アフィリエイト広告を利用しています

2020年05月04日

【禍因子育て企画】「大正妖怪異聞-廓座お仙-」【一夜目】

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年05月04日投稿。




「銀の字、ほれ」
「はい?」
どさっ、
水を張ったたらいでいざ洗濯しようと着物の袖を捲っら、銀の目の前にお妲姐さん、の、持ってきた何かよく分からない塊が、放り投げられた。
「何ですか、こ……、」
そう口を開こうとした瞬間、もぞもぞもぞ、その塊がいきなり動き出したものだから、銀は吃驚して腰が抜けた。
それを見てお妲は面白そうに笑った。
「禍因、とか言うらしいよ。小さな角が可愛いもんじゃないか」
「は、はぁ、」
いまいちお妲の言いたいことが飲み込めない。そして抜けた腰が立ってくれない。情けないものだ。いつものことだけれど。
そうして腰を抜かしたまま銀がその塊を見ていると、それはいきなり起き上がって、じー、と銀を見つめてきた。そう、それはそれは深い、真っ黒な眼で。
銀はそれをまじまじと見返す。
真っ黒な眼に、青い肌に角。瞳はまっすぐ自分を見つめてくれている。心なしか座り方が猫のようだ。ぶかぶかのシャツを着て、じーっ、と、こちらを見てくれている。
「鬼の子ですか? 初めて見ました」
銀がお妲に問うと、お妲は肩を竦めた。
「いんや、アタシの知ってる鬼とも少し違うねぇ。もしかしたら大陸の生き物なのかもしれないよ」
「はぁ、」
「アタシだってそれに関しては何も知らないのさ。お仙にさっき、『この子、銀の字に育てさせてみてちょうだいっ!』って、言われたばかりだからねぇ」
「はぁ、」
銀は肩を竦めた。
これは困った。座長の言葉は絶対である。しかしながら、子育ての経験がないのに加えて、そもそも相手が何だかよく判らない生き物ときた。お手上げに決まっている。
「姐さん、俺には荷が勝ちすぎるよ」
「お仙は、アンタを指名だよ」
「姐さん、でも俺には……、」
無理だ、と、言葉を続けようとすると、なぁああああぁ、と、か弱く鳴く声。
なぁー、なぁー、なぁー、
どうやら目の前の鬼子が鳴いているらしい。いや、鬼ではないそうだけれども。
「可愛い……、」
銀は頬を緩めて、鬼子に手を伸ばした。
撫で撫で。
頭を撫でると目を瞑り、ころころと喉を鳴らしている。ますます猫のようだ。
「誰ぞから預かって暫くお仙が面倒見てたらしいがね、お仙も仕事があるもんだから世話しきれんみたいだよ。こんな可愛いんだ。育ててやっておやりよ」
お妲は言った。
「……、」
「アンタが育てなかったら、この子はどうなるんだろねぇ……、」
お妲の悲しそうな声が耳に響く。
止めてくれよ姐さん、俺が姐さんの悲しそうな声に弱いと知っててそんな風に言うの……。
「っていうか姐さん、お仙さんのその言い方、俺が暇だとでも言いたいように聞こえるんだけど」
「暇だろう?」
「ちょっ、暇なわけがないじゃないですか現に今貴女に邪魔されて洗濯が始まってすらいません!」
すると、きょとんとした顔でお妲は銀を見つめる。
そんなお妲から顔を逸らして、ぽつり、
「ズルいよ姐さん、俺ばっかり意識して、」
お妲に聞こえないほど小さな声で、銀は一人ごちた。
「銀の字?」
「子育てなんて僕には分かりません。無理です」
顔を逸らしたまま、銀は言った。
するとまた、なぁー、なぁー、なぁー、と、悲しげな子猫のような声を出す。
銀はまた、鬼子を見た。
なぁー、なぁー、なぁー、
そうか、コイツも育てる人がいなければ捨てられてしまうのか……。
「姐さん、俺に、育てられるかな……?」
銀は鬼子の顔を撫でてやりながら、お妲に尋ねる。
すると、次はお妲の手が銀に伸びてきて、
「分からないことがありゃアタシも手伝うさ。ね、銀の字、一緒に育ててみようさね」
と、優しく銀の頬を撫ぜた。
だからもう、そんなことされたら受け入れるしかないじゃないか。
「姐さん、ズルいよ……、」
そしてこくりと頷いた。
「姐さん、俺、やってみるよ」
すると、見るからにぱぁあああぁあ、と明るくなった顔で、お妲はぎゅうぅ、と、鬼子越しに銀を抱き締めた。
頑張ろうねぇ、銀の字、二人で子育てだよ!
そう言って一人はしゃぐお妲に抱き締められて、顔が真っ赤になってしまったのを、抱き締められてるが故に見られずに済み、銀にとってはそれだけが救いだった。
そうして暫く抱き締められていた後、ふっと温もりが離れていった。
少し心残りを感じて、銀は鬼子を抱き寄せた。
「よろしくなー、え、えーと、」
よろしくと言おうとして、名前が出てこない。
「えっと、姐さん、この子、名前……、」
「あ、あぁ名前。お仙もまだつけてないみたいだよ。禍因ってのは種族の名前だろうし、どうだい、アンタつけてやったら」
座長……、面倒なことは全部俺任せですか……。
がくっ、銀は自分の肩が思いきり落ちたのが、自分でも嫌なほど分かった。
名前、名前なんて、どうやってつければいいか分からない。
銀はまた、まじまじと鬼子を見つめる。青い肌に角。どう見ても噂に聞く青鬼なのだが、お妲は違うという。
「名前ってどうつけるもんなんだろ」
銀がぽつりと漏らすと、お妲はこともなげに、笑って言った。
「銀の字、お前は銀色狐だから銀、だろう? お仙は仙人石の前にいた二又猫だから仙次郎だ。そんな簡単なのでいいのさ」
「……、」
お仙さん、そうか、本当の名前は仙次郎なのか……、って、そうじゃなくて……。
「つまるところね、銀の字が呼びやすい名前でいいのさ。それが一番、愛着が湧くだろう?」
お妲は微笑む。
その眩しさから目を逸らすように、銀はまた鬼子を見つめて。
「呼びやすい……、じゃあ……、紀伊、かな。お紀伊、とか、可愛い、気が、する……」
まぁ、鬼だから「きい」なんだけ……、
「銀の字、アンタ鬼子を音読みしてそのまんまつけただろ」
「ふぇええぇっ、そんなっ、ち、違っ!」
何でわかったんすか姐さん!
銀はお妲を見つめる。
そしたらお妲は肩を竦めて、それ以上名前に関しては何も言わずに言った。
「アンタ、この子をお紀伊と呼ぶみたいだけどね、まだこの子、性別がないそうだよ」
「蝸牛かよ」
「見た目も何もかも、育てたアンタ次第ってわけだ。頑張りなぁね」
「姐さんんんん、ますます荷が勝ちすぎるよぅ」
銀が涙ぐみながら返すのも知らぬ存ぜぬな風を吹かし、お妲はくるり、踵を返した。
「そうさね、まずは洗濯でも教えてやんな」
「ちょっ、姐さ……、」
銀の声も聞かぬふりして、お妲はひらひら手を降ると、さっさか歩いて宿舎の中に消えてしまった。
それを悲しげに、いや、むしろ困惑した表情で見つめた後、銀ははぁああああぁああぁ、と盛大に溜め息を吐いた。そしていつの間にか横から自分に掻きついてる鬼子の頭をぽんぽん叩いてやって、
「よろしくな、お紀伊、」
と優しく囁いてから、すくっと立ち上がった。
「よっしゃ、やるぞ!」
こうして、銀の子育て録が、幕を開けたのであった。




