだろ。今は、あいつらに倣おう……」
 小首を傾げるライナにそう言って、ダルクもエミリア達の後に続いた。


 「……うわ……!?」
 「な、なんですか!?あれ!!」
 門をくぐったダルクとライナは、一様に驚きの声を上げた。
 門の先には台座があり、そこには巨大な鳥が座を構えていた。
 その鳥は、過ぎ行く人々に視線を巡らせながら、時折呼び止めては言葉を交わしている。
 どうやら、人語が解せるらしい。
 「『氷結界の番人 ブリズド』よ。虎王ドゥローレンほどの神格はないけど、立派な氷結界の聖獣の一柱。失礼のない様にね」
 言いながら、エミリアとアバンスはブリズドがとまる台座に向かう。
 「ごきげんよう。ブリズド様」
 エミリアがそう言って会釈すると、ブリズドはその猛禽の様な顔をこちらへ向けた。
 『外界の者か?』
 氷が鳴る様な、透麗な声が響く。
 それに答える様に、エミリアも鈴音の様な声で応じる。
 「はい」
 『氷結界(我ら)の本地に、何用で参った?』
 「ここに、求めるものがあります。通していただけますか?」
 『こちらへ、来るがいい』
 その言葉に従って、一歩近づくエミリア。
 そんな彼女に、身を屈めたブリズドが頭を寄せる。
 「あ……!?」
 「待て」
 驚いて駆け寄ろうとするライナを、アバンスが止める。
 「大丈夫だ。見てろ」
 促されて、見てみる。
 エミリアに寄せられた、ブリズドの頭。
 それを飾る王冠が、不思議な光を放つ。
 しばしの間。
 そして――
 『……邪心は、ない様だな。』
 言いながら、頭を上げるブリズド。
 「信用して、いただけましたか?」
 問う、エミリア。
 『確かに』
 その言葉に笑みを浮かべながら、エミリアは言う。
 「ありがとう。それにしても、随分賑やかになりましたのね。先日までの噂が、嘘の様。」
 その言葉に、頷くブリズド。
 『うむ。氷結界(我ら)としても、今の日々が夢の様に思える時がある。よもや、あの氷龍達の呪縛から解かれる日が来ようとは…』
 そこまで言った時、ふとその視線が止まった。
 急に押し黙ったまま、エミリアの後方を凝視している。
 「?」
 怪訝そうに振り返るエミリア。
 その先にいたのは、ダルクとライナ。
 『……かの者達は、そなたの連れか?』
 「そうですけど、何か……?」
 ブリズドが、ライナ達に向かって言葉を放つ。
 『貴殿等、一つ問いたいのだが……』
 「は、はいです!!」
 「……何か……?」
 『その衣装、”精霊使い”の者と見受けるが、違いはないか?』
 思いもよらず飛んできた言葉に、ポカンとする二人。
 「は、はい。そうです。こうれいつかいなのです!!」
 「……闇霊使い……。知ってるのか……?」
 それを聞いたブリズドが、眼差しを細める。
 もう一度、問う。
 『……なれば、”水霊使い”の名は知っているか?』
 もう一度、驚く。
 「”エリア”ちゃんを、しってるですか!?」
 ザワッ
 その名が聞こえた途端、人々の間にざわめきが広がる。
 「え?え?なんですか?」
 「……何か、様子が変だぞ……?」
 ザワザワッザワッ
 ざわめきは人々を伝い、広場全体に広まっていく。
 流石に、エミリア達も戸惑いを隠せない。
 「お前ら、何かしたのか?」
 「エリアって、確か貴女達と一緒にいたエリアルの同郷の娘よね?」
 「そ……そうですけど……」
 と、ダルクが思い出した様に言う。
 「……そう言えば、あいつこの間の宿題の時、北(こっち)の方に来たとか言ってなかったか……?」
 「……あ……」
 ライナとダルクの顔から、一気に血が下がる。
 「……あいつ、何かしでかしたのか……?」
 「ありえるです……」
 「おいおい……」
