2016年12月02日
アガサ・クリスティから (83) (ミス・マープルと十三の謎*アスターテの祠ー3)
(ミス・マープルと十三の謎*アスターテの祠ー3)
ペンダー博士は、すぐに友人のヘイドンが美人で有名なミス・ダイアナ・アシュレイにぞっこん参っていることに気が付いたらしい。
滞在客は皆、ただこの美人の舞台の道具立てのようだった。
彼女自身が何をどう思っているかは分からなかった。
ただ、とてもむら気であきっぽく、男性陣のこころをもてあそんでいるかのようだった。
牧師が着いたその翌日、主人であるヘイドンがその場所をすっかり案内してくれた。
彼の家はデヴォンシャイア花崗岩で出来たシンプルながっちりした作りだった。
ロマンティックではないが、居心地が良い家だったようだ。
家の窓からは荒野の全景が見渡せた・・・風雨にさらされた岩山がうねってひろがっていた。
一番近い岩山の斜面・・・いろいろな小屋が円を描いている。それは後期石器時代の昔の遺跡であった。
古代に興味があるヘイドンはバカに力を入れ、熱心に語りだしたという。
特にたくさんの過去の遺物が眠るこの地を詳しく話した。
新石器時代の小屋の住人、ドルイド僧(古代ゴール、ブリテン、アイルランドのケルト族の間に行われていたドルイド教の僧)、ローマ人、それからずっと昔のフェニキア人の遺跡も発見されたらしい。
「しかしこの場所が一番興味があるんだ。名前は知っているね・・・沈黙の森。
そう、どういう訳でそういう名前がついたのか、すぐに分かると思うけど。」
彼が指で指し示したのは・・・岩やヒースやわらびだらけで茂みがない屋敷から、数百ヤード離れたところにある、こんもりと茂っている森であった。
「あれは遠い過去の日々の遺物なんだ。」
どうやら昔の木は枯れてしまい、植え替えられたらしいが、おそらくフェニキア人がいた時代と同じ形は残しているらしかった。
「さあ、行ってよくながめてみよう。」
と、ヘイドンは皆をうながした。
彼の後について皆は森に入って行った。
たちまち、不思議な圧迫感と、荒涼たる気味の悪い恐ろしさと静寂が感じられた。
気がつくと、ヘイドンが奇妙な笑いを浮かべていたという。
「ここには何か変な感じがこもっているだろう、ペンダー?反抗的なものかね?不安かな!」
嫌な気分だ。と牧師は静かに言った。
「そうだろうな、これは君の信仰の昔の敵の本処だったんだ。アスターテ(フェニキア人の崇拝した豊作と生殖の女神。ギリシャ・ローマの月の女神でもある。)の森だよ。」
「アスターテ⁈」
「アスターテさ。イシュター。またはアシュトレ。」
城壁の北側にあったとされるフェニキア人の呼ぶ【アスターテの森】に違いないとヘイドンは言った。
こんもり茂った木に囲まれたここで、聖なる儀式が行われたに違いないと、ヘイドンは力説した。
「聖なる儀式ですって?」
ミス・ダイアナ・アシュレイは、遠くを夢見るような面持ちでつぶやいた。
(次号に続く)
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