2021年06月26日
実は利益ではない!?資本剰余配当金の真実
投資お役立ちコラムコーナーは、お久しぶりの更新ですね
今回は『2021年6月後半株式取引結果報告』の記事で触れた、アトムの資本剰余配当金を基に、資本剰余配当金の仕組みと税制などについて解説していきたいと思います
配当金とは、企業などから投資家へ投資割合(一般的には所有株数)に応じて分配されるお金のことですが、原資の違いにより「利益剰余配当金」と「資本剰余配当金」の2つに大きく分別されます。
利益剰余配当金とは、企業の事業運営によって得た利益を原資として分配される配当金の事であり、皆さんが「配当金」という時は、ほとんどの場合でこの利益剰余配当金を指しています
利益剰余配当金は、投資家が投資したお金を基にして新たに生まれたお金(利益)が分配される形となり、投資家にとっても利益が増える形となりますので、「配当所得」として20.315%の税金が課せられることになります
配当金の99%は、この利益剰余配当金なのですが、ごく稀にもう1種の「資本剰余配当金」が分配されることがあります。
先述の利益剰余配当金に対し、資本剰余配当金とは、投資家から集めた資金(純資産)の余剰分を原資として分配される配当金になります
こちらは、投資家が投資した資金がそのまま戻されているだけなので、投資家にとって利益とはならないことから配当所得としての課税はなされません
ただし、後述するように株主が保有する株式の一部を譲渡したものとみなされ(みなし譲渡と言います)、「譲渡所得」として損益を計算し、税金の徴収や還付が行われることとなります
資本剰余配当金が分配された場合は、「分配された配当金が純資産の何パーセントに相当するか?」がまず確認されます。
そして、それぞれの株主は、そのパーセンテージの分だけ株式を譲渡し、その代償として資本剰余配当金を受け取ったという形にみなされます。
ここで、譲渡したとみなされた株式の評価額の方が資本剰余配当金よりも多ければみなし損失扱いに、逆に少なければみなし利益扱いになるというわけです
ちょっとややこしくて、分かりにくいと思うので、次の項目から具体例を挙げて説明したいと思います
1株1,000円で購入したA株において、資本剰余配当金が1株当たり10円分配されたとします
1株当たりの純資産が500円であった場合、今回の資本剰余配当金を分配することで、純資産の2%を取り崩すことになります。
この時、1株1,000円で購入していた株主も、純資産の減少と同じ比率(今回は2%)だけ取得価額が減少することとなり、取得価額は980円に変更となります。
今回の一連の計算によって、1株当たり▲20円の疑似的な損失が発生したのに対し、配当金で受け取るのは10円分だけのため、税金の計算上では、10-20=▲10円のみなし損失が発生するというわけです
逆に上記のケースにおいて、1株400円で購入していた人のケースではどうでしょうか?
