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2016年05月12日

アガサ・クリスティから (44) (茶色の服を来た男*その23)


(茶色の服を来た男その23)

アンは、ハリー・レイバンからの手紙で、誰にも気づかれぬようにホテルを後にした。
付けられてはいないことも確認したが、大丈夫だった。
しかし橋を渡ったあと、物音がしたので振り返ったが誰もいなかった。
その後また物音がして、突然、背の高いヨーロッパ人に襲いかかられる。
アンは、必死に逃げた。
月のない暗い夜、気がつくと アンの体は奈落の底に落ちていた。

うなされた夢の中ではアンは必死にハリー・レイバンを探していて、危険が迫っていることを伝えようとしていた。

ようやく気がついたアンは木の壁に囲まれた部屋に寝かされていた。

そしてそこには、ハリー・レイバンがいた。



*****************



まず、アンはスーザン達に居場所を知らせようと考えた。
しかし、レイバンは反対だった。
その友人が彼女を死地におびき寄せたのだと言う。
結局、ハリー・レイバンの伝言は犯人がアンをおびき寄せる為のものだったと判明した。
アンの身近な人でしか知りえない、アンとハリー・レイバンの間柄。
犯人は身近な人の中にいるようであった。

その日、たまたまレイバンは何かに惹かれるように出かけ、木の枝に気を失ったアンが引っかかっているのを見つけ、連れ帰って看病してくれていたらしい。

しかもアンが長い眠りから目が覚めたのは一か月くらい掛かったらしい。

アンは、ハリー・レイバンにここで何をしているのかを尋ねた。



「滝」から4マイルほど、ザンベジ川をさかのぼったところにあるこの小さな島で、戦争が終わるとすぐにレイバンは暮らし始めたらしい。

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たまに「滝」に来るホテルの観光客を舟で案内する位で、ほとんどお金のかからないようで好きに暮らしているようであった。

看病してくれたバター二婆さんは、以前、レイバンが熱病を治してやったことがあるらしい。
恩義を感じている彼女は、レイバンに忠実で一言も他言しないので、怪我が治るまでここで隠れていた方がアンは安全だという。

犯人はアンの死体が見つからなくとも、岩に当たってこなごなに砕け、急流に流されたのだろうと考えるはずだと。

こうして、アンの怪我が回復するまで、アンとハリー・レイバン、そして黒人のバター二婆さんの奇妙な生活が始まった。

アンの怪我は二つあった。
ひとつは頭の打撲傷と腕の捻挫であった。




ハリー・レイバンは、かなり長い時間、どこかに出かけていたが、それでもアンとお喋りをしたり口論したりしていた・・・青天井の下で、同じことを何度も蒸し返して、言い争いをしたのである。

そうして喧嘩をしながらも、ふたりの間にはまるで想像もつかなかった、真実で永続的な療友関係が成立していた・・・そして、そのうえにもう一つの違ったものも。



アンの怪我は順調に回復していった。



そして、そろそろアンの身の振り方を決める時が近づいていた。

アンにもそれがよく分かっていた。

果たして彼は黙ったまま、彼女を行かせるのだろうか?



ある日、レイバンは言った。
今夜、アンはこの島を立たなくてはいけない。
ベイラ(モザンビーク)まで行き、そこからイギリス行きの舟に乗るように言われた。

アンはベイラに行かないと、ささやかな抵抗を示した。


レイバンは、本当はアンをいつまでも手元に置いておきたいが、それは出来ないと言った。

男女であることも、またレイバンとアンが一緒になったとしても、アンを守る為、一生、夜通し起きてアンの身を守ることなど不可能であると告げた。

アンの為に身の安全が確かなイギリスに戻り、生真面目な相手と、安心して恋愛や結婚をした方が良いのだとレイバンは考えていた。



彼の背後には、いつも鉱山がある・・・とレイバンは言った。

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「・・・めちゃくちゃに焼けただれて、にがっぽい灰の味のする鉱山だけが。」

彼には仕事があって・・・それは汚名をそそぐか?死ぬか?の瀬戸際であること。またアンを殺そうとした憎い悪党の息の根を止めてやりたい。と。

アンは突き落とされはしなかったと告げたが、レイバンは否定した。

あの後、レイバンが現場に行くと、アンが足を踏み外すように、道の脇に置いてあった白い小石の標識が道ではなく藪の上に置かれていたとのこと。

彼はここで話を辞めたが、やがて今までとは全然かわった調子で続けた。



「僕達、こんな話をするのは、はじめてだね。アン。
だが、こうなったら話しておくべきだと思う。全部、話してしまうからよく聞いて欲しい・・・初めからすっかりね。」


アンは、辛い過去なら話さなくて良いと言った。


「いや、君にはぜひ聞いて欲しい。
この話、今まで誰にも話そうと思ったことなかったんだ。おかしなものだね。運命のいたずらとでもいうのかね?」



彼はそう言って少し黙った。

陽はとっくに沈んでいて、ビロードのようなアフリカの夜のとばりが私たちをすっぽりと包んでいた。

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アンは一部は知っていると言った。

「どんなこと?」

「あなたの本名がハリー・ルーカスだと知っていたわ。」

彼はまだためらっていた・・・

(茶色の服をきた男*その24に続く)



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