2021年02月02日
私設取引所の功罪とは?
今回は、日経記事『SBIと三井住友FGが株の私設取引所 22年春にも開設』について取り上げてみようと思います
記事の概要としては、SBIホールディングスと三井住友フィナンシャルグループが共同で、株式などを取引する私設取引所を2022年春にも開設する予定である、というものになります
私設取引所とは、東京証券取引所(略して東証)などの公的な金融商品取引所を介さずに、有価証券売買などが出来る取引所になります
(私設取引所で取引するシステムの事を英語のProprietary Trading Systemの頭文字を取ってPTSとも言います。)
日本における私設取引所は、SBIが49%出資するジャパンネクスト証券と米ファンド系のチャイエックス・ジャパンの2社しか今のところ存在せず、これら私設取引所での取引シェアも全体の8%程度と極めて低かったため、今回の新規私設取引所開設によって市場間競争の活性化も期待されています
私設取引所の設置によるメリットはこれだけでなく、投資家側から見たメリットも主に3つあります
一つ目は、取引時間の制限が大きく緩和されること。
東証などでは、9:00〜11:30、12:30〜15:00の合計5時間しか開いていないため、取引もその間にしかすることができませんが、私設取引所は私的に開設している取引所であるため、東証の営業時間のルールとは関係なく、幅広い時間帯で取引を行うことが可能です
(例えばSBI証券の場合は、8:20〜16:00、16:30〜23:59まで取引を行うことが可能です。)
そして、二つ目は、システム障害の影響を受けにくくなること。
昨年10月に東証のシステム障害が発生し、大混乱を招きましたが、私設取引所が十分に発達していれば、システム障害に陥っても、被害を最小限にとどめることが出来ると考えられます
最後に三つ目は、東証などでの取引よりも有利な価格で注文を約定させることが出来る可能性があること。
私設取引所での取引においては、1株に対し注文できる最小の値幅(これを呼値と言います)が東証などと比べて小さいことが多く(例えば東証で1円刻みの注文幅の場合、私設取引所では0.1円単位で注文できる、など)、東証に発注していたらより不利な条件でなければ約定できなかったものが、私設取引所においては、東証の呼値の間の価格で、より有利に約定させることが出来たりします
このように、市場の論理だけでなく、投資家側にとってもメリットがある私設取引所ですが、注意すべき点もあります
それは、私設取引所であるがゆえに「設置者独自のルールにより、売買の停止又は制限が行われる場合がある」ということです
先日もアメリカの人気投資アプリ「ロビンフット」において、個人投資家向けに取引制限をかけて物議を醸していましたが、取引所の設置者が、独自の判断で取引を制限するというのは非常にアンフェアであると思います
また、SBI証券は、過去に私設取引システムを悪用して、個人投資家に意図的に損失を与えていた疑惑もあるので、益々信用できないというところも正直なところです
(詳しくは、ごくうさんの記事『【注文を覗き見】SBI証券のSOR問題の仕組み解説!魔の0.3秒でヘッジファンドが儲けている!』をご覧ください。)
このように私設取引所には、一定のメリットもあると思いますが、それを上回るほどの不信感があるというのが今の私の正直な感想です
日本において、今後、私設取引所の開設が拡大していく流れが進むのであれば、こうした不透明な体制についても改善されていくことを願ってやみません
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