2014年04月18日
安土から春の近江へこぎ出そう(5)「ひろびろ近江平野」
a.いま何時や?
b.12時半、安土の駅前から走り出して、そろそろ3時間です、
a.ぜんぜん進んでないな、
b.まあ、八幡堀ゆっくり歩いたし、けっこう遠回りもしてるし、こんなもんちゃいます(=こんなもんじゃないでしょうか)、それよりメシどうします、
a.自転車こぎながら、カロリーメイト食べたきり、コンビニもありそうでなかったしなあ、
b.ここからさらに無さそうなエリアですけど、
a.まあいい、もともと、このおいしい景色を食べに来たんや、
b.ケーキ?
a.けしき!
b.チョコレートケーキのような畑ですね、
a.腹へると何でも食べ物に見えてくる、
b.左手のおまんじゅうのような森は神社かなあ、
a.たぶんそうや、
「こんもりと 見えたら たいがい神社やな」
b.しかし真平(マッタイラ)ですね、見渡すかぎり、
a.こんなコトバ無いけど、まるで陸びわ湖やな、
b.びわ湖沿岸の近江平野が湖面の延長のようやと、
a.うむ、夏になると作物が育って平野一面、ミドリのびわ湖、風が吹くとそれがサァーっと波立って、
b.ああ、はなし聞いただけで気持ち良さそうすね、
a.音がまた良くて、サラッと乾いた音が風上から広がる、
「作物(サクモツ)のミドリは陸のびわ湖かな」
b.これもここ特有のながめ、
a.電柱と電線で切り取られた近江富士、パノラマプリント思い出すなあ、上下カットしただけの、なんちゃってパノラマ、ひとむかし前に流行(ハヤ)ってた、
b.こんだけ広いと、電線や電柱で風景にもリズム感が生まれますね、
a.町なかでは、邪魔でしょうがないのに、ここじゃ電柱も生き生きしてんなあ、
「電柱も のびのびのびる 近江かな」
b.これは日野川すか、
a.わりとこじんまりした川やけど、琵琶湖に近いとずいぶん広いな、
b.あれも近江富士ですね、
a.どっから見ても姿がいい、近江平野の看板娘や、
b.女性なんすか、
a.たぶん、そんな気がする、
b.そんな日野川のとなりをひっそり流れてんのが家棟川(ヤナムネガワ)、
a.川にそって打ち捨てられたようなサイクリングロードがつづく、
b.これにそって上流へ向かいますか、
a.そうしよう、
b.サクラや立派な樹木が並んでんのに、なんで人気無いんかな、
a.お、この畑も整然とした幾何学模様を描いとるぞ、
b.美しいし、そだつ作物は食べられるし、ダブルでオトクですね、
「美しく じき食べられる 畑かな」
a.ココで気持ちが決まった、きょうは向かいの森を右へ抜けて、最寄りの(モヨリノ=いちばん近い)野洲(ヤス)駅から帰るぞ、まだ昼の2時前やけど今日はこれで目がお腹いっぱいや、
b.あの森もなんか雰囲気ありますねえ、バックは近江富士やし、
a.森に囲まれた歴史ある集落、路地をゆっくり流すとたちまち幸せになれんで、
b.芭蕉の先生だった北村季吟(キギン)もここの生まれか、やっぱり環境がヒトを作るんすね、
a.チミ(=君)も賢くなれるよう、ココで手を合わせたまえ、
b.しかし、今回の近江はサクラ直前で残念でしたね、
a.そうやな、まだ時間もあるし、京都に着いてから少し花見して帰ろか、JR桂川駅から東北方向、東海道本線と新幹線にはさまれた光福寺、京都の裏鬼門を守るお寺にしてサクラの隠れ名所なりよ、
b.スゴイやないすか、最初からココにすれば良かったのに、
a.ホンマや、花盛りとはこのことやな、
b.でもなんでお寺なのに鳥居なんやろ、
a.さあ、それより今は、このサクラの中にたたずんでいよう、
「裏鬼門 鳥居埋もれる 花のうち」
b.では最後に旅のまとめを、
a.2010年4月3日、京都の西大路駅からJRびわ湖線で安土駅まで輪行、駅前を10時に出発、反時計回りにぐるっと迂回(ウカイ=回り道)してから西の湖(ニシノコ)をへて近江八幡の城下町へ、八幡堀をゆっくりながめ歩いたあと、広々した近江平野を進み、午後2時過ぎに早々とJR野洲駅から帰路につく、