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2016年11月25日

アガサ・クリスティから (80) (ミス・マープルと十三の謎*@-8)







(ミス・マープルと十三の謎*@-8)






「でもそれは不可能だわ。だって皆がトライフルを食べたんですもの。」
ジョイスが早速、口をはさんだ。






「おお、いいえ、お相手役(コンパニオン)はパンティング法をやっていたでしょう、ねえ。
パンティングのやせる方法をやっていたらトライフルのようなものはけっして食べませんよ。
それからジョーンズ氏は自分のトライフルのハンドレッズ・アンド・サウザンズを削り落として食べたんだと思います。利口な思いつきですけれど、ずいぶんむごいことですよ。」






他の者の目はみんなヘンリー卿にじっと注がれた。






「まったくもって、不思議ですなぁ。」






彼は言った。






「ミス・マープルはよく真相をつきとめましたね」





ジョーンズ氏は、グラディス・リンチを、俗に言う・・・いわゆるはらませてしまったという。
彼女はほとんどやけくそになっていたらしい。
彼は妻を処分してしまいたかったので、グラディスに妻が死んだら彼女と結婚すると約束をした。
ハンドレッズ・アンド・サウザンズに毒を混ぜて、その使い方を言って聞かせて彼女に渡した。
グラディス・リンチは一週間前に死んだのだった・・・子供は死産。
ジョーンズ氏は、既にグラディスを捨てて別の女に乗り換えていた。

グラディスは死ぬ間際、真相を告白したという。






ヘンリー卿からこの事件の結末を聞かされた後、しばらく沈黙が一座を占めていた。






やがてレイモンドが言った。






「ねえ、伯母さん、まったくたいしたもんですねえ。
でも僕はいったい全体、どうして伯母さんが真相をつきとめたんだかさっぱり分からないんですよ。
台所で働いている小娘がこの事件と何か関係があるなんて思いもつかなかった。」





ミス・マープルは「そうですとも。でもね、おまえは私のようには世の中のこと知らないんですものね。
ジョーンズのようなタイプの男・・・がさつで、陽気な男ってのはね。
その家に若いかわいい女中がいると聞いたとたんに、私はその男がその女中をそっとしておくはずはないと思いましたよ。
なんとも痛ましい、嫌なことですねえ。あまり口にもしたくもないですわ。」






ミス・マープルは言った。

彼女の小さな村の出来事・・・あの時のハーグレーヴスの奥さんが受けた、なんとも言いようがないショックを。





そして、これもすぐに忘れてしまう村の出来事だったことも。










(【火曜ナイトクラブ】・・・完結。)

(次号・【アスターテの祠】に続く)




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