2016年05月03日
タックスヘイブン(租税回避)
非居住者の租税負担を減らし世界中の企業や資産家から多額の資金を吸い寄せるタックスヘイブンは最近話題のパナマだけではない。ケイマン諸島、ジャージーなどの英国連邦系、スイス、ルクセンブルグなどの欧州大陸系、ガボンなど新興・発展途上国系のタックスヘイブンが世界中に散在しており、特徴もさまざまだ。
また、英国シティ、シンガポール、香港などの国際金融センターにも非居住者に有利な税制があり、タックスヘイブンと似た要素を備えている。ししゅようなで異なるこうした税制の特徴を活用して、複数の海外法人を組み合わせた節税ス発されている。
世界中に散らばるそんなタックスヘイブンについて、主要な国を、ここでは紹介しよう。
■英国:世界最大の「タックスヘイブン」連邦
英国には居住外国人(non domiciles)が英国外の投資活動で得た利息、配当金、売買益には課税しないという優遇措置がある。そのため多くの外国人富裕層を引きつけているが、タックスヘイブンの一種と言えるだろう。
旧植民地にも多くのタックスヘイブンがみられる。海上領土のケイマン諸島、ヴァージン諸島などはかねてから租税回避地としても知られている。バミューダ諸島、ジブラルタル、モントセラト、タークス・カイコス諸島、王室属領のジャージー、ガーンジー、マン島などもそうだ。英国連邦加盟国のグレナダ、ナウル、セントルシアなども該当する。
中でもケイマン諸島の取引規模が大きい。ケイマン諸島では所得、利息、配当金、売買益などは非課税のため、多くの企業や富裕層が投資・節税目的のペーパーカンパニーを設立している。日銀が公表するBIS国際資金取引統計によれば、2015年12月末のケイマン諸島に対する日本の債権残高は、オフショア全体(12のタックスヘイブンや国際金融センター)の61.1%に相当する5220億ドルだ。円ベースでみると60兆円近くにも上る。
■スイス:強固な守秘義務制度を改正
永年にわたりスイスの銀行は顧客情報に関する強固な守秘義務を盾に国内外の税務、金融、警察当局などの照会を拒否してきた。が、そうした状況にも変化がみられることには注意が必要だろう。
2014年に米国上院常設調査委員会は、クレディ・スイスが長年にわたり、米国民によるオフショア口座を用いた100億ドルの脱税幇助を行ってきたことを示す報告書を公表した。さらに、2015年にはHSBCがスイス国内銀行の秘密口座を通じ武器密輸業者、脱税者、独裁者、著名人の資産隠匿をサポートしたとの報道があった。
4大監査法人の一角を占めるデロイトによれば国別の非居住者預金残高はスイスがトップで約2兆ドルに上るが、今後は守秘義務規制の変化により資金流出が進むかもしれない。
スイスでは、スターバックスがローザンヌの子会社を活用した節税スキーム(スイスではコーヒー豆などの国際商品取引により得た利益に対し5%の税率が適用されることを利用)を運営してきたが、厳しい目が向けられており、注視する必要がありそうだ。
■ルクセンブルク:租税軽減の秘密協定が問題化
パナマ文書の公開にも関与した国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、2014年にルクセンブルグがペプシコ、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)、ドイツ銀行などの多国籍企業300社超と租税負担を軽減する秘密協定を締結していたと報じた。
欧州委員会が早くから調査していたアマゾンについては、2015年にルクセンブルクが適用した税制優遇措置は補助金に該当するものであり合法性に疑問があるとの判断が示された。ルクセンブルクは長年にわたり直接投資(長期株式投資)の配当金や多国籍企業の現地法人の損金算入に関する優遇措置を講じてきたが、こうした制度も見直される可能性がある。
■オランダ:フォーチュン500企業の半数が利用
オランダは2010年の1年間で多国籍企業に対し1270億ドルの節税効果をもたらしたとされている。フォーチュン500の48%がオランダで投資や節税目的とみられる「limited company」を設立している。オランダには利息やライセンス使用料に対する源泉徴収税がないため、租税率の低いアイルランドと組み合わせた「Double Irish with a Dutch Sandwich」という節税スキーム用のペーパーカンパニーを設置するケースもみられる。
■タックスヘイブン対策は一段と強化
2013年に経済協力開発機構(OECD)が「BEPS行動計画」を発表した。BEPSとは税源の侵食と利益移転(Base Erosion and Profit Shifting)のことだ。
2015年10月には国際租税ルール改革の最終パッケージを提示した。OECDはBEPSにより世界全体で法人税収の4〜10%に当たる年間1000〜2400億ドルの損失が発生しているとの推計を公表した。こうした状況に鑑み、課税と経済活動及び価値創出の一致を促し、BEPSを引き起こすタックスプランニング(脱税・節税テクニック)の無効化を目指すと発表した。
さらに、2016年4月19日には、国際通貨基金(IMF)、世界銀行(World Bank)、国連、OECDがタックスヘイブン問題に連携して取り組んでいくための枠組みを合同で創設することを発表した。
