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2016年03月24日

アガサ・クリスティから(16) (ナイル殺人事件#その2)


(ナイル殺人事件)


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若く美貌の大富豪リネット・リッジウェイは友人ジャクリーンを裏切り、彼女の婚約者サイモン・ドイルと略奪結婚する。

ジャクリーンは、復讐に燃え、執拗に行く先々に嫌がらせ的な付きまといをする。

新婚旅行のエジプトにおいても、付きまとっていた。

サイモンは、ジャクリーンがついてこれないようにナイル河のクルーズの船旅を予約する。

ジャクリーンは付きまといを諦めてはいなかった。

困り果てたリネットに頼まれたポアロは、ジャクリーンが嫌がらせ的な付きまとい以外、まだ法を冒していない状況なので引き受けずにいた。
しかしジャクリーンには、過去を諦めるようにうながす。
また彼女の将来を憂い、警告をする。
それでもジャクリーンの愛憎の気持ちは強まることはあれど、変わることがなかった。

船旅が始まった。
そこにはジャクリーンの姿がなかった。

ようやくジャクリーンから離れることが出来て、サイモンとリネットは、心底ほっとしていた。

しかし・・・・・。

(以下、前回の続きである)

船のクルーズは最初にルクソールに着いた。

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カルナック神殿、ルクソール神殿、王家の谷と観光は続いた。

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船は北上して、デンデラ神殿に着いた後、サイモンとリネットの頭上に石材が落ちて来た。

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幸い、大丈夫であったが、落石事故なのか?故意なのか?分からぬままであった。

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現場には、ジャクリーン以外の人達がいたのだ。

いづれにせよ、皆それぞれ、何らかの理由でリネットを恨んでいた。またはリネットの存在を心良くは思っていなかった。憎んでいた。

再びジャクリーンが、目の前に現れた時のリネットの驚きは恐怖に近いものだった。
ジャクリーンの執拗な付きまといから解放され、ほっとしていた矢先だったので 反動で、前以上のショックを受けていた。

夜の娯楽室。
サイモンとリネットの夫妻は、他の皆とブリッジを楽しんでいた。
そこに突然、泥酔したジャクリーンが入って来て、露骨にサイモンに絡み始める。

リネットは席を立ち、不愉快な雰囲気に他の者も退席する。

ジャクリーンは失恋の話をしながら、執拗かつ遠回しにサイモンを責めていた。
話しにかこつけなから、絡んでいたのだった。

ジャクリーンはそばにいるコーネリアを話し相手に選び、離さない。
しかし、実際はコーネリアに話しながらも、その目はサイモンから離れなかった。

3人になった時、サイモンに絡んでいたジャクリーンがいきなり小型拳銃を出し、サイモンを撃ってしまった。
足を撃たれたサイモンはハンカチで押さえたが、そのハンカチは真っ赤に染まっていた位であった。

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ジャクリーンは、自分がしてしまった事にすっかり怯え、ヒステリー状態になった。

ファガーソンが物音に気付いて戻り、コーネリアと共にヒステリー状態のジャクリーンを部屋に連れ帰った。

コーネリアはジャクリーンに付き添い、ファガーソンは医者ベスナーを探しに行った。

そして医者を娯楽室に連れて行き、サイモンの診察を見守った。

サイモンの怪我はかなりの重症であった。もちろん、歩くこともままならない。

しかし、サイモンは事件を大ごとにはしたくなかった。
彼女を裏切り、追い詰めた責任を感じていたのだろうか⁈

関係者以外は知らぬままに その夜は過ぎて行った・・・。

後にポアロは、この夜のことをまるで睡眠薬を盛られていたかのよう熟睡していて、サイモンとジャクリーンの間にそんな事件が起きたことは知らなかった。と言った。

翌日、寝室でリネットが殺されているのが発見される。
ダイイングメッセージだろうか?現場には血でJと記されていた。
いつもリネットが身につけていた、邸宅が買える程高価な真珠が盗まれていることも判明する。

状況を見て、レイス大佐はポアロにある種の捜査権を与えた。
ポアロは捜査に乗り出したが、ほぼ全員がリネットを憎んでいたことが分かったのだった。

次にメイドが殺された。
そしてオッタボーンが頭を撃ち抜かれる。
凶器は、メイドがベスナー医者の外科用メス、オッタボーンがペニントン所持の拳銃。
いづれも持ち主は、盗まれたとしている。

