2016年11月13日
アガサ・クリスティから (75) (ミス・マープルと十三の謎*@-3)
(ミス・マープルと十三の謎*@-3)
「事件にとりかかるのに、頼りになる事実はこれだけです。」
「もしジョーンズが妻に砒素を盛るというひどいことをしでかしたとしても、夕飯の食べ物の中に入れたのではにことは確かですね。三人とも同じ夕飯を食べたのですから。また・・・・・もう一つの点は・・・・・ジョーンズは夕飯がちょうど並べられているときにバーミンガムから帰宅。前もって料理に手を入れておく機会はありませんでした。」
画家ジョイスが問いかけた。
「そのお相手(コンパニオン)っていう人はどうなんでしょう?愛想のいい顔をした太った女っていいましたっけ。」
ヘンリー卿はうなずいた。
ミス・クラークは確かにジョイスの言う通り見逃さなかったらしい。
しかし、あの犯罪を犯す動機がなかったという。
ジョーンズ夫人は何も彼女に遺産を残さなかった。
それに雇い主が亡くなったお陰で、彼女は他の勤め口を探す必要も生じていた。
「そうするとその女は除外してもよさそうね。」ジョイスは考え込んだ。
「ところで一人の警部が間もなく重要な事実を発見したんです。」ヘンリー卿は続けた。
その晩、食後、ジョーンズ氏は台所に行って、妻が気分が悪いと言っているので、コンスターチ湯(くず湯のようなもの)を一杯作るように頼んだ。
グラディス・リンチがそれを作り上げるまで彼はずっと台所で待ち、それから妻の部屋に自分で運んで行ったという。
「これでもう、事件は結末がついた。と私どもにも思われたものでした。」
ヘンリー卿の話を聞いていた弁護士はうなずき、「動機と」と指を一本折りながらいった。
「機会ですよ。製薬会社の外交員なら、毒薬はすぐ手にはいりますな。」
「それに道徳観念が薄弱な男ですな。」と牧師は言った。
レイモンド・ウェストはヘンリー卿をじっと見つめた。
「どこかにわながあるようですね、この話には。どうしてその男をすぐに逮捕しなかったんですか?」
「それがこの事件のあいにくなところで。ここまではすらすらと運んだのですが、ここで壁にぶつかってしまったのです。」とヘンリー卿は説明を始めた。
ジョーンズが逮捕されなかったのは、こういう次第だと、話を続けた。
ミス・クラークに尋問すると、コンスターチ湯は夫人ではなく、自分が全部飲んだのだ。ということだったらしい。
要約するとこうである。
いつものようにミス・クラークはジョーンズ夫人のところに行った。
夫人はベッドの上に起き上がっていて、その側にコンスターチ湯の茶碗が置いてあった。
夫人は気分が悪いので、夫に頼んでコンスターチ湯を持って来て貰ったが、いざ来ると、もう欲しくはなくなっていたという。
ミス・クラークは、こんなにおいしそうに出来ているのにもったいないと夫人に言ったらしい。
お腹もすいているし、自分ならすぐにでも頂くのに。と。
夫人は「あんな馬鹿なことをやっているからだわ。」と言った。
実は、コンパニオンのミス・クラークは、ますます太ってくるのを気にして、いわゆるバンティング法(脂肪・でん粉・糖分をさけて体重を減らす方法)をやっていた。
「あれはよくないことだわ、本当によくないわ。」ジョーンズ夫人は力説した。
「神様があなたをお太らせになったのなら、それも主の御心のせいよ。そのコンスターチを皆、お飲みなさい。あなたの体にきっといいことよ。」
そういう訳で、早速、ミス・クラークはそれを一滴も残さず飲んでしまった。
「それでお分かりのように、夫に対する嫌疑はすっかり崩れてしまいました。吸取り紙に残っていた文句の説明を求められると、ジョーンズはすぐさま説明してくれました。」
その手紙はオーストラリアにいる弟の借金申し込みに対する返答だったという。
私はまったく家のやつの財産で食っている。妻が死ねば私が財産を勝手に動かせるだろうから、出来れば援助してやりたい。力になれないで残念だが、世の中には同じように困っている人は 何十万(ハンドレッズ・アンド・サウザンズ)といるのだ。
以上が、弟に対する返事の手紙だという。
「それでこの事件はまったくもやに包まれてしまったというわけですな。」
教区の牧師であるペンダー博士が言った。
(次号に続く)
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