この場合、自己資本2%の減少に伴い、400円から2%分、8円引いた392円に取得価額が修正されます。
それに対し、資本剰余配当金は1株当たり10円分受け取ることになるので、税金の計算上では、10-8=2円のみなし利益が発生するというわけです
これらの事から、PBR(株価を1株当たりの純資産で割った値です。詳しくは『有望株選別に役立つ3つの財務指標』の記事もご覧ください。)が高い状態で購入しているとみなし損失が発生しやすく、低い状態で購入しているとみなし利益が発生しやすいということが出来るでしょう
このように資本剰余配当金が分配された場合は、分配時の税金計算上で損失や利益が発生しますが、将来的に株式売却を行った場合の、実際の損失・利益についてはどうなるのでしょうか
結論から言うと、その場合は、プラスマイナスゼロになります
(利益剰余配当金は、全て利益になりますが、資本剰余配当金の場合は、利益にも損失にもなりません。)
具体的に、みなし損失のケースで出てきた1株1,000円で購入した人のケースで考えてみます。
この人の場合、1株売って1,000円が手元に入ればちょうどプラスマイナスゼロということになります
その中で資本剰余金配当金で既に10円手に入れているわけなので、残り990円分を売却益として得られればちょうど1,000円が手元に入ることとなり、プラスマイナスゼロとなります。
ただし、この時取得価額は1,000円から980円に変更となっていますので、990円で売却すれば10円の利益が計上されこの分が課税されてしまいます。
しかし、先述の通り資本剰余配当金が分配された時点で▲10円がみなし損失扱いで税金控除されていますので、これと相殺すれば税金計算上もちょうどプラスマイナスゼロになるというわけです
このように、資本剰余配当金の分配があった後、売却せずに保有し続ければみなし譲渡の税金計算がそのまま残る形になりますが、その後売却を行えば、みなし譲渡による損益で計算した税金とちょうど相殺する形となり、プラスマイナスゼロになるので、資本剰余配当金は、実質、利益にも損失にもならないと言えるでしょう
今回はちょっと複雑でややこしい、資本剰余配当金のシステムと税金計算の方法について解説しました
資本剰余配当金は、購入時のPBRの関係で税金計算上での損益が発生することになりますが、実損益としてはプラスにもマイナスにもならないものであり、資本剰余配当金そのものは特に気にすることもないものだと思います
ただ、資本剰余配当金を分配しなければならないということは、経営状態が苦しく利益剰余配当金を出すことが出来ない、新たに純資産を投資をしても事業を発展させる余地がない、ということを示していますので、今後の行く末としては、非常にまずい状況だと思います
今回、トップ画にジェンガからピースを引き抜く画像を採用したのも、実はこういう背景があったりします
つまりは、純資産という積み上げられたジェンガの山から、配当金を分配するためにピースを少しずつ抜き取っていくが、どんどんジェンガの山(純資産、ひいてはその会社)が不安定になっていくということですね
資本剰余配当金が分配された場合は、今後の会社の動向にも十分注目していく必要がありそうです
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今回は『2021年6月後半株式取引結果報告』の記事で触れた、アトムの資本剰余配当金を基に、資本剰余配当金の仕組みと税制などについて解説していきたいと思います
配当金は2種類ある!?
配当金とは、企業などから投資家へ投資割合(一般的には所有株数)に応じて分配されるお金のことですが、原資の違いにより「利益剰余配当金」と「資本剰余配当金」の2つに大きく分別されます。
利益剰余配当金とは、企業の事業運営によって得た利益を原資として分配される配当金の事であり、皆さんが「配当金」という時は、ほとんどの場合でこの利益剰余配当金を指しています
利益剰余配当金は、投資家が投資したお金を基にして新たに生まれたお金(利益)が分配される形となり、投資家にとっても利益が増える形となりますので、「配当所得」として20.315%の税金が課せられることになります
配当金の99%は、この利益剰余配当金なのですが、ごく稀にもう1種の「資本剰余配当金」が分配されることがあります。
資本剰余配当金とは?
先述の利益剰余配当金に対し、資本剰余配当金とは、投資家から集めた資金(純資産)の余剰分を原資として分配される配当金になります
こちらは、投資家が投資した資金がそのまま戻されているだけなので、投資家にとって利益とはならないことから配当所得としての課税はなされません
ただし、後述するように株主が保有する株式の一部を譲渡したものとみなされ(みなし譲渡と言います)、「譲渡所得」として損益を計算し、税金の徴収や還付が行われることとなります
資本剰余配当金の税制
資本剰余配当金が分配された場合は、「分配された配当金が純資産の何パーセントに相当するか?」がまず確認されます。
そして、それぞれの株主は、そのパーセンテージの分だけ株式を譲渡し、その代償として資本剰余配当金を受け取ったという形にみなされます。
ここで、譲渡したとみなされた株式の評価額の方が資本剰余配当金よりも多ければみなし損失扱いに、逆に少なければみなし利益扱いになるというわけです
ちょっとややこしくて、分かりにくいと思うので、次の項目から具体例を挙げて説明したいと思います
みなし損失になるケース
1株1,000円で購入したA株において、資本剰余配当金が1株当たり10円分配されたとします
1株当たりの純資産が500円であった場合、今回の資本剰余配当金を分配することで、純資産の2%を取り崩すことになります。
この時、1株1,000円で購入していた株主も、純資産の減少と同じ比率(今回は2%)だけ取得価額が減少することとなり、取得価額は980円に変更となります。
今回の一連の計算によって、1株当たり▲20円の疑似的な損失が発生したのに対し、配当金で受け取るのは10円分だけのため、税金の計算上では、10-20=▲10円のみなし損失が発生するというわけです
みなし利益になるケース
逆に上記のケースにおいて、1株400円で購入していた人のケースではどうでしょうか?
