2016年04月04日
アガサ・クリスティ(27) (茶色の服を来た男#その6)
(茶色の服を来た男#その6)
アンは、ひどく興奮していた。
ひどく不吉な顔の秘書と、どこか 胡散臭いような牧師と、3人で17号室を取り合い、なんとか17号室を確保。
しかし、部屋は悪臭のする薬品”あぎ”をばら撒かれていた。
何故?そこまで、この部屋に執着するのだろう?
何故?追い出そうとしているのだろう?
この部屋を出てはいけないのだ。
【17・1 22 Kilmorden Castle】
地下鉄の事件に遭遇した後、拾った紙片をアンはもう一度、よく見た。
キールモーデン号出航日と思い込んでいたが、17号室、1時、22日ではないのか?と気がついた。
明日22日、1時。
アンは、風邪をひいて鼻が効かないから大丈夫と、女給仕に告げて 部屋にこもった。
その夜は、どう過ごしたか覚えていないが、何があっても対応出来るようにガウンをしっかり着た上、スリッパも履いていた。
夜も更けていき、部屋の外の甲板では、そろそろ皆、自分の部屋に帰る声や足音が聞こえていた。
ふと、1時になっても何も起こらなければ、全財産はたいて何をしにきたのだろうと、胸が初めてドキドキした。
そろそろ夜中の1時だった。
22日の1時。
ベルがなり、1時に間違いなかった。
しかし何も起こらない。
バタバタした音が遠くから聞こえたような気がしていたら、いきなり1人の男が「助けて下さい。」と飛び込んで来た。
アンのとっさの機転で、男はベッドの下に隠れ、アンはトランクを開けて 今にも首筋を洗いそうな格好をした。
すると、追っ手がこの部屋を目指して来る足音が聞こえた。
アンは、ピストルを持った秘書か?
サンドバッグなどの凶器を持った偽牧師か?と想像していた。
しかし彼らではなく、ドアを開けたのは女給仕だった。
「酔っ払いがご迷惑をお掛けしませんでしたか?」
もちろん、アンはうまく乗りきった。
アンは女給士が去った後、酔っ払いに出て行って欲しいと言った。
しかし血が床にあり、本人が気絶しているのが分かった。
やはり匿った男は酔っ払いなどでは無かった。
血の跡があり、肩を刺されていた。
日に焼けた頬に傷のあるグレーの鋭い目をした男だった。
介抱を振り切り、男は立ち去ろうとしたが、血の跡が甲板中につくと押しとどめ、包帯などで処置をした。
肩を刺された。に至るまでの訳を話して欲しいと、アンがうながした。
彼はオンナは喋るに決まっているから言えないと言う。
まるで敵かのように睨みつけて「礼は言わない。借りは覚えておく。この埋め合わせはいつかきっとする。」と立ち去って行った。
アンの胸は、水車を回す水のように音を立てていた・・・。
(アガサ・クリスティから28に続く)
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