2016年04月10日
アガサ・クリスティから(31) (茶色の服を着た男#その10)
(茶色の服を着た男#その10)
アンとスーザンは相談して、社交界の花形スーザンの政治力を最大限に生かす計画を立てた。
まず怪しいと思われる人達を手分けして、目を離さないようにするのだ。
そこでスーザンの社交界での政治力を生かし、ローデシアに行くサー・ユーステス・ペドラー一行に便乗させて貰い、サー・ユーステス・ペドラー及び、かなり怪しい秘書のパジェットを見張る計画であった。
そしてアンが、怪しんでいる1人でもあるレイス大佐もローデシアに行くらしい。
なんとかサー・ユーステス・ペドラーとパジェットとレイス大佐から目を離さないようスーザンに頼んだ。
またアンはダーバン行きのチチェスターの方を付けて行くつもりだった。
またスーザンからキールモーデンキャスル号から降りたら、スーザンが宿泊するホテルに泊まるように言われた。
支払いもスーザンがするという。
同情ではなく、事件解明という冒険?の為にと。
アンが付けていく予定のチチェスターはダーバン行きだが、船の出航まで日にちがあった。
結局、スーザンの優しさに甘えることになった。
明日の早朝にいよいよキールモーデン・キャスル号は テーブル湾(ケープタウンの北岸)に入るのだ。
今夜が航行最後の夜だと思うと、アンは興奮して、すぐにベッドに入る気がしなかった。
甲板に出て、気持ちよく風に吹かれていた時のことである。
突然、黒い影に襲いかかられ、アンは必死で抵抗した。
のどを掴まれていたので窒息しそうになったアンは、女らしく引っ掻いたり、噛み付いたり抵抗していた。
しかし限界に近かった。
襲撃者もまた最後の力を振り絞ろうとした・・・。
その時、もう一つの影が近づいて来て、そして たったの一撃で アンの敵を甲板に叩きのめしてしまった。
ほっとしたアンは、急に気分が悪くなってきて ぶるぶる震えながら、手すりにしがみついていた。
アンを助けてくれた男は、きびきびした動作で アンの方に来た。
「怪我はないか?」
襲撃者に対する威圧もあったのだろう、彼の声はやや乱暴であった。
彼が口を聞く前から、アンは彼が何者であるか知っていた。
それはアンの思う・・・顔に傷跡のあるあの人だったのである。
しかし敵は、一瞬の隙に立ち上がり、甲板を走って逃げて行った。
レイバンは何かののしりながら、あとを追う。
アンも取り残されるのが、嫌で後を追った。
甲板を右舷まで走っていくと、食堂入り口の所に男はへたばっていた。
レイバンがマッチを擦り、男の顔を確かめた。
アン達は驚きの声を上げた。
男はチチェスターではなく、秘書のガイ・パジェットだったのだ。
レイバンは全くあきれた顔つきであった。
「驚いたなぁ、パジェットだったとは?!」
アンは驚いていなかった。
「どうして今度のことに関わり合いになったんだい?どの程度、知っているのかね?」レイバンは尋ねた。
アンはレイバンに「うんと知っているわ、あの・・・ルーカスさん!」
「その名前、どこで聞いたんだ?」
「だって、あなたの名前でしょ?」
と、アンは言った。
「それとも茶色の服を着た男と呼ばれたいの?」
レイバンはその言葉にぎょっとしていた。
アンは、レイバンに「あなたを前に助けてあげた。もっと助けてあげたい。」と味方を強調したが、レイバンは女と組む気はないと言った。
アンとレイバンの話の中で、マーロウの殺人の話も出た。
「俺だってあの女なら殺っていたかも知れない。いまでもときどき、俺はあいつを殺そうと思っていたんだと思う。」
アンは突然、その女にひどく嫉妬した。
・・・何故って、彼はその女をかつて愛していたからだ・・・そうに違いない・・・きっとそうだ・・・そうだったに違いない。
(アガサ・クリスティから32に続く)
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