日本も2014年から国外財産調査制度を開始するなど海外での資産運用に対する監視を強化した。タックスヘイブンを利用した節税余地は着実に狭まっていると言えそうだ。
また、英国シティ、シンガポール、香港などの国際金融センターにも非居住者に有利な税制があり、タックスヘイブンと似た要素を備えている。ししゅようなで異なるこうした税制の特徴を活用して、複数の海外法人を組み合わせた節税ス発されている。
世界中に散らばるそんなタックスヘイブンについて、主要な国を、ここでは紹介しよう。
■英国:世界最大の「タックスヘイブン」連邦
英国には居住外国人(non domiciles)が英国外の投資活動で得た利息、配当金、売買益には課税しないという優遇措置がある。そのため多くの外国人富裕層を引きつけているが、タックスヘイブンの一種と言えるだろう。
旧植民地にも多くのタックスヘイブンがみられる。海上領土のケイマン諸島、ヴァージン諸島などはかねてから租税回避地としても知られている。バミューダ諸島、ジブラルタル、モントセラト、タークス・カイコス諸島、王室属領のジャージー、ガーンジー、マン島などもそうだ。英国連邦加盟国のグレナダ、ナウル、セントルシアなども該当する。
中でもケイマン諸島の取引規模が大きい。ケイマン諸島では所得、利息、配当金、売買益などは非課税のため、多くの企業や富裕層が投資・節税目的のペーパーカンパニーを設立している。日銀が公表するBIS国際資金取引統計によれば、2015年12月末のケイマン諸島に対する日本の債権残高は、オフショア全体(12のタックスヘイブンや国際金融センター)の61.1%に相当する5220億ドルだ。円ベースでみると60兆円近くにも上る。
■スイス:強固な守秘義務制度を改正
永年にわたりスイスの銀行は顧客情報に関する強固な守秘義務を盾に国内外の税務、金融、警察当局などの照会を拒否してきた。が、そうした状況にも変化がみられることには注意が必要だろう。
2014年に米国上院常設調査委員会は、クレディ・スイスが長年にわたり、米国民によるオフショア口座を用いた100億ドルの脱税幇助を行ってきたことを示す報告書を公表した。さらに、2015年にはHSBCがスイス国内銀行の秘密口座を通じ武器密輸業者、脱税者、独裁者、著名人の資産隠匿をサポートしたとの報道があった。
4大監査法人の一角を占めるデロイトによれば国別の非居住者預金残高はスイスがトップで約2兆ドルに上るが、今後は守秘義務規制の変化により資金流出が進むかもしれない。
スイスでは、スターバックスがローザンヌの子会社を活用した節税スキーム(スイスではコーヒー豆などの国際商品取引により得た利益に対し5%の税率が適用されることを利用)を運営してきたが、厳しい目が向けられており、注視する必要がありそうだ。
■ルクセンブルク:租税軽減の秘密協定が問題化
パナマ文書の公開にも関与した国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、2014年にルクセンブルグがペプシコ、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)、ドイツ銀行などの多国籍企業300社超と租税負担を軽減する秘密協定を締結していたと報じた。
欧州委員会が早くから調査していたアマゾンについては、2015年にルクセンブルクが適用した税制優遇措置は補助金に該当するものであり合法性に疑問があるとの判断が示された。ルクセンブルクは長年にわたり直接投資(長期株式投資)の配当金や多国籍企業の現地法人の損金算入に関する優遇措置を講じてきたが、こうした制度も見直される可能性がある。
■オランダ:フォーチュン500企業の半数が利用
オランダは2010年の1年間で多国籍企業に対し1270億ドルの節税効果をもたらしたとされている。フォーチュン500の48%がオランダで投資や節税目的とみられる「limited company」を設立している。オランダには利息やライセンス使用料に対する源泉徴収税がないため、租税率の低いアイルランドと組み合わせた「Double Irish with a Dutch Sandwich」という節税スキーム用のペーパーカンパニーを設置するケースもみられる。
■タックスヘイブン対策は一段と強化
2013年に経済協力開発機構(OECD)が「BEPS行動計画」を発表した。BEPSとは税源の侵食と利益移転(Base Erosion and Profit Shifting)のことだ。
2015年10月には国際租税ルール改革の最終パッケージを提示した。OECDはBEPSにより世界全体で法人税収の4〜10%に当たる年間1000〜2400億ドルの損失が発生しているとの推計を公表した。こうした状況に鑑み、課税と経済活動及び価値創出の一致を促し、BEPSを引き起こすタックスプランニング(脱税・節税テクニック)の無効化を目指すと発表した。
さらに、2016年4月19日には、国際通貨基金(IMF)、世界銀行(World Bank)、国連、OECDがタックスヘイブン問題に連携して取り組んでいくための枠組みを合同で創設することを発表した。
日本も2014年から国外財産調査制度を開始するなど海外での資産運用に対する監視を強化した。タックスヘイブンを利用した節税余地は着実に狭まっていると言えそうだ。
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