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2019年12月15日

プリンスグロリアデラックスS40D

※2020年9月3日 追記(車両番号の記述をほんの少しだけ加筆しました)

どうもです。

気が付くと今年もあと僅か・・・

いい年して大したこともせずまた無駄に一年が過ぎ去ろうとしています。

もう中年ですので瞬きしているうちに一年が経ってしまうので(冗談ではなくて)
このままズルズルと生きていたらすぐにお迎えの来る年齢になってしまいそうです。


・・・さて、今回はS4系グロリア最初のモデルとなるデラックスについて書いてみました。

じつはデラックスのカタログはいまだ持ってなく、記事にするのをどうしようかと思っていたんですが、グロリアの中では思えばまだデラックスのみ取り上げてなかったなと。

そんな訳で今回カタログ写真はありませんが、なるべく詳しく書いていこうと思います。

プリンスグロリアデラックス S40Dとは


グロリアデラックス(S40D-1)は1962年9月に発売された第2世代のグロリアシリーズの最初のモデルです。

初代は1959年発売のBLSIP-1ですが、その後数度のマイナーチェンジをしながら1962年までの約3年間生産されていました。
BLSIP3-1.jpg
こちらはBLSIP-3

その辺については以前の記事(プリンスグロリアS41D-1)で少し詳しく書いています。

また、このS40Dはプリンスの村山工場で生産された最初の車種でもあります。

村山工場はプリンスが総力を挙げて建設した当時としては最新設備を有した旗艦工場でした。

ここで40系グロリアは産声を上げたわけです。

その後1964年になると荻窪工場で生産されていたS50系スカイラインの生産もこちらに移って来ます。



このS40DグロリアデラックスはOHV1862cc4気筒のG2エンジンを搭載し、最高速は先代より5キロアップの145キロをマーク。

このG2エンジンは先代からの継続採用ですが、この時点で既に6気筒G7エンジンの開発は進んでおり、当然6気筒エンジン搭載を予定した設計が出来ていました。

構造的には先代から引き継いだトレー型フレームにこれまた同じく引き継いだド・ディオンアクスル方式のリアサスペンションという足回りで上質な乗り心地と運動性を確保。

ボディスタイルは先代とは打って変わり、低く伸びやかなスタイルへと生まれ変わりました。
S40D-1-2.jpg


プリンス車のアイデンティティであったテールフィンはなくなり、代わりにボディ全周に渡りステンレスモールが取り囲み、デザインのアクセントとなってます。

ドアハンドルはこのモールと一体となっており、先代と比べてかなり洗練されたイメージです。

テールランプも大型の横長となり、独特な卵形テールは遠くから見てもすぐグロリアと分かる特徴的な形状なのは御存知の通り。

参考までに先代最終型のBLSIP-3と諸元を比べてみます。


BLSIP-3

エンジン型式 GB-4 水冷直列OHV4気筒1862cc 
最高出力    94PS/4,800rpm
最大トルク   15.6m-kgf/3,600rpm
最高速度    140km/h
全長      4,380mm
全幅      1,675mm
全高      1,535mm
軸距      2,535mm
車両重量    1,360s

S40D-1

エンジン型式 G2 水冷直列OHV4気筒1862cc 
最高出力    94PS/4,800rpm
最大トルク   15.6m-kgf/3,600rpm
最高速度    145km/h
全長      4650mm
全幅      1695mm
全高      1480mm
軸距      2680mm
車両重量    1295kg

比べてみると重量は軽くなっているのにサイズは全高以外全て大きくなっているのが分かります。

エンジンは型式呼称が変わっただけで実質同じエンジンですが補機類には変更があり、例えば発電機が直流式のダイナモから交流式のオルタネーターへ進化したりという違いがあります。

