2008年09月13日
おくりびと(感想)
今年話題の映画「おくりびと」を観てきました。恥ずかしい話ですが、何度か声を出さずに涙と鼻水を流してしまいました(隣にいたおばさんは終始泣いてたけど(T_T);)。
嫁と一緒に見に行ったのですが、映画が終って感想を聴いてみたら
「筋書きが読めたから、期待したほど感動しなかった・・・」との答え
僕は、この映画の「静けさと温かさ」にドップリと浸って観ていたもので、筋書きの話をされたときにはちょっと意外・・って感じがしました。しかし、同じ空間で同じ映画を観ていても人それぞれ感じ方は違うものなんですね(^^♪
滝田監督は、この映画の中で納棺師の仕事を「こんな仕事」「汚らわしい」「早くまともな職に就け!」という言葉で表現されました。脚本の小山薫堂氏が云ってらしたことですが、最初は差別的な云い方をしないようにオブラートに包んだ表現で書いていた脚本だったそうです。それをあえて厳しい言葉にこだわった滝田監督。
しかしこれは、納棺師や葬儀屋がしている仕事の凄さに対して最敬礼の賛美をいただいたのだと僕は思います。これらの言葉のお陰で、美装の現場に立ち会ったご葬家からいただく「ありがとう」という言葉に凄みがでているのだと感じました。
さて、この映画には石文(いしぶみ)という素敵な伏線が用意されていました。
まだ言葉が無かった時代、自分の気持ちに似た石を相手に渡して思いを伝えたという「石文」。主人公が子供の頃に使っていたチェロケースを開けると、新聞紙に包まれた石ころが出てきます。
物語が進む中でこの「石ころ」の存在感が増してきます。
そして、子供の頃に別れた父との再会。しかしそれは悲しい再会でした。
亡骸を目の前にして主人公は、父の70何年の人生がたった荷物2つなのか・・・とつぶやきます。その思いを足蹴にして棺を持ち込む葬儀屋。これには僕も心底腹が立ちました。
人の死に慣れている葬儀屋だからこそ「もっと遺族に気を使わんかい!」と思ってしまったシーンでした。これが自分ごとだったら・・・、決して許せなかったと思います。
でも、それだけにこの時の本木さんの姿が一番心に残っています。
この時、妻(広末さん)が云った一言・・・
「主人は納棺師なんです」
この言葉で観ている人がどれだけ救われたことか。最初「汚らわしい」とまで云い捨ててた彼女から出た言葉だからこそグッときました。
僕の親父が死んだとき・・・
一晩中、誰もいない式場に置かれたままにされていた親父の棺。未だに後悔しているんです。せめて最後の晩だけでもそばにいて通夜ができなかったのか?って。
当時も今も変わらない・・・ちっとも成長できない未熟な自分を悔いながら映画を観ました。
主演が本木さんだったこと、奥さんが広末涼子さんだったこと。納棺師の社長が山崎努さんだったこと。音楽が久石譲さんだったこと。すべてに感謝です。僕はこの映画をもう一度観たいと心から思います。
予告編が観られます ⇒ おくりびと公式サイト
脚本家:小山薫堂さんの話が読めます ⇒ eiga.com
葬儀たそがれ日記 ⇒ 「納棺師の記憶」
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