がたりっ、
引き戸を抉じ開けると、お仙がいつものように紙とにらめっこしながら煙管を燻らせていた。
そんなお仙に跳ねるようにお妲が近付いていく。
「お仙、銀の字、育てるって、さぁ」
そう言って後ろからお仙を抱き締めた。
すると、お仙はにやりと口の端を歪めた。
「言ったろう、お妲。男はねぇ、悲しげになぁなぁ鳴くのに弱いんだ。情に厚い銀の字のことだ絶対引き受ける、って、言ったろう」
「さすが、男におもねるのは天下一だねぇ、お仙」
「一番に鳴き方を教えて正解だったろう? あぁあ、これから銀の字がアレを育てるのに四苦八苦するのを見るのが楽しみだねぇ、」
「楽しみだねぇ、お仙」
そう言っておなご二人、黒い笑いを浮かべていることを、洗濯を教えるのに既に四苦八苦している銀が知ることはないのであった。


続く






「君の灰を飲み干してしまいたい」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年05月03日投稿。




全て全て焼き尽くした後で君の灰を涙と交ぜて飲み干してしまいたい






タグ:2013

【禍因子育て企画】「大正妖怪異聞-廓座お仙-」【キャラ紹介】

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年05月03日投稿。




おはようございます、さまにゃんこです。
やらかしました。
登場キャラに関する記述は追々作中で、と思っていたんですが、一話目をほぼ半分書き終わった今、キャラの見た目に関する記述をどうしても突っ込みきれないことに気付いて戦慄しております。
自分の計画性のなさに吃驚です。いや本当に吃驚です。
ということで、一話目公開前に先に主要登場キャラの見た目だけ、フライングしておくことにしました。内面とかは、話と共に読んでいってもらえると嬉しいです。












