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2019年03月10日

3月10日は何に陽(ひ)が当たったか?

 1661年3月10日は、フランス・ブルボン朝(1589-1792,1814-30)の国王ルイ14世(位1643-1715)が親政を始めた日です。

 ルイ14世は摂政ジュール・マザラン(1602-61)没後に親政を始めました。王権神授説に基づいて、"朕は国家なり"を宣言、「太陽王」として絶対王政を推進しました。官僚制度の整備と常備軍の編成、コルベール重商主義(1619-83。財政総監をつとめ、1664年に東インド会社を再建)の促進といった絶対主義改革を次々と断行しました。

 フランス文化の絶頂期も、ルイ14世時代に現出されています。その代表がヴェルサイユ宮殿です。親政を始めたルイ14世は、パリから22km南西にあるヴェルサイユへ赴き、かつて父ルイ13世(位1610-43)の狩猟用ロッジとして使われた離宮を大々的に造営することを決めました。もともとは、コルベール就任以前に財務大臣を務めていたニコラ・フーケ(1615-1680)が、王室建築家ル・ヴォー(1612-1670)、造園家ル・ノートル(1613-1700)、王室画家ル・ブラン(1619-1690)らを使って豪華絢爛な自身の城館、ヴォー・ル・ヴィコント城を造営しましたが、ルイ14世のフーケに対する不興と憤慨によって、フーケは失脚させられたという史実があり、結局ルイ14世は、ル・ヴォー、ル・ノートル、ル・ブランの3人を使って、最高の王宮造営を計画したといわれています。1661年、ル・ヴォーによって増築を開始し、ル・ヴォー没後はマンサール(1646-1708)が担当しました。その後庭園造営に取りかかり、ル・ノートルを造園にあたらせました。そして、1678年には、マンサールによる"鏡の間"が増築が開始され、着工時から装飾分野にあたっていたル・ブランが天井画を手がけました。その後、礼拝堂やオペラ劇場などが増築されました。

 1682年、バロック式のヴェルサイユ宮殿が遂に完成しました。ルイ14世は、フロンドの乱(1648-53。貴族が起こした内乱)という苦い経験から、パリに対して強い嫌悪感がありました。ルイ14世は、宮殿落成後、ここを王宮とし、政府機関(首都)も1789年のヴェルサイユ行進十月事件が勃発するまでは、パリではなくヴェルサイユに置かれました。

 ヴェルサイユ宮殿は、華美なフランス文化、フランス絶対主義、フランス上流社会のシンボルとなりました。これにより、バロック建築が全世界に普及し、ロシアではエカチェリーナ2世(位1762-96)の冬宮、日本では赤坂離宮などが次々と模倣されました。
 文化を篤く奨励するルイ14世はまた、サロンを設けて文学や美術、学問など、上流文化人や貴婦人の社交場として流行しました。これにより、文化洗練が行われ、多くの芸術家、文筆家が誕生しました。また、政治・経済や文化・社会を論じるための場であり、ロンドンのコーヒーハウスと並ぶフランス軽飲食店、カフェも流行しました。

 ルイ14世は、フランスにおける文化の頂点を形成した太陽王として、これに続く政治権力の頂点、つまりヨーロッパの覇権を目指して、1667年から1713年の間に、いわゆる4大侵略戦争(南ネーデルラント継承戦争オランダ侵略戦争ファルツ継承戦争スペイン継承戦争)を行いましたが、これらはすべて失敗しました。またルイはカトリック絶対の立場より、アンリ4世(ブルボン朝初代国王。位1589-1610)が発しました、宗教懐柔策であったナントの勅令を取り消しました(1685。フォンテーヌブローの勅令)。これは大量のユグノー亡命をもたらして経済不振に陥り、産業も低迷しました。宮廷浪費、膨大な軍事費、人口激減という状態の中で、ブルボン朝は重税しか策が及ばず、"大御世(おおみよ)"と呼ばれる偉大な時代を築いたルイ14世の治世を、国民は振りかえようとはしませんでした。ルイ14世の治世にもたらされた財政の逼迫は、彼の曾孫ルイ15世(位1715-74)、その孫ルイ16世(位1774-92)の治世になっても打開されず、ルイ14世が没した直後(1715)に起こった国民の歓呼の雄叫びは、のちの大革命への導火線となっていくのです。

引用文献『世界史の目 第97話』より

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