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2017年04月06日

アガサ・クリスティから (120) (ミス・マープルと十三の謎*血に染まった敷石【4】)







(ミス・マープルと十三の謎*血に染まった敷石【4】)







三人は海水浴の話をしていたようだった。






夫はデニスという名前らしかった・・・ボートに乗って海岸を回りたい、一見の値打ちがある有名なほら穴が1マイルぐらい先にあるんだと言っていた。






キャロルは、ほら穴は見たいのだが、ボートに乗るのは気が進まないので、絶壁を歩いて行って陸の方から見ようと思う。と言っていた。







結局、三人は・・・キャロルは崖の道を行き、ほら穴で二人と落ち合う約束をし、デニスとマージェリーはボートをこいで行くことになったらしかった。







ジョイスも海水浴の話を聞いて、泳ぎたくなり、その日の午前中は小さな入り江で海水浴をし、簡単な食事をとって、お昼には村に戻って来た。






実際、絵を描く仕事をするのには午後の日差しの方が、ずっと効果的でもあったのだ。
その光が織りなす陰影は何とも言えない素晴らしいものだった・・・。







例の古い旅館、ポルハーウィズ・アームズのスケッチが、画家ジョイスの主眼だった。
斜めに傾いた一条の日の光が旅館の手前の地面に差し掛かり、面白い効果を出していた。







海水浴に行った三人も無事に帰ったようで、真っ赤なのと紺色のと二つの水着がバルコニーに干してあった。






スケッチの片隅に何かしら、気に入らないところが出来たジョイスはしばらくの間、そこにかがみこんで絵をなおしていた。
旅館の1本の柱に一人の漁夫がたたずんでいた・・・まるで悪計をたくらむスペインの船長のような風貌で長い黒い口髭を生やしていた。
その漁夫は、絵を描いているジョイスの元に近づいてきて、しゃべり始めた。






「ラソールってところは面白いところでしてね。」







彼はあの砲撃・・・もとい、村の全滅の話をし始めた。
ポルハーウィズ・アームズ旅館の主人は最後まで頑張ったが、スペイン船長の刀で自分の家の玄関口で切り付けられた・・・その血は敷石の上にほとばしって、百年たってもその血痕を誰もぬぐい取ることは出来なかったと。







とても詳しく話してくれた漁夫は、とても柔らかな声だったが、同時に何か底に脅かすようなものがあるように感じられた・・・残酷な話・・・宗教裁判やスペイン人がしたことの恐ろしさをジョイスに分からせたのだった。






彼がしゃべっている間もジョイスは絵筆を走らせていた。






ところが、ふと気が付くと、彼の話につりこまれたのか?そこには通常あり得ないであろうものまで、描き込んでしまっていた・・・旅館の前の白い敷石の上にはっきりと血痕を描き込んでいたのだ・・・。









(次号に続く)




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