この場合、自己資本2%の減少に伴い、400円から2%分、8円引いた392円に取得価額が修正されます。
それに対し、資本剰余配当金は1株当たり10円分受け取ることになるので、税金の計算上では、10-8=2円のみなし利益が発生するというわけです
これらの事から、PBR(株価を1株当たりの純資産で割った値です。詳しくは『有望株選別に役立つ3つの財務指標』の記事もご覧ください。)が高い状態で購入しているとみなし損失が発生しやすく、低い状態で購入しているとみなし利益が発生しやすいということが出来るでしょう
実際の損益はプラスマイナスゼロ
このように資本剰余配当金が分配された場合は、分配時の税金計算上で損失や利益が発生しますが、将来的に株式売却を行った場合の、実際の損失・利益についてはどうなるのでしょうか
結論から言うと、その場合は、プラスマイナスゼロになります
(利益剰余配当金は、全て利益になりますが、資本剰余配当金の場合は、利益にも損失にもなりません。)
具体的に、みなし損失のケースで出てきた1株1,000円で購入した人のケースで考えてみます。
この人の場合、1株売って1,000円が手元に入ればちょうどプラスマイナスゼロということになります
その中で資本剰余金配当金で既に10円手に入れているわけなので、残り990円分を売却益として得られればちょうど1,000円が手元に入ることとなり、プラスマイナスゼロとなります。
ただし、この時取得価額は1,000円から980円に変更となっていますので、990円で売却すれば10円の利益が計上されこの分が課税されてしまいます。
しかし、先述の通り資本剰余配当金が分配された時点で▲10円がみなし損失扱いで税金控除されていますので、これと相殺すれば税金計算上もちょうどプラスマイナスゼロになるというわけです
このように、資本剰余配当金の分配があった後、売却せずに保有し続ければみなし譲渡の税金計算がそのまま残る形になりますが、その後売却を行えば、みなし譲渡による損益で計算した税金とちょうど相殺する形となり、プラスマイナスゼロになるので、資本剰余配当金は、実質、利益にも損失にもならないと言えるでしょう
まとめ
今回はちょっと複雑でややこしい、資本剰余配当金のシステムと税金計算の方法について解説しました
資本剰余配当金は、購入時のPBRの関係で税金計算上での損益が発生することになりますが、実損益としてはプラスにもマイナスにもならないものであり、資本剰余配当金そのものは特に気にすることもないものだと思います
ただ、資本剰余配当金を分配しなければならないということは、経営状態が苦しく利益剰余配当金を出すことが出来ない、新たに純資産を投資をしても事業を発展させる余地がない、ということを示していますので、今後の行く末としては、非常にまずい状況だと思います
今回、トップ画にジェンガからピースを引き抜く画像を採用したのも、実はこういう背景があったりします
つまりは、純資産という積み上げられたジェンガの山から、配当金を分配するためにピースを少しずつ抜き取っていくが、どんどんジェンガの山(純資産、ひいてはその会社)が不安定になっていくということですね
資本剰余配当金が分配された場合は、今後の会社の動向にも十分注目していく必要がありそうです
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