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2016年11月07日

アガサ・クリスティから (72) (ミス・マープルと十三の謎*@)







(ミス・マープルと十三の謎*@)





ミス・マープルの家に集まった人達。





ひょんな話の流れから、(内容も結末も)それぞれのみが知っている謎の事件を順番に出していって、謎解きをしようということになった。

それは、毎週火曜日に集まる【火曜クラブ】と名付けられた。

メンバーが6人欲しいということで、その場にいた老婦人ミス・マープルが参加を表明したのだった。

皆はその場にそぐわない、セント・メリー・ミードの小さな村からほとんど出たこともない老婦人の参加にとまどいながらも、紳士的に受け入れることになった。





甥の作家・・・・・・・・・・・・・レイモンド・ウェスト

女流画家・・・・・・・・・・・・・ジョイス・ラムプリエール

元ロンドン警視庁の警視総監・・・・ヘンリー・クリザリング卿

教区の牧師・・・・・・・・・・・・ペンダー博士

弁護士・・・・・・・・・・・・・・ペザリック氏

そしてミス・マープル。






〜〜〜〜〜






「どなたが口を切って下さいますか?」
ジョイスが言った。





「わかりきったことですよ。それは当然・・・・・・」
と、元ロンドン警視庁の警視総監であるクリザリング卿の方にうやうやしく頭を下げた。





ヘンリー卿はしばらく黙った後、一息つくと、口を開いた。
「皆さんの気に入るような話を選ぶのはちょっとむずかしいんですが、ちょうど、この座にぴったり合う話が一つあります。」




ヘンリー卿いわく、
一年前に新聞の記事になり、皆も知っていると思われる事件だが、当時は未解決の謎として放り出された話だということだった。
ところが、たまたま、ついこの間、その解決をヘンリー卿がするようになったという。






事件は簡単でしてね、三人の人物が夕飯を食べたのですが、料理の中に、かんづめのエビがあったんですな。
その夜遅くなって、三人とも苦しみ出したので 急いで医者をよびました。
二人は治りましたが、ひとりは死んでしまったんです。






「ああ!」
レイモンドは我が意を得たり、といった調子で言う。





「先刻もいったように、事件は、事実としては簡単なものだったのです。
死因はプトマイン中毒だとみなされ、死亡証明書もそのように書かれ、被害者はちゃんと埋葬されました。
しかし、ことはそれですまなかったんです。」





ミス・マープルはうなずいた。
「うわさがあったんですね。いつでもつきものです。」






「さてこのささやかなドラマの登場人物を紹介しなければなりませんが、かりに夫と妻をジョーンズ夫妻、妻のお相手役(有給で生活や旅の相手をする人を指す=コンパニオン)をミス・クラークとしておきましょう。

ジョーンズ氏は製薬会社の外交員でしたが、五十がらみのがさつな、赤ら顔のちょっといい男で、その細君は四十五歳くらいのまあ平凡な女でした。

お相手役のミス・クラークというのは、つやのいい顔をした、太った元気な女で六十歳。

三人とも、まあ、とりたてて興味を引くような人物じゃなさそうでした。」






(次号に続く)



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