2008年09月17日
街の灯(超・長編です)
不況のニュースを見たことから、何故だか無性にチャップリンさんの映画が観たくなりました。僕はチャップリンさんが大好きで、彼のビデオだけで24本を所有しています。
中でも「ライムライト」と「街の灯」が大のお気に入り。
きっかけがアメリカ発の不況ってこともあって、今回は「街の灯」を観ました。
※最初に言っておきます。いつもダラダラと長話をしてしまう僕のブログですが、この映画には特に思い入れがある分だけ超・長くなると思います。これに懲りず、頑張ってお付き合いいただけたら嬉しいです(^^♪
アメリカ発の不況で思い出すのが、1929年10月24日に起こったブラック・サースデー(暗黒の木曜日)、続く29日にウォール街の株価大暴落(ブラック・チューズデイ)によって起こった世界大恐慌。この映画が制作されたのは、ちょうどこの不況と同時期のことでした。
チャップリンさんはこの「街の灯」に2年と10ヶ月の歳月をかけました。撮影に入る直前、彼のパントマイムに大きな影響を与えたお母様を亡くされたこともあって、とても思い入れの大きな作品だったのかもしれませんね。
1927年12月より製作が開始され、翌年の12月から撮影開始されたものの、役者解雇によるすべての登場シーンの撮り直しや花売り娘役の解雇と再起用。この映画の一番の見所?の浮浪者と花売り娘との出会いのシーンでは、たった3分にも満たないこのシーンに膨大な時間とフィルムが費やされた結果、NG回数は世界映画史上最高とも云われます。
結局撮影を完了したのは1930年の10月で、公開されたのが1931年の2月のこと。
これだけの映画になると逸話も多く、試写会の会場では「あかんべー」のアインシュタインさんと並んで映画を観ていた話や、観客に全くうけなかった話など、有名な話がたくさん残されています。
当時のお金で200万ドルもかけた作品ですが、アメリカ公開だけで純利40万ドルは凄いと思いませんか?その後、ヨーロッパや日本でも公開されているわけですから、この映画の人気は相当なものだったことがわかりますね。
僕が子供の頃によく観ていた彼の映画は、暴力的などたばた喜劇という印象でした。先日、北野武監督が言ってらした「笑いを表現する人ほど暴力映画が得意」という話には、チャップリンさんの映画とだぶる感じがしたものです。
また映画の中に、賭けボクシングをやるシーンがあります。このシーンでは、唯一昔の彼を感じることが出来ます。しかし、ただの暴力的などたばた喜劇ではなく、リング上にいるチャップリンさんと相手選手とレフリーの3人の「間」の見事さに感動します。ほとんどカット割がされずに撮影されていることを考えると、余計にこのシーンの凄みを感じます。
余談ですが、僕は作り込まれた笑いが大好きです。落語やドリフ・てんぷくトリオさん達の笑いが大好きでした。ベタベタのわざとらしさがある笑いの中には「しっかりと計算された間」があります。わかっているのに笑ってしまう。そんな安心して楽しく笑える笑いが好きです。ですから、その場の勢いや楽屋落ちの笑いは・・・決して嫌いじゃないけど苦手です。
最初のシーンにある「平和と繁栄の記念碑」を公開する場面では、除幕された像の中で寝ている彼の姿があって笑えます。仕事がなく浮浪者で溢れる恐慌の中で「平和と繁栄」という虚像への痛烈な批判が込められているシーン。思いっきり馬鹿にしているチャップリンさんを見るにつけ、自然と笑いが込み上げます。
また、トーキー時代が始まって尚サイレント映画にこだわった彼の皮肉が見られるのもこのシーンを観る楽しみの一つです。記念の演説をする人間の声がサキソフォンの音だってことも喝采ものです(^^♪
彼の映画を観ながら良く考えることがあります。それは、
彼の映画をリメークしたとしたら・・・どんな映画になるんだろ?ってことです。映像の綺麗さや音響の良さは確かに良くなるだろう・・・でも、いくら映画のストーリーだけを似せたとしても、カット割が多く説明セリフで溢れた映画を観て、彼以上の映画だと感動できることがあるだろうか??
役者を誰にするか?設定をどうするか?とか、一応、無い頭で考えてみるのですが、いつも結論は一緒です。
いくら映像や音が綺麗でも、いくらお金を掛けても、いくら名優を揃えても、そして、いくら言葉を並べてみてもチャールズ・チャップリンさんの映画を超えることは無理だと思います。
だからこそ僕は、チャップリンさんの映画をまた観たくなってしまうんです。
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