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2016年12月18日

アガサ・クリスティから (89) (ミス・マープルと十三の謎*アスターテの祠ー9)








(ミス・マープルと十三の謎*アスターテの祠ー9)







レディ・マナリングは地面に倒れ込んでいるダイアナ・アシュレイの上に身をかがみこんだ。






失神しているダイアナは何も持っていなかったようで、その足元の地面にも何もなかった・・・レディ・マナリングは娘に本当に見たのかどうか?聞いた・・・母親のレディ・マナリング自身はダイアナが何かを持っていたところは見ていなかったのだ。







シモンズ医師にうながされ、まず、ダイアナ・アシュレイを家に運んだ。
彼女は、気を失ったままであった。
それからまた戻って来て、今度は、サー・リチャードの死体を運んだのだった。





使用人頭に頼んで警官を呼ぶために自転車で約12マイルも走ってもらった。





その後で、エリオット・ヘイドンに牧師は隅の方に呼ばれた。





「ねえ、僕はもう一度、森に行って見ようと思うんですが。凶器をどうしても見つけなければ。」





牧師は凶器があるのかどうか?分からないと言った。




エリオットは牧師の腕をつかんで激しくゆさぶった。

「あなたはまたつまらぬ迷信にとりつかれてしまったもんだね。彼が死んだのも超自然な力によるなどと思ってるんでしょう。でも、僕はもう一度、森に行ってなんとか調べてくる。」







牧師は彼を思いとどまらせようとした。
妙に彼を森に行かせたくはなかった・・・寒