2020年06月21日
株式と投資信託の性質をもつ「ETF」
ETFとはExchange-Traded Fundの頭文字をとったものであり、日本語に訳すと「上場投資信託」と呼ばれます。
コロナウィルスで冷え込んだ市況を立て直すために日銀が大量購入をしたりするなどで話題のETFですが、本日は、普通の投資信託とETFの違いについてご説明していきます
ETFは上場投資信託という名の通り、基本的には投資信託と同じく株式、債券、不動産、金、原油などの資産に対して、複数銘柄を混ぜ合わせて運用されている商品なのですが、通常の投資信託とは、以下のような点で異なっています。
株式取引のように指値の注文が出来る
通常の投資信託は、取引日の注文締切時間を過ぎた後で、1日1回決定される基準価額を基にして売買が行われます。
(従って、通常の投資信託の売買注文を発注する段階では、1口当たりいくらでの取引になるかが分かりません)
それに対しETFは、通常の個別株式取引と同じく、株式市場が開いている時間の間、指値注文などを用いて自分で売買価格を決めて取引をすることが出来ます
(指値注文については、『株式投資の魅力』もご覧ください。)
従って、注文が約定した際に損益がどれだけ発生するかを事前に把握出来たり、市場価格に基づいて注文を発注するかしないかの選択をすることが出来、この点でETFは優れていると言えます。
ただし反面、ETFには株式のように最低売買単位が定められており、その単位毎の発注しかできないというデメリットもあります
(投資信託の場合、最低100円などの基準額を越えれば1円単位で注文発注できることがほとんどですが、ETFの場合は、1株数千〜数万円という売買単位毎の注文しかできませんので、細かい注文金額の調整が難しいです。)
従って、少額で積立を行いたい方は投資信託、ある程度の資金があり注文価格をコントロールしたいという方はETFを使用するのが良いでしょう
コストが安い
投資信託には、主なコストとして「購入時手数料」「信託財産留保額」「運用管理費用(信託報酬)」の3つがあります。
購入時手数料とは、その名の通り、投資信託を購入する際に販売会社に支払う手数料ですが、これは、今の時代はゼロのことが多く、むしろ今の時代でも購入時手数料がとられるような投資信託は、基本的にダメファンドが多いので、ゼロでなければそのファンドは無視してもいいぐらいと私は個人的に思います
信託財産留保額とは、投資信託を売却(解約)した際に、解約に伴う費用(投資信託内の証券を売却し現金化した際の費用、等)として、負担する費用であり、この分は運用会社や販売会社などが収受するわけではなく、投資信託の資産として加算される形になります。
(昔の投資信託では、よく設定がありましたが、最近の投資信託ではあまり見かけなくなりました)
そして、最後の運用管理費用(信託報酬)、これが一番大事であり、投資信託運営に係る諸費用として、日々投資信託の資産から差し引かれる費用になります。
(一般的に年率〇%などの割合で示されており、保有している期間中ずっとかかる費用になります。)
ETFの場合は、通常の投資信託でいう購入時手数料、信託財産留保額は通常の株式売買に係る手数料が相当します。
(しかし、購入時手数料がかかる投資信託の購入時手数料は、購入額の1〜3%程度と圧倒的に高いため、ネット証券で取引する場合のETF売買手数料は、ほとんどないに等しいと言ってよいと思います。)
そして、運用管理費用(信託報酬)については、通常の投資信託よりもETFの方が安いケースが多いです
例えば、大和アセットマネジメントが運営しているTOPIX連動の投資信託(通常の投資信託は「大和−トピックス・インデックスファンド」、ETFは「ダイワ上場投信−トピックス」)の場合、通常の投資信託の運用管理費用は年率0.682%なのに対し、ETFの場合は年率0.11%とかなりコストを抑えることが出来ます
運用管理費用は、所有している間ずっとかかる費用ですので、長期で運用する場合、運用管理費用の差が運用成績に大きくかかわってきます
従って、長期保有することを考えていらっしゃる方は、基本的には、ETFが良いと考えられます。
何故「ETFが良い」、と言い切らずに「基本的に」なのかというと、ETFの場合は、配当金が支払われるケースが多いためです。
配当金をそのまま生活費に充てることを想定している方は問題ないですが、配当金を再投資に回そうと考えていらっしゃる方は、配当金から20%近い税金を引かれた後の額を再投資に回すことになりますので、その分だけ投資効率が低下することになります