ぎんぎつね。
銀色の髪を肩ほどで切った男の子。背こそそれなりに伸びてきたが、まだまだあどけなさが残る。瞳ははしばみ色で、肌は白っぽい。
人型だと165センチぐらい、獣型だと100センチちょっとぐらいの銀狐。


お妲
九尾の狐。
艶やかな黒髪は腰ほどもあり、仕事をするときはいつも結い上げているが、普段はだらりとそのままにしている。
身長は175ほどと、女にしては高め。瞳は赤。胸は大きく、腰はくびれ、妖艶な姿を維持している。
狐になっても175ほどの巨躯のため、人々には恐れられている。尻尾はふさふさ。全身の毛を入念に手入れしており艶やかである。


仙次郎(お仙)
猫又。
身長は170と、お妲よりも低め。髪はいつも結い上げており、綺麗な黒髪。かんざしにはだいたい鈴がついている。瞳も黒。黒猫。
獣型は小さな猫で、尻尾が二つある以外はその辺にいそうな黒猫である。
お仙と呼ばれおなごの着物を着てはいるが、男である。胸はない。











とりあえず、出てきそうな三人だけ書いておきますね。
むしろ他のキャラ登場時はちゃんと文章中に見た目の描写を入れれるようになりたいです(苦笑)
本編開始はもう少しで書き上がる(予定です)ので、暫しお待ちを。

【禍因子育て企画】「蜜牢」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年05月02日投稿。




ここは暗い。
僅かな光が射し込む朝、僕は鉄格子から手を伸ばす。けれど空には届かない。
陽が落ちる。
向かいの牢の鉄格子の窓。眩しい眩しい光がいつも消えていく。
向かいの牢にはいつしか生き物が消えていた。
異臭を訴えたが除けるのも面倒らしい。暫く気にしてなかったら、よくよくみれば白くなっていた。
あぁ、これが僕の成れの果てか。
ぼんやり思った。
主人に飽きられた時点で判っちゃいたことだが、目の当たりにするとやっぱり堪えた。
あの人は特異な生き物が好きだった。真っ赤な髪に真っ赤な瞳が珍しいと、市場で僕が売られている僕をすぐに引き取り愛でていた。
あの人の望むことは何なりやったつもりだけど、暫くして飽きたのか、僕はここにぶちこまれて、来る日も来る日も、あの人と空を乞うだけになってしまった。
望むべくは、また、あの人の傍に行きたいのだけど。
小さな灯り取りの窓、冷たい台に毛布を敷いただけの寝床。服はぼろ。日に三食の飯だけが時を教えてくれる。
そんな生活、馬鹿馬鹿しいったらないね。
そう思うのに、閉じ込められ片羽根をもがれてしまっては、もう、与えられる生にすがるしかできなかった。
これは、そんな世界の物語。











こんばんわ、さまにゃんこです。
えっと先ほどと同じく子育て企画の世界観を、と思い書いたのですが…、
牢屋に世界観も何もないだろう!(爆)
となりまして、こんな雑になりましたすみません。
脳内ファンタジーですので、牢屋ってどんなのかなぁ、って考えたら同性恋愛か異形種倉庫しか浮かびませんでした(大爆)
異形種の方がまだ万人受けするかと異形種にしておきましたすみませんでも本当牢屋で男の子囲うのって名のある領主ぐらいなんで本当に同性恋愛にしようか考えたんですがまだ許されそうな異形種恋愛にしておきました(爆死)
こっちは割と何も考えてないです。
廓座お仙は一回考え出すとこう育ててこうするからきっとこうなるはずだ、的な妄想が膨らんだんですが、こっちは割と本気で、育ててみたら育つだろみたいな行き当たりばったりになりそうです。
どちらが先にどう進んでいくのか本当に怪しいんですが、禍因子育て企画、よろしくお願いします。
いや本当見捨てず見てやってもらえると嬉しいですよろしくお願いします…、(苦笑)

【禍因子育て企画】「大正妖怪異聞-廓座お仙-」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年05月02日投稿。