 「それはちょっと、勘弁してほしいわね……」
 滝の様に油汗を流すライナ達と、顔を引きつらせるエミリア達。
 そんな彼女達を取り囲む様に、人々が集まってくる。
 「エリアだって……?」
 「エリアって、あの娘でしょう?」
 「仲間なのか?」
 騒めく人混みが、4人を見つめる。
 逃げ場は、ない。
 「ど……どうしましょう……」
 狼狽えるライナの横で、ダルクとアバンスが武器に手をかける。
 「……最悪……」
 「強行突破だな……」
 張り詰める空気。
 取り囲む群衆の輪が、徐々に狭まってくる。
 4人に緊張が満ちた、その瞬間――
 「待って。様子が変よ?」
 エミリアが囁く様に、言った。
 途端――
 ワッ
 群衆から、歓声が上がった。
 「え!?え!?」
 「な、何だ何だ!?」
 訳が分からぬまま、殺到する群衆にもみくちゃにされる。
 「貴女達、あの娘の仲間なのね!!」
 「あの娘は元気かい!?」
 「よく、来てくれた!!」
 訳が分からない。
 いい加減、目が回りそうになったその時、
 『皆、そのくらいにしておけ。客人がまいっているぞ』
 事態を眺めていたブリズドが、ようやくそう声をかけた。
 それに我に返ったのか、落ち着き始める群衆。
 「ああ、ごめんなさい」
 「つい、嬉しくてね」
 「話は後で、聞かせておくれ」
 口々に言いながら、ライナ達の肩を叩いていく。
 「な、なんなんですかぁ〜?」
 「……エリアの奴、一体何したんだ……」
 フラフラになった4人に、ブリズドが声をかける。
 『すまない。久々の喜事でな。皆、興奮してしまったようだ』
 「いや、それはいいんですけど……」
 「何が何だか……」
 『その様子だと、話は聞いていない様だな。らしいと言えば、らしいか』
 言いながら、フフと笑むブリズド。
 「なんのことですぅ〜?」
 『顛末については、おいおい話そう。まずは歓迎するぞ。客人(まろうど)よ』
 そして、ブリズドは群衆の中の数人に指示する。
 『お前達、客人達を案内してくれ。それと……』
 氷色(ひいろ)の目が、広場の奥を見つめる。
 『世話役に、風水師をつけるがいい。喜ぶ事だろう』
 どことなく、面白そうな声音。
 ライナ達は訳が分からぬまま、お互い顔を見合わせた。


                                  続く
この記事へのコメント
 氷龍達との戦いにおいてブリズドさんの名前が登場する事は無かった。一体何をしていたのだろうか。
 @ 情報連絡役として奔走していた。
 A 番人の名の通り、万が一氷龍達が氷結界の地を出ようとした時には、己の命をもって食い止めるつもりでいた。
 B ドゥローレンとお茶でも飲んでいた。エリアが来た時は親戚の法事で不在だった。
 C 最近赴任した。

 ――とあるパラレルワールドでのお話――
『……なれば、”水霊使い”の名は知っているか?』
「しらないですねー」
「水霊使いは、ずっと欠番のはずだ……」
『…………そうか』

《青い髪の精霊使い》 通常モンスター
 ☆3 水属性 魔法使い族 ATK500 DEF1500
 いたる所で世界を救っているツンデレ少女。爬虫類族の使い魔とともに多くの人々を救ってきた。彼女をよく知る者は、「信じられない」「またやらかしたか」「映画版ジャイアンだ」と口を揃えていう。救われた者の中には、彼女に心奪われてしまう者も少なくない。彼女は今日もどこかで世界を救ったり、お仕置きを受けたりしているだろう。
Posted by zaru-gu at 2016年06月02日 20:51
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