2016年04月21日
アガサ・クリスティから (37) (茶色の服を着た男*その16)
(茶色の服を着た男*その16)
アンは、敵の経略にまんまと引っかかり、部屋に監禁されてしまった。
なんとか縛られていた縄をほどくと、危険を冒して彼らの会話を盗み聞きした。
そして、アンを捕まえたオランダ人と会話している人物は、チチェスターであると、鍵穴から確認した。
彼らは、巨大な力を持つ国際犯罪組織のボスである正体不明・謎の”大佐”から命令を受け、例のダイヤモンドを探しているようであった。
また膨大な数の野菜の取り引きをしているようでもあった。
翌日、なんとか命からがら監禁場所から逃げ出したアンは、慌てて港に行った。
しかし、キールモーデン号は出航した後で、果たして、チチェスターが予定通り、その船に乗ったのか?どうか?も分からなかった。
*****************
アンはそのまま、ホテルへと車を走らせた。
社交室(ラウンジ)には、誰もいなかったので、スーザンの部屋を訪ねた。
スーザンは、アンが連絡もなく見当たらないので、随分、心配してくれていたらしかった。
スーザンに監禁された話をした。
これから、アンがどうするか?を悩んでいた。
本来なら、スーザンはサー・ユーステス・ペドラーの一行にお供して、サー・ユーステス・ペドラーはもちろん、秘書のパジェットやレイス大佐まで、その動きを監視するつもりだった。
一方のアンは、チチェスターを追って、彼が予定していたキールモーデン・キャスル号に乗って、ダーバンまで行くつもりであった。
しかし、監禁場所からアンが逃げたことを仲間からの連絡で知ったチチェスターが予定を変更したり、アンの追跡をまくことも予想出来た。
実際、本当にチチェスターが船に乗り込んだか?どうかも?確認出来なかった。
チチェスターは変装の名人だった。
もし次、チチェスターに会ったとしても分かるかどうかも不明であった。
スーザンは、変装名人のチチェスターはプロの俳優であると思う。と言った。
確かにアンは、例の刃物で肩を刺されたレイバンを助けた夜、女給に化けたチチェスターの正体を見抜くことが出来なかった。
スーザンとアンが話し込んでいると、レイス大佐が来た。
スーザンが、今日はまだサー・ユーステス・ペドラーには会っていない。と話すと、レイス大佐の顔はちらりと妙な表情がかすめた。
「あの人のプライベートなことで何かあったらしくって、それで手を離せないらしいですよ。」
レイス大佐が答えると、スーザンは尋ねた。
「一体、なんなの?」
「人の秘密を話す訳には行きませんよ。」
それでも、スーザンが話すことは出来るはずだと食い下がると、レイス大佐は重い口を開いた。
「それじゃあ、例の噂に聞く茶色の服を着た男が、われわれと同じ船に乗っていたとしたら、どうお思いになりますかね?」
「なんですって?!」
アンの顔は血の気が引いた。
「これが事実だと、ぼくは思いますよ。港、港で彼を見張っていたのだが、彼はまんまとペドラーをだまして、彼の秘書に成りすましてしまったんですよ。」
「パジェットさんではないんですか?」
「いいえ、パジェットではない。もう一人の男です。自分ではレイバンと名乗っている。」
「で、逮捕されたの?」と、スーザンが聞いた。
スーザンは、テーブルの下でアンを力づけるように手を握りしめてくれていた。
「彼は姿をくらましてしまったらしいんです。」
「サー・ユーステス・ペドラーは、どうしようとしているの?」
「運命の神が、彼に与えた侮辱であると考えているようですね。」
やがてしばらくたってから、事件についてサー・ユーステス・ペドラーの見解を聞く機会が到来した。
お茶を差し上げたいから、彼の居間の方へぜひ来て欲しい。との伝言をボーイが持って来た。
行ってみると、彼は全くみじめな状態にあった。
「まず第一に、おかしな女が、こともあろうに、わしの家作で殺されていたということなんだ・・・わしを困らせようという底意があってのことだと、わしは思うんだがね。どうして、わしの家作で殺されにゃならんかね?
イギリスに家は沢山あるのに、よりによってミル・ハウスを選ばなくてもいいじゃないか?女がそこで死ななきゃならんような悪いことを、わしがしたとでもいうのかね?」
スーザンが慰めたが、サー・ユーステス・ペドラーはさらに痛々しい調子で話を続けた。
「それでも飽き足らず、こんどは女を殺した男が、厚かましくも、じつに厚かましくも、わしの秘書になったのだ。こともあろうにわしの秘書にだよ!秘書ではほとほと疲れたよ。もう秘書は沢山だ。やつらは仮面をかぶった殺人者か、さもなければ酔っ払いの暴れ者だ。あなたたち、パジェットのブラック・アイを見たかね?
・・・・・・・・・」
サー・ユーステス・ペドラーの嘆き節は続いていた。
そして、アンに秘書になって貰いたい。と言い出した。
「だいたい、こんどの仕事は、パジェットが考え出したんだ。あいつは、わしをとことんまで働かせようとしおる。あいつをケープ・タウンに残して行こうかと、思っているくらいだ。」
パジェットは好きなようにレイバンを追いかけるはずだという。
パジェットは陰謀めいたことが好きらしい。
アンはダーバンに行かないといけないので、秘書を断わった。
サー・ユーステス・ペドラーは、じっとアンを見つめながら、深いため息をついた。
そしてパジェットを呼び出し、役所に行って、ローデシア行きに同行する秘書を探すよう依頼して欲しいと頼んだ。
「かしこまりました。しっかりした秘書を頼んできましょう。」
「パジェットというやつは意地の悪いやつだ。」
サー・ユーステス・ペドラーは、きっと彼を困らせる秘書を連れて来ると思うと言った。
(茶色の服を着た男*その17に続く)
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