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2017年01月03日

アガサ・クリスティから (93) (ミス・マープルと十三の謎*アスターテの祠ー13)







(ミス・マープルと十三の謎*アスターテの祠ー13)






「そうですな。一つだけは確かにはっきりしていると思うんです。彼が殺された時にはだれも近くにはいなかった。だから、彼を刺殺すことの出来る唯一の人物は彼自身だった。つまり自殺ですな。」

弁護士は自説を展開した。






「だけど、一体全体なぜ自殺する気になんかなったんでしょうね?」
小説家でもあるレイモンドは信じられない面持ちで尋ねた。






弁護士は一度、咳ばらいをした。

彼は言った。
それは理論の問題の繰り返しであると。
理論については今、討論するべきことではないが、超自然的神秘というものを一度も信じなかったことを彼は言った。

彼の推理によると・・・皆が感じていた超自然的神秘というものを除けば、自殺の可能性だけが残るのだった。
リチャードは自分を刺殺した。そして倒れた拍子に、リチャードの腕が泳いで、傷口から短剣をもぎ取り、ずっと遠い茂みに投げてしまった。・・・ちょっとありえそうもないことだが、起こりうることだと思うと。







「はっきりしているとは言いたくないんですが・・・。」とミス・マープルは口をはさんだ。

「随分、妙な話ですっかり面食らいました。」






ミス・マープルはなおも話を続けていた。

でも不思議なことはあるものだと・・・去年のレディ・シャプレイの園遊会でクロック・ゴルフの支度をしていた人が番号の札につまずいて転んで・・・気を失ってしまった・・・5分間ぐらい意識不明であったという。






「わかりました、伯母さん。でもその人は刺殺されたんじゃないんでしょう?」
レイモンドがおだやかに言った。






「そりゃそうですとも。それを言いたいんですよ。もちろん、お気の毒にサー・リチャードが刺殺されたっていうのには、なにかたった一つのやり方があったのでしょうね。でもね、まず第一になぜ倒れたかということがわかったらなあ、と思いますのよ。きっと木の根っこがあったんでしょうね。サー・リチャードはその娘ばかり見ていたんでしょうし、月夜の晩には、よくつまづくものですよ。」






「あなたはサー・リチャードが刺殺されたといううらに、ただ一つのやり方しかないとおっしゃるのですな、ミス・マープル。」







牧師はミス・マープルを不思議なものを見るようにみつめた。







(次号に続く)




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