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2016年12月12日

アガサ・クリスティから (86) (ミス・マープルと十三の謎*アスターテの祠ー6)







(ミス・マープルと十三の謎*アスターテの祠ー6)







入り口の人物は両手を挙げた・・・一歩前に進んで、高いきれいな声で歌うように唱えた。






「われは女神アスターテなり、われに近づくなかれ、わが手に死は握られたなり。」






「およしなさいよ。あなた、、気味が悪いじゃないの、ほんとうに。」とレディ・マナリングがなじった。






ヘイドンは前に飛び出し、叫んだ。「ああ、ダイアナ?あなたは素晴らしい。」






月の光に慣れた皆は前よりももっと現場を見やすくなった。






ダイアナは、ヴァイオレット(レディ・マナリング)が言ったようにまるで別人に見えた。






顔はいつもより東洋的に・・・目はさらに細く切れ上がって何かしら残酷にきらめき、くちびるの上には今までに見たことがないような微笑みを浮かべていた。






「心せよ。女神に近づくことはならぬ。われに手をふれるもの、すべて死に至らん。」
彼女はいましめるように言った。






「おお、ダイアナ、あなたは素晴らしい。」

ヘイドンは叫びました。

「しかし、もうやめてください。どうも僕は・・・なんだか嫌な気持ちなんだ。」






ヘイドンは草を踏んで彼女の方に進んで行った。






彼女は彼の方に手をのばして言った。

「とどまりなさい。あと一歩近づけば、アスターテの呪いによって、われは汝を撃ち殺すであろう。」






リチャード・ヘイドンは笑って足を早めた。






その時、突然、不思議なことが起こった。





ほんの一瞬、彼は立ち止まったと思うと、それから、よろよろとよろめいて、ばったり倒れた。






突然、ダイアナはヒステリックに笑い始めた。
それは林の静寂を破って、寒気がするような笑い声が響いた。






エリエットは声高に叫びながら前に飛び出した・・・。






「もう見ちゃいられないよ、起きろよ、ディック起きろったら、おい。」






しかし、リチャード・ヘイドンは倒れたままだった。
エリオット・ヘイドンは彼のかたわらにひざまずき、静かに彼を上向きにし、かがんで顔を覗き込んだ。






エリオットは急に飛び上がると、よろめいて立ち上がり、叫んだ。






「先生、先生、来てください。死んでいるらしいんです。」






(次号に続く)




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