多くのインデックスタイプと呼ばれる投資信託(詳細は後日投資信託のコラムでご説明しますが、ここでは投資適格ファンドくらいに思っていただければと思います)では、配当金を出さずに投資信託の資産の中に入れて自動的に再投資(この場合、二重課税を防ぐ観点から日本国内でかかる税金は免税のまま再投資)する形のものが多いので、税金による再投資効率低下が起きないケースが多いです
従って、配当金を生活費にあてて、原資は切り崩さずに長期投資する方はETFが向いていると言えますが、配当金を再投資に回すなど、複利効果も活用してひたすら長期投資を行う予定の方は通常の投資信託とETFのどちらが良いかは一長一短ですのでケースバイケースで検討する必要があります
売りから入れる
通常の投資信託の場合は、現物の取引しかできませんので、注文は買いからしか入ることが出来ません
それに対して、ETFの場合は、証券会社からお金を借りて、自分の手持ち資金以上の買注文を入れたり、ETFを借りて、売りの注文から入る、空売りという注文を入れたりすることが出来ます。
(資金やETFなどを借りて行う取引のことを信用取引といいます。)
このうち、空売り注文は、通常の投資信託ではできない注文であり、これから値下がりしそうだと思われるような局面でも利益を上げることが出来る(高値で空売りして値下がりした後の安値で買い戻せば利益を得ることが出来ます)という点で優位性があると言えます
まとめ
今回は、ETFの特徴として「指値注文が出来る」「コストが安い」「売りから入れる」の3つをご説明しました。
基本的に株式のような性質を持つETFは、銘柄の分散という投資信託の利点を生かしながら、注文価格のコントロールや相場の下げ局面でも利益が得られるなどの株式の利点も活用できる便利な商品の一つであると言えます
今回ご紹介したETFのメリット、デメリットを踏まえながら、是非ETFを活用してみてください
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メールアドレスは、入れなくても構いませんのでお気になさらないでください^^
最初に回答した内容が、かなり紛らわしい内容だったので、改めて回答しなおします^^;
投資信託の分配金が出るもので「受取コース」と「再投資コース」が選択できるものでの分配金に対する税金の扱いは、イオン銀行の方がおっしゃる通り、変わりません(両方とも以下で説明する配当金受取、分配金受取として扱われます)。
私が以下で説明する「配当金再投資」とは、投資信託の分配金として分配せずに無配のままとして、ファンドの資産に自動的に配当金を再投資してくれるものを指します(なので再投資型というより無配型のほうがしっくりくるかもしれません)
配当金受取と再投資の収益の違いについては投資後1年ではイオン銀行の人が言うように、ほとんど差がないですが、長期投資をした際に大きく変わり、また、投資対象が日本国内(日経平均インデックスファンドや日本国債ファンド、など)のものか、海外資産(米国S&P500インデックスファンドや新興国株式ファンド、など)のものかによっても変わってきます。
まず、分かりやすい日本国内資産が投資対象のケースについてご説明します。
配当年利2%、キャピタルゲイン(資産成長率、値上がり益)年率3%のような国内資産を対象とした投資信託に100万円投資をしたとします。
この場合、配当金受取だと配当金2万円に対して税金20%(正確には2037年までは復興特別所得税が課されますので20.315%ですが、分かりやすいようにここでは20%にさせていただきます^^;)がかかり、手元に1万6000円が入り、これを再投資するとキャピタルゲインで3%増えた元本+1万6千円なので1年後には104万6千円(このうち売却時に課せられる課税対象はキャピタルゲイン部分の3万円分のみです)となります。
対して配当金再投資の場合は、配当金2万円を免税のまま再投資することが出来、1年後のの資産はキャピタルゲインで3%増えた元本+2万円の105万円(売却時課税対象はキャピタルゲイン部分+配当部分両方の5万円)となります。
従って、運用1年目で売却してしまえば配当金受取も再投資も手元に残るのは104万円で変わりません。
差が出るのは2年目以降からになります。
配当金受取にした場合の元本は104万6千円ですが、配当金再投資した場合105万円となっており、2年目の収益は
・配当受取の場合「配当金20,920円、値上がり益31,380円」