オルタネーターはダイナモに比べて発電効率が高く、アイドリング程度の回転でもしっかり発電してくれるのが大きな特徴です。

ダイナモだと通常の走行中ならばそこまで問題にはなりませんが、渋滞やアイドリング状態で長くいると発電量が下がりバッテリー上がりを招きやすくなるのが欠点でした。

他にラジエターの効率等も上がっているのでオーバーヒートしにくくなっていたりドア周りの不具合対策も進んでいます。

SI系の欠点のひとつにドアの立て付けの悪さがあり、以前からクレームが多かった部分でした。

当然ながらこのあたりはS40になった際に改良され、かなり不具合は減ったようです。

プリンス車の特徴であったリアのド・ディオンも、先代からの問題だったこもり音解消の為に新たにボールスプライン方式を採用して解決。

ワイパーも一般的なものから所謂「ケンカワイパー」に変わり、払拭面積の拡大を図っています。

また、このワイパーは速度調節機能があり、ボリューム式のツマミを回せばONになり、尚且つそのまま回せば無段階でスピードの調節が出来ました。

しかし、これは後期になると廃止されて一般的な2スピードタイプになってしまいます。

先代に比べて各部が改良され、スタイルも洗練されたS40Dグロリアデラックスは発売当初はかなりの話題となり、売れ行きも上々でした。

発売後まもなく行われたモニター募集には全国から25万通もの応募があったというのも人気のほどがうかがわれます。

その後の展開

発売当初はデラックスのみの展開でしたが、デラックス発売から約1年後、スーパー6発売から約4ヶ月経った1963年10月にスタンダード系列のグロリアスペシャル(S40S-1)が発売になりました。

これより少し前にはデラックスもスーパー6と差別化のためグレードダウンを伴うマイナーチェンジを行い、型式もS40D-2となりました。

外観的にはサイドのモールが細くなり、エンジンも同じG2ながらハイオク仕様からレギュラー仕様の91PS/4800rpm、15.0m・kg/3,600rpmになり、内装もシート生地などが変更され一部の装備品がオプションとなるなど、スーパー6の廉価版としての性格が与えられたといえます。

当然車両価格は値下げとなり、1型の新車時価格117万円から5万円値下げの112万円となりました。
(8月2日より実施)

さらに間もなく108万円まで値下がりしています。(63年10月20日発行の自動車ガイドブック記載の価格による)

その後64年には99万円、65年には少し値上がりして99万6千円となっています。(ともに各年度版自動車ガイドブックより)

実はこの頃、発売間もないスーパー6の売れ行きはそれほど悪くなかったんですがデラックスの売り上げは頭打ちで、プリンスとしても量販車種として位置づけしていたデラックスの販売台数の増加策の一環という意味合いもあったようです。

それよりも6気筒のスーパー6は発売当時119万円だったことを考えると価格差がなさ過ぎたのでデラックスの値下げを断行したのではとも考えられます。

このころは各社企業努力と競争激化で車両価格の値下げが頻繁に行われていた時期でしたので、プリンスとしても他社への対抗としての値下げもやむなしなところもあったと思われますが、メーカーの規模からすると量産効果の低いプリンスとしては値下げをすることは正直厳しかったのではないでしょうか?
(デラックスに限らず、この数年間の間にプリンスの車両価格はずいぶんと下がりました。)

それでもスーパー6ほどの台数は出なかったようで、デラックスは1型2型あわせて18,000台ほどの生産数でした。
(スーパー6は1型だけで24,000台以上の生産数)

その後66年初めころには(3月?)他のデラックス系車種(S44P、S41D、W41A)とともに再度のマイナーチェンジを行い型式はS40D-3となりました。

※このマイナーチェンジの時期については以前のグロリア系車種の記事では65年秋〜66年初め頃としていますが、資料を読むと66年に入ってからと言うのが正しいようです。

グロリアシリーズでは唯一の3型となり、価格は再び値下がりして95万円になりました。(66年度版自動車ガイドブックより)

3型の特徴はこの時期同時にマイナーチェンジをしたグロリアシリーズ同様、フロントフェンダーサイド下部に新たに設定された「P」マークのバッジが付き、リアのリーフスプリングが今までの2枚から1枚になったほかモール類が細くなったり内装部品の簡素化などが行われましたが、逆に改良によって信頼性アップを図っている部分もあり、一概に悪い事とは言えません。
S41D2-2.JPG
65年12月(S44P)から66年3月(S40D,S41D,W41A)にかけてのマイナーチェンジで新たに取り付けられた「P」バッジ

