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2021年03月04日

「痴人の愛」本文 角川文庫刊vol,70

「痴人の愛」本文 角川文庫刊vol,70



日本座敷を二間打ち抜いて、靴履きのまゝ入れる桟敷にして、多分滑りをよくするか何かでしょう、例の浜田と言う男があちらこちらへチョコチョコ駆けて歩いては、細い粉を床の上へまいています。



まだ日の長い暑い時分の事だったので、すっかり障子を明け放している西側の窓から、夕日がギラギラと差し込んでいる。

そのほの赤い光を背に浴びせながら、白いジョオゼットの上着を着て、紺のセージのスカートを穿(は)いて、部屋と部屋との間仕切りの所に立っているのが、言うまでもなくシュレムスカヤ夫人でした。



二人の子供が在るというのから察すれば、実際の歳は三十五六にもなるのでしょうか?

見た所では漸く三十前後ぐらいで、なるほど貴族の生まれらしい威厳を含んだ、きりりと引き締まった顔立ちの婦人、その威厳は、多少の凄みを覚えさせるほど、蒼白を帯びた、澄んだ血色のせいであろうと思われましたが、しかし凛乎(りんこ)たる表情や、瀟洒な服装や、胸だの指だのに輝いている宝石を見ると、これが生活に困っている人とはどうしても受け取れませんでした。



夫人は片手に鞭を持って、こころもち気難そうに眉根(まゆね)を寄せながら、練習している人々の足元を睨んで、「ワン、トゥウ、トゥリー」露西亜人の英語ですから、”three"を”tree"と発音するのです。



と静かな、しかし命令的な態度を以て繰り返しています。

それに従って、練習生が列を作って、覚束ないステップを踏みつつ、往ったり来たりしているところは、女の士官が兵隊を訓練している様で、いつか浅草の金竜館(きんりゅうかん)で見た事のある「女軍出征」を想いだしました。





引用書籍

谷崎潤一郎「痴人の愛」

角川文庫刊




次回に続く。


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