2016年12月08日
アガサ・クリスティから (85) (ミス・マープルと十三の謎*アスターテの祠ー5)
(ミス・マープルと十三の謎*アスターテの祠ー4)
「月の女神ですって。」ダイアナは声をあげた。
「今夜はバカ騒ぎをしないこと?仮装して、それからここに出てきて月の光を浴びながらアスターテの儀式をしましょう。」
*****
この場を離れようと牧師たちが歩き出すと、他の人たちも後からついてきた。
ダイアナ・アシュレイだけが、ひとりグズグズしていた。
振り返ると、彼女は祠の前に立って、その中の像を食い入るようにみつめていた。
*****
その日はめったにない暑さで素晴らしい日だった。
それもあってか、ダイアナの提案・・・仮装大会に皆、賛成だった。
打ち合わせのひそひそ話や秘密の縫物など、支度に皆、忙しかった。
夕食時に現れた銘々の仮装ぶりに場は盛り上がって、大騒ぎしていた。
●ロジャース夫妻・・・・・・新石器時代の小屋の住人。
(・・・・・・どうりで暖炉の前の敷物が急になくなっていた。)
●リチャード・ヘイドン・・・フェニキアの船乗り。
●いとこは・・・・・・・・・山賊の親分。
●シモンズ医師・・・・・・・コック長。
●レディ・マナリング・・・・病院の看護婦。
●マナリングのお嬢さん・・・サーカシア(黒海に接するコーカス高原の北西地方)の奴隷。
●牧師自身・・・・・・・・・暑苦しく着込んだ修道士。
ダイアナ・アシュレイは一番、後から居間に降りて来た。
しかし、彼女を見た皆は期待外れだった。
真っ黒なすっぽりとしたドミノ仮装服に身を包んでいた彼女は言った。
「謎の女。」
「それが私の名前ですのよ。さあ、お食事にしましょう。」
食後、月が登ろうかという時、皆は外に出た。
美しい暖かな夜で、私たちはぶらぶら歩きまわり、あっという間に時は流れていきました。
一時間くらいたった後、皆はダイアナ・アシュレイがいないのに気付いた。
まさか?寝てしまったのでは?というリチャード・ヘイドンに対し、ヴァイオレット・マナリングは首を振った。
「いいえ、わたくし、十五分ほど前にあの方があっちのほうに歩いていらしたのを見ましたわ。」
彼女は月下の元、黒々とした影をつくっている森の方を指さした。
「何かしでかそうっていうんだろう。何かこっぴどい、いたずらをする気なんだ、確かに。身に行こうじゃないか。」とリチャード・ヘイドンが言った。
皆はダイアナ・アシュレイが何をしでかすつもりなのか?なんとなく知りたくなり、連れ立ってぞろぞろ歩き出した。
辺りは不吉な雰囲気に包まれていた。
木と木が重なり合って生えていたため、月の光さえも差し込む余地はなかった。
牧師自身は、強い何か目に見えない力に引っ張られているような・・・真っ暗な中、ささやき声と吐息が聞こえるばかり、不吉な雰囲気も極みに達していて、その中を皆、ぴったりと離れずに進んでいった。
突然、皆は森の中央の木を切り開いた例の場所に出た。
そして、はっとして棒立ちになった。
祠の入り口・・・。
透明の紗でぴったりと体を包んだ何者か・・・ちらちら光る姿が立っていた・・・二本の三日月形の角が豊かな黒い髪の間からのぞいていた。
「ああ、これは!」
リチャード・ヘイドンが言った。
頬からは冷や汗が流れ出て・・・。
しかし、お嬢さんのヴァイオレット・マナリングの方が敏感だった。
「あら?ダイアナじゃないの、何をしているのかしら?まあ、なんだかあの人とは思えない位に違って見えるわ。」
入り口の人物は両手を挙げた・・・一歩前に進んで、高いきれいな声で歌うように唱えた。
「われは女神アスターテなり、われに近づくなかれ、わが手に死は握られたなり。」
(次号に続く)
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