2016年11月11日
アガサ・クリスティから (74) (ミス・マープルと十三の謎*@-2)
(ミス・マープルと十三の謎*@-2)
その文章は、こうである。
『まったく家のやつ次第だ・・・・・。
家のやつが死んだ暁には私が、なにからなにまで(ハンドレッズ・アンド・サウザンズ)・・・・・。』
(注*ハンドレッズ・アンド・サウザンズ=かざり砂糖という意味もある)
おまけにその少し前に、夫が妻を毒殺した事件があったので、女中たちは想像たくましくして騒ぎ立てた。
ジョーンズ氏は妻を殺して何十万ポンドという財産を手に入れたんだ!と。
偶然、ひとりの女中の親類が、ジョーンズ夫妻の住んでいる小さな町にいたので、そこに手紙を出して聞いてみた。その返事で、ジョーンズ氏は、その町の医者の娘で、33歳になるちょっと綺麗な女性とねんごろになっていることがわかった・・・・・このスキャンダルは、日に日に噂高くなり・・・・・内務省には嘆願書が出され、ロンドン警視庁には無名の手紙がたくさん舞い込むことになった。
「皆、ジョーンズ氏が妻を殺したと訴えているのです。
われわれは、ほんのくだらない村のうわさだけで何も根拠などありゃしないとたかをくくっていましたが、それにも関わらず、世論をしずめるために、死体発掘が許可されたのです。」
ちゃんとした証拠などありゃしないのに、人々の間にうわさがひろまって、調べてみると、驚くほど当たっていたということは世の中に多々あるが、これはそのいい例だった。
検視解剖の結果、多量の砒素(ヒ素)を発見。
この妻はヒ素中毒で死んだということが明確になった。
当然、ロンドン警視庁はその地方の当局と協力して、どうして砒素が飲まされたのか?誰によって砒素を盛られたのか?を捜査することになった。
「疑いは、当然、夫にかかりました。夫は妻が死んでもうかったのですからね。もっとも旅館の女中が大げさに想像した何十万という額ではありませんでしたが、約八千ポンドという訳です。」
金遣いが荒く、女好きのジョーンズ氏を慎重に調べたところ、その医者の娘とは、一時は非常に仲が良かったのだが、二カ月前には破局していて、お互い、会おうともしていなかったらしい。
父親の医者は、相当年配の正直な、全然、人を疑うことを知らぬ人物だったので、解剖の結果に、本当にびっくりしてしまったらしい。
彼は夜中に呼ばれて行って見ると、3人とも苦しがっていた。
特にジョーンズ夫人が重体なのにすぐ気が付いて、苦痛をやわらげるためにアヘン剤を自分のうちに取りにやらせたという。
こうしてできるだけ手をつくしたが、夫人は駄目だった。
しかし医者は怪しいふしがあるなどとは、少しも疑わなかった。
一種の食中毒でなくなったと思い込んでいた。
その夜の食事は、缶詰のエビとサラダ、トライフル(スポンジケーキをぶどう酒にひたしたもの)と、パンにチーズ。
あいにくそのエビは少しも残っていなかった・・・・・皆捨ててしまって、缶も残っていなかった。
医者はグラディス・リンチという若い女中に問いただしてみた・・・・・その女中はすっかり取り乱して、興奮し、泣いてばかりいるので、要領を得た答えは得られなかった。
ただ繰り返し、缶は少しもふくれていなかったし、エビもみたところとてもよさそうだったと言い張った。
「事件にとりかかるのに、頼りになる事実はこれだけです。」
(次号に続く)
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