確かそらぁ、江戸も終わりに近付いた頃だったかの、上方の廓にそれはそれは妖艶な遊び女がおったそうでな、ほんによう流行っておったらしい。元々は下町のひっそりとした廓が、その遊び女のお蔭で一時栄華を極めたという話だで、たいそうなおなごじゃったんじゃろう。
しかしそれも長くは続かんで、それでも二十年、三十年、店の歴史では一瞬のことでも、人の歴史では長いこと、そのおなごはずっと、ずっとずっと、そこでは一番最高の遊び女じゃった。
それがある日、急に姿を消してしもうたらしいてね。
ほんにある日、急に。
部屋に仕えの下女が上がったら、真っ赤な振袖一枚、それだけ残して消えておったらしい。そう、もう、紅差しからなんから、全部全部消えてしもうて、真っ赤な振袖たった一枚床に広げて。
たいそう女将は怒りを露にしたらしいが。それもそうさね、その遊び女おってこそ栄えた廓じゃき。それで旦那も女将もそらもう必死に探しまわって、それでも見つからせなんだ。
人々は噂した。
どこぞの男と駆け落ちしたんじゃなかろうか、て。
噂もほうぼういろいろ出たが、やっぱりこれが一番有力でな、それだけ以外はどんな噂かも残っておらん。
その後どこに行ったともしれん。
それから幾年過ぎ、幕府ものうなってしもて、そこの廓ものうなって。
なぁ、
あの遊び女は、どこにいってしもたんじゃろなぁ、











大正妖怪異聞-廓座お仙-

「君の言葉しか見つからないのに」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年04月30日投稿。




海馬の中、君の言葉しか見つからないのに
情報の渦に揉まれて
君の言葉だけ
出てこないなんて











歌詞の一部をネット検索したら曲名や情報を教えてくれたりするじゃないですか。
あれで超有名な歌手、もちろん僕が好きな歌手ですが、検索掛けてそれが全くヒットしなくて、そのもやっと感。
分かります?
タグ:2013

「さよならなんて言わない」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年04月30日投稿。




君が灰になった後で
僕は
きっと君に会いに行くよ
だからずっと、
ずっとずっとずっと、
さよならなんて
言わない






タグ:2013

創作キャラ設定、三個目!

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年04月28日投稿。




和風のでも、と言いつつごろっと忘れてました(爆)
というわけで忘れた頃に創作キャラ設定メモです。
今回は和風のやつをごちゃごちゃたくさん、たくさん。
日本文学やってたぐらいには和風というかそういうの大好きなんでね、和風のはぼんやりとした設定で妄想してたのが割と多いんですわ。だからキャラ名とか割と曖昧だったり、似通ったものが多かったり、でも気が付いたら新しくいろいろ妄想して、妄想だけして終わる的な。
ダメじゃん(爆)
というわけで、いつ妄想したのかも忘れたぐらいたくさんある和風の設定、思いついた順に思い付くだけ列挙してみますね。
行き当たりばったりすみません(苦笑)











キャラ設定
タグ:2013
posted by samanyanko at 13:53| Comment(0) | TrackBack(0) | メモ帳

「すれ違い」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年04月28日投稿。




君と僕
すれ違い
寂しい寂しい寂しい寂しい
そんなこと
僕ばっかりで
君と僕
すれ違い
さようなら、さようなら
もしかして
すれ違ってすらいなかったのかな
寂しい寂しい寂しい寂しい
そんなのすごく
寂しいね






タグ:2013

「愛情表現」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2013年04月27日投稿。




君が例えぼろぼろに壊れて僕の前に現れたって
僕は変わらず
君を愛してあげるからね
そして君を
もっともっともっと、
僕の手で壊してあげるから
そうすれば
誰かの傷跡なんて
嫌でも判らなくなるでしょう?











おはようございます、今から寝る気満々のさまにゃんこです(爆)
ちょっとちょっと、もしかしてもしかしなくても愛チャがくそやろうに盗まれてから一年ですよ一年。本当に、誰だか知らないけど滅びればいいのに盗んだくそやろう!
未だに恋しくてふと思い出しては撃沈してます。
泣きそう。
さっきの二つは、二年前に唐突に琵琶湖に夕陽を撮りに行った時の写メを整理していて、そうか今もうすぐ傍に愛チャがいないんだ、となって衝動的にうたったものです。
本当に、泣きそう…。
愛チャがいなくなって、ずっとずっと、実はサイクリングしてません。する気が起きなくてですね。
はぁああああぁ。
本当に、今でも、いつまでも、戻って来てくれるのを待っています。ずっとずっと、ずっと。
また乗れるのが一番の幸せなんですけど、戻って来てくれるだけで構わないから戻って来てほしいです…。
壊れていても構わないので…。
本当にもう…。
切ない…。
というわけで、おやすみなさい。
タグ:2013
プロフィール
最新記事
最新コメント
写真ギャラリー
タグクラウド
<< 2024年10月 >>
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
検索
カテゴリーアーカイブ