ただし、個人的にはコストダウンに見えてしまうところもあり、3型(それ以外のデラックス系は2型)よりは1型のほうが好きです。

ただ、この初期型も細かい変更は行われており、外観で一番わかりやすいのはラジエターグリルのメッシュの細かさでしょう。

1964年途中から目の粗いものに変わりましたので、本当の意味での初期型は外観上だけで言えばこれ以前のモデルになります。(グランドは元々グリル形状が違いますし、S40Dに関してはすでに2型になってからの変更なので参考までに)

他にも細部の変更は行われているんですが、特に当時アナウンスはされていないような細かいものを含めると結構な部位に渡ります。

車両番号としては
S40D-1 S40D-1001〜
S40D-2 S40D-13801〜
S40D-3 S40DS-18850〜
(66年版パーツリストより)

となっており、最終的には2万台以上の生産数は間違いないでしょう。


デラックスの特徴としては、車両番号が1からではなく何故か1001から始まっていることが挙げられますが理由はわかりません。

その後のグロリアシリーズは基本全て車両番号は1から始まります(S45Pは不明です)

また、プリンスのセダン系列だけのことなのですが、ある時期から車両番号の型式の最後に「S」が入るようになります。

これはスカイラインも同様で、セダン系の通常車型(タクシーキャブとオートマ車は除く)は途中から型式の最後に付くようになっているんです。

セダンを表す意味があるという話もあったりしますが正確なことは不明です。
グロリアの場合は2型にチェンジして以降(40Dは3型)付くようになったようです。

これはバン系(ワゴンとエステート)には付かず、何故か営業車型(40TM、40TF)にも付きません。

オートマチックミッション車も同様にSは付きませんが、セダン系でも元々アルファベット記号が最初から2桁ついている車型には付かなかったようです。

例としてはスペースフロー付きのスーパー6であるS41DTや、ボルグワーナー付きのグランドのS44PWなどです。

先に挙げた営業車用のS40TMやS40TFもこの法則に当てはまります。

例外はS41Sなのですが、これは2型にマイナーチェンジをしなかったからだと推測します。

これはスカイライン系でも同じ法則です。


話が少しそれましたが、グロリアシリーズでは一番生産期間が長かったデラックスですが、スーパー6発売後は最後まで終始影の薄い存在でした。

マイナーチェンジするたびにグレードダウンを余儀なくされ、生産数でもあとから発売されたスーパー6のほうが多い為、現在残っているものはあまり多くありません。

傾向的にグレードの高い車のほうが生産数に対しての残存率は高い為、どうしてもデラックスは残りにくかったのでしょう。

特に1型は希少で、2型に比べるとかなり珍しいです。

逆に最終の3型も相当な「レア車」です。

個人的には1型と2型は実際に見たことがありますが、3型については噂レベルでしか聞いたことしかありません。

生産数としては2型より1型のほうが多いのですが、何故か残ってないですね。


※2020年9月3日追記

割と最近の話ですが、ヤフオクに3型のデラックスが出品されていました。
しかし、写真で見ることのできたシリアルプレートの車両番号はS40DS-18024となっており、パーツリストの車両番号とは一致しません。

この記事の後の方で写真を載せている2型のデラックスよりこの3型のほうが若い番号なんです。

パーツリストの記載では3型は18850以降ということになっているので800番以上若い番号なのが謎です。

オークションに出品されていた3型は日産に合併後の車両で、プレートは日産自動車の名前が入ってからの物でしたが、もしかすると車両番号についてはプリンス時代からの続き番号ではないのかもしれません。

憶測ですがプリンス時代と日産合併後はもしかすると番号の付け方が変わっているのかも。
この辺りの事情については勉強不足で検証ができていませんので、こういった事例があったという事として紹介した次第です。