犠牲者2人とも、リネットが殺された夜、何かを船上で見たようだった。

メイドはそれで犯人を脅迫してお金をせしめようとしたらしい形跡があった。死体の手に札の破れた紙片を握っていたのだ。

お喋りなオッタボーンもあの夜、眠れなくて部屋を出て、船上にいた。と言っていた・・・。

犯人は彼女達を生かしておくことはなかった・・・。

動機として一番怪しいジャクリーンは
当日夜、リネットの寝室に行くことは出来なかった。
サイモンを小型拳銃で撃った後、錯乱状態で その前後ずっとコーネリアが付き添っていて、一人になることがなかった。
つまり娯楽室で泥酔してサイモンに絡んだ際、リネットは他の客同様、あまりの不愉快さで退席したが、その後、コーネリア、サイモンといる時に小型拳銃でサイモンを撃ち、ヒステリー状態に陥った。
そしてファガーソンとコーネリアに部屋に抱きかかえられて戻り、ずっとコーネリアに付き添われて自室いたのだった。

一方、ジャクリーンに足を撃たれたサイモンも怪我がかなりの重症で動くことは出来なかったのだ。

2人とも リネットが娯楽室を出た後から朝、死体で発見されるまで、別の場所にいたのだ。
ジャクリーンはコーネリアに付き添われ、小型拳銃で撃たれたサイモンは医者も動けない程の重症であると証言した。

一方、いくつかの問題点が挙げられる。

●リネット真珠の件
盗まれる。偽物とすり替えられる。
社交界で同じような事件が、度々起こっていた。
社交界の貴婦人でリネットの友人でもある随分魅力的なジョアナ・サウスウッドの周辺でも よく起こっていた。
(しかし彼女の身の回りからは、真珠はもちろん、他の問題になった宝石類は出てこなかった。)

●川底から投げ捨てたと思われる拳銃がスカーフにくるまれて出てきた。
2発の弾丸が使用された跡があった。
スカーフは事件が起きる少し前に紛失していた大富豪の貴婦人ヴァン・スカイラーのものであった。

●デンデラ神殿での石材落下の件

他にも伏線がいくつか絡み、もつれたまま、ポアロと共に事件は終盤へとなだれ込んでいく。

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*****************

”ナイル殺人事件”は、アガサ・クリスティの推理小説である。
事件が起こり、名探偵ポアロが登場し、各登場人物の人物描写と共にめいめいのアリバイやそれぞれの抱いてる動機が解明されていくのだ。

推理小説として、しごく当たり前な話である。

ただアガサ・クリスティの作品には推理小説でカテゴリーをくくるだけでは作品を表すことが出来ないような時も多々あった。

事件を挟んでの人物や心理描写、人間模様が描き出されている作品も多かった。

ある意味、''ナイル殺人事件”は推理小説の事件を挟んだリネットとサイモンとジャクリーンとの三角関係の中にある友情・裏切り・恋愛・結婚そして嫉妬、復讐・愛憎劇・・・・・。なのだった。
そう確かに愛憎劇なのだ・・・・・。

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あのポアロにポアロ自身の人生の中に愛はなかった。と言わしめている愛=愛とは裏腹の憎悪。
探偵として名声を極めたポアロが持っていなかった恋愛に通ずる直情的な愛。

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リネットはリネットの、
サイモンはサイモンの・・・・・
そして注目すべきは?ジャクリーン。ジャクリーンの愛とは⁈

読者は、この三角関係の誰に自分の感情を重ねて読むのだろう・・・?

◯若く頭脳も明晰で全てを持っている美貌の大富豪リネット。

◯女性を魅了は出来るが何も持たざるもの、そして手に入れられるものがあるならば節操がないサイモン・ドイル。

◯破産し没落した家の娘、大富豪友人に婚約者を取られてしまう不運を圧倒的な独特の個性で乗り切ろうとする女性ジャクリーン。

あるいは他の登場人物に気持ちを重ねるのかも?知れない。
とても控え目に生きているようなコーネリアや対外的には母の付属品の域を出ないロザリー、思想にいかれたファガーソン(実はその社会主義に反する爵位を持った貴族である。大学で思想にかぶれたらしい。)など他の個性の人物に?

リネットとサイモンとジャクリーンの誰がこの不毛の三角関係の愛の勝者なのだろうか?

いや、愛に勝ち負けはないはず。
厳密に言えば、彼ら3人は、”愛”に程遠い直情型の欲望なのかも知れないのだが・・・。
しかし、愛憎劇であるのには間違いない。

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”愛憎劇”

そして、この(愛憎劇)という言葉が”ナイル殺人事件”最大のヒントのような気がするのだった・・・。
(アガサ・クリスティから17に続く)

///余談///
イメージに使用したアネモネの花言葉
全体的な花言葉は、[はかない恋][恋の苦しみ][見捨てられた][見放された]
白いアネモネ[真実・期待・希望]
紫色アネモネ[あなたを信じて待つ]
赤いアネモネ[君を愛す]

アネモネはギリシャ神話の美と愛の女神アフロディーテに愛された美青年アドニスが狩りの途中、猪に殺された時、流れ出た血の後に生まれた花といわれている。













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