⇒配当税引き再投資した後の資産額1,094,116円(うち、売却時課税対象利益はキャピタルゲイン部分の30,000+31,380=61,380円)
⇒売却税引き後の手元資産額は1,094,116-0.2*61,380=1,081,840円
・配当再投資の場合「配当金21,000円、値上がり益31,500円」
⇒再投資後の資産額1,102,500円(うち売却時課税対象は利益全額の102,500円)
⇒売却税引き後の手元資産額は1,102,500-0.2*102,500=1,082,000円
となり、最後の売却時課税を考慮しても配当再投資の方が有利になります。
これは2年目での計算しかしていないので差が160円と微々たるものになっていますが、10年、20年と続けた場合は、複利の効果でさらに差が広がっていきますので国内資産を長期運用する場合は、配当再投資(無配型)で運用されることを強く推奨します。
海外資産への投資の場合は、2020年から海外二重課税調整制度(まぁ、それ以前でも確定申告で同じ恩恵を享受できましたが・・)が始まりましたので、長期投資の場合でも一概に配当再投資(無配型)の一択が良いとは言い切れない状況です。
海外資産の場合については、配当金に対して海外現地税が引かれた後に、日本国内税がさらに引かれる形になります。
例えば、アメリカの資産に投資して100ドルの配当金が出た場合、アメリカの税金で10%引かれ、その後の90ドルに対し日本の税金20.315%が引かれて手元に71.7165ドルが残る形になります。
2020年から始まった配当金の二重課税調整制度とは、日本国税を課税する際に、海外税相当分を免除する制度になります。
例えば、冒頭の例だと、100ドルの配当に対し日本国内税だけであれば20.315ドルの課税で終わるはずですので、アメリカ国税10ドルが引かれた後の90ドルに対して日本国税は10.315ドルのみ課税して終わる(税引き後に受け取る額は79.685ドル)という形になります。
これが、海外資産を投資対象とした投資信託を考える上で大事な事項の一つです。
そして二つ目に大事なことは、配当金再投資の投資信託であっても、海外税部分は免税にならないということです。
つまり、100ドルの配当があった場合に配当金受取の場合は先述の二重課税調整制度に従い79.685ドルを受け取ることになりますが、配当金再投資の場合であっても海外税は引かれますので90ドルを再投資することになります。
ここで大事なことは、配当受取パターンで受け取った79.685ドルは既に課税されているため、再投資に回してもこの部分については新たに課税されることはありませんが、配当再投資で再投資に回した90ドルは日本国税を課税していない状態となるため、売却時に90ドルに対して日本国税20.315%が課税されることになります。
すなわち、配当金発生後、短い期間で売却をしてしまうと配当金受取ケースよりも配当金再投資ケースの方が損をしてしまいます。
海外資産への投資の場合で、配当金再投資(無配型)の方が有利になるケースは以下の2パターンです。
・長期運用をする場合
・投資対象がインカムゲイン(配当利回り)よりもキャピタルゲイン(資産成長率、値上がり率)が十分高い場合
配当金再投資の場合は、投資元本が配当金受取よりも多く稼げますので長期で運用する場合は配当再投資の方が有利になります。
また、インカムゲインよりもキャピタルゲインの方が大きい場合は、配当金二重課税調整制度のメリットよりも元本資金拡大のメリットの方が大きくなるため、配当再投資の方が有利になります。
具体的には、配当受取と配当再投資を比較して再投資が有利になるのは以下の条件になります(ただし、アメリカ資産への投資を前提)。
・インカムゲイン1%、キャピタルゲイン7%の場合、4年以上の運用
・インカムゲイン1%、キャピタルゲイン2%の場合、33年以上の運用
・インカムゲイン3%、キャピタルゲイン7%の場合、9年以上の運用
・インカムゲイン3%、キャピタルゲイン4%の場合、29年以上の運用
このように海外資産への投資の場合はケースバイケースとなりますので、配当金受取、再投資(無配型)のどちらがいいかは都度検討の必要があります。
わんこさんの投資スタイル(運用年数やインカムゲインの比率、など)、投資対象にも応じて是非最良プランを検討してもらえればと思います^^
分配金の税金って受け取りと再投資でかわるんですか?
受け取っても再投資しても税金は変らないってイオン銀行で言われたのですがいかに・・・