実際に見たことのあるグロリアデラックス

最後に自分で実際に見たグロリアデラックスの写真をいくつかお見せして終わりたいと思います。

まずは中々お目にかかれないS40D-1
S40D-1-1.jpg
S40D-1-1.jpg
写真のサイズが違って見苦しいですね・・・

モールの太さは後のスーパー6と同じですが、リアのガーニッシュがないのでスッキリしています。

実はモールのデザインも違い、デラックスはモールの中心部分が白く塗装されているのがオリジナルです。
(スーパー6は細かく溝が入るコルゲート状)
この車は元々ワンオーナーだったものを譲り受けたとのことで、シングルナンバー付き。

年式は37年、もしくは38年式ですが、聞くのを失念しましたのでどちらとも言えません。

リア側の写真には同じくデラックス2型のお尻が写ってます。

で、お次はその2型の写真です。
S40D-2-2.jpg
S40D-2-1.jpg
これも写真サイズが違いますね・・・

上の写真のデラックスですが、この車は新車当時に東京オリンピックのためにプリンスが供出したうちの1台です。(オリンピック仕様になっているのはその為)

プリンスではスーパー6を合計95台提供したと言っていますが、これはデラックスと合わせての合計台数ではなかったかと。

上記のデラックスは39年式となりますが、グリルは初期型用に交換されているかもしれません。

続いては同じ2型でも40年式の1台。
S40D-2-1-1.jpg
IMG_3322.jpg

現在残っているのが多いスーパー6仕様になっている車です。

と言っても、リアのガーニッシュの取り付けと「6」エンブレムの追加はされていますがサイドのモールはデラックスの細い物のままなので一瞬?となります。

この車は新車時から神奈川県内で生き延びてきた貴重な個体です。

この車は自動車販売店で納車整備中だったところにたまたま通りかかって運良く撮影できたものです。

40年式ということでグリルも当然粗いものがついています。

車両番号は2型の後期のほうでした。


最後はおまけで66年度版自動車ガイドブックに記載のデラックス3型の写真で終わりたいと思います。
S40D-3-1.jpg
以前の記事からの抜粋です。

ガイドブック発行が10月なので、すでに日産と合併後ですが、写真はたぶんそれ以前のものでしょう。

3型の一番の特徴であるフロントフェンダーの「P」バッジがはっきりと写っています。

合併後も販売が続いた車種は、間もなくボディに小さな「nissan」のエンブレムが追加されました。

エンジンルームのプレートも「日産自動車」となり、モデルチェンジしていないのにメーカー名が変わっているので悲哀を感じる部分です。


以上駆け足で解説しましたが、グロリアシリーズの中でもあまり目立たないのがデラックスです。

実際はそこまで残っていないということもないのでしょうが、表に出てくることの少ないグレードです。


ちょっとかわいそうな気もしますが、案外市街地ではキビキビと走りスーパー6よりも扱いやすいらしいので、もっと見直されても良いと思うんですけどね。


今回は以上です。

ではまた
この記事へのコメント
このS40D型プリンスグロリア・デラックスはG2型4気筒1862ccユニットの排気音が兄弟車グロリアスーパー6(1988cc 6気筒)とは天と地ほども違う、良く言えば「牧歌的な」悪く言えば「洗練されない」音を発し、1960年代ならではの味が個性的に思えてなりません。
同車、何度も所沢のクラシックカーフェスティバルでお目にかかっておりますが、♪ブルルル ルディーン♪というようながさつさと紙一重のところで角が取れた特有の音質で、アナログさ横溢というものでその点同じ1900cc/4気筒でもRS40型トヨペットクラウンデラックス(3R型ユニット)の♪ロロロロガタガタ ボコボコーン♪という「なんともやる気のなさそうな」音質(※注:個体差や調整の関係で、もっと澄み切った音を出す個体も同車種の中にはあり得る!あくまで小生が遭遇した個体のみの印象ですのでクラウンファンの方々、気を悪くなさらないように―為念)よりは骨っぽく、プリミティブなスポーティさ(そう、初期のダットラや410までのブルーバードと相通じる)がプリンスならではのフレーバーかと思いますが如何でしょうか。
Posted by 真鍋清 at 2020年01月15日 20:39
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