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2016年12月03日

アガサ・クリスティから (84) (ミス・マープルと十三の謎*アスターテの祠ー4)









(ミス・マープルと十三の謎*アスターテの祠ー4)








「聖なる儀式ですって?」
ミス・ダイアナ・アシュレイは、遠くを夢見るような面持ちでつぶやいた。






「どんなことをしたのかしら?」







「誰から聞いてもあんまり立派なものじゃなさそうだよ。いかがわしいことでもやっていたんだと想像するね。」
ロジャース大尉は大きな意味のない笑い声をたてた。







ヘイドンは彼には全くおかまいなしだった。
森の中央には聖堂があったと気まぐれに想像して楽しんでいるのだと言った。





ちょうど、彼らは、森の中央の木を切り開いた狭い空き地に出ていたのだった。






真ん中には石で作った(あずまや)のようなものがあった。






「僕はこれを祠(ほこら)と言ってるんですよ。アスターテの祠です。」







ヘイドンはこう言って、そこまで案内した。

中には、自然のままの黒檀の柱。その上に奇妙な小さな女の像が乗っていた・・・三日月型の角をはやして、ライオンの上に座っている像だった。






「フェニキアのアスターテ、月の女神です。」とヘイドンは言った。






「月の女神ですって。」ダイアナは声をあげた。
「今夜はバカ騒ぎをしないこと?仮装して、それからここに出てきて月の光を浴びながらアスターテの儀式をしましょう。」







牧師は急に身体をうごかした。
ヘイドンのいとこのエリオットが、それに気づいて声をかけて来た。
牧師がこの異教の話を不審に感じていると思ったらしい。






牧師はただならぬ空気・・・脅迫されているかのような・・・あまり雰囲気に流されるタイプでもないが、ここは何か不思議な、不吉な感じがすると答えた。







同じく医者のシモンズもヴァイオレット・マナリングも、ここの雰囲気が、なんだか嫌な気持ちになることをめいめい言っていた。






この場を離れようと牧師たちが歩き出すと、他の人たちも後からついてきた。







ダイアナ・アシュレイだけが、ひとりグズグズしていた。







振り返ると、彼女は祠の前に立って、その中の像を食い入るようにみつめていた。








(次号に続く)




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