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2016年12月29日

アガサ・クリスティから (92) (ミス・マープルと十三の謎*アスターテの祠ー12)







(ミス・マープルと十三の謎*アスターテの祠ー12)





レイモンドが口を出した。

「それは投げやりだったかもしれないよ。」






レイモンドの説はこうだった。

月明りはあてにならない。
明るくない月の光の中で・・・ミス・アシュレイは槍のようなものを持っていて、かなり離れた所からその男を突いたのではないか?
そこには集団催眠が働いていた・・・超自然な力でヘイドンが殺されたと思われるようなお膳立てが揃っていた・・・なので、皆はそう感じた・・・。





元警視総監のヘンリー卿は、寄席で見る剣やナイフを使ったすばらしい芸のことを話した。

「玄人の一人の男が木立の影に隠れていて、うまく狙いをつけて、ナイフか剣を投げたということも考えられるでしょうね。
持って回ったこじつけのようですけど、たったひとつの合理的な説明だと思います。
エリオットも誰かが木々の間から自分を見ているような感じをはっきりと持ったと言ったでしょう。

マナリングのお嬢さんが、ミス・アシュレイが短剣を握っていたと言い・・・他の人たちはそれを否定した・・・それは驚くことには当たらないのです。
もし皆さんが私と同じ経験をなされば、同じことを五人が証言した場合でもほとんど信用が出来ない程、五人が五人とも証言が食い違うものだとお分かりになると思います。」






弁護士であるペザリック氏は咳払いをした。

「しかし色々な意見がでましたが、われわれは一つの大切な事実を見逃していますな。」

彼の主張は皆のものとはまた異なっていた。
凶器のことをとても重要視していた・・・ミス・アシュレイが立っていた空き地の中央からはなげやりを投げる芸当なんて出来なかったはずだ。とも弁護士は言った。
またもしも犯人が木に隠れていて短剣を投げたのなら、エリオットが死体であるリチャードを上に向かせたときにまだ傷口のところに剣があったはずであるという推理を展開した。
こじつけがましい理論よりもありのままの事実だけを見るべきだと主張した。







「じゃあ、ありのままの事実からどんなことがお分かりですか?」







「そうですな。一つだけは確かにはっきりしていると思うんです。彼が殺された時にはだれも近くにはいなかった。だから、彼を刺殺すことの出来る唯一の人物は彼自身だった。つまり自殺ですな。」

弁護士は自説を展開した。








(次号に続く)




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