2016年05月05日
アガサ・クリスティから (42) (茶色の服を着た男*その21)
(茶色の服を来た男*その21)
アンは、レイス大佐に突然、プロポーズを受けた。
しかし、自分には好きな人がいることを告げた。
レイス大佐の冷静な威圧感を感じて、怖くなったアンだった。
「滝」は壮大で綺麗だった。
アンはこの「滝」や辺りの森にひどく惹かれていた。
何かが起こるような気持ちだった。
・・・・・・・・・・・・・・
そして、小さな黒人の子供が伝言を持って来た。
それは、あのハリー・レイバンからだった。
「きみに、ぜひ会いたい。ぼくのほうから、ホテルにはいくわけない。例のヤシの谷間のところの開拓地まで、やってこないか?十七号船室のことを思い出して、きてくれたまえ。 ハリー・レイバン」
心臓は早鐘のようだった。それじゃあ、あの人もここに来ているのだ!
そう、私にはわかっていた・・・・・そんな気がしていたのだ!
あの人が、近くにいるような気がしていた。
全然知らずにあの人が隠れている場所に、やって来たのだ。
アンはショールを被ると足音をしのばせて入り口まで行った。
用心しなければならない。彼は追われている身だ。
スーザンの部屋まで足音をしのばせて行った。
スーザンは既に眠っていた。
サー・ユーステス・ペドラは?
彼の居間の入り口に立ち止まった。
ミス・ペティグルーに口述で筆記させていた・・・・・「ゆえに、私は次のように提案する、この黒人問題を扱う為には・・・・・」と彼女が単調な声で繰り返しているのが聞こえた。
そして彼女が次の口述を待つと、サー・ユーステス・ペドラが何か怒ってブツブツ言っているのが聞こえた。
アンの忍び足は続いた。
レイス大佐の部屋は空っぽだった。
社交室にも姿はなかった。
そして彼こそはアンが最も恐れている人物なのだ!
アンは急いだ。
忍び足でホテルを出ると橋に通じる小道を行った。
アンはつけられてはいないかを確認したが、誰もつけてくる気配が全くなかった。
アンは開拓地に向かって歩いていった。
六歩程、進むと立ち止まった・・・・・うしろで、何かの気配がしたのだ。
ホテルからつけて来たものではない。
前からここで待ち伏せしていたのだ。
その瞬間、べつになんという理由もなく本能的に、アンは自分が危険にさらされていると感じた。
それは、あの夜、船上で感じたものと同じものであった・・・・・本能的な危険の予感だったのだ。
アンは、とっさにうしろを振り返った。
シーンとしている。
何度か振り返るうち、物陰からひとりの男の姿が現れた。
アンに飛びつくようにやって来た。
しかし暗くて、何者か分からなかった。
分かったのは、相手は土人ではなく、背の高いヨーロッパ人である、ということだけであった。
アンは逃げ出した。
相手が追いかけてくるのが聞こえた。
アンは、両側の白い小石を目当てに、懸命に走った・・・・・月のない夜だったのである。
と、突然、からだがふわりと宙に浮いた。
うしろで男の笑い声が聞こえた・・・・・悪魔のような、気味の悪い笑い声だった。
アンがもんどりを打って、奈落の底に落ちていく間も、その声はアンの耳に残っていた。
(茶色の服を着た男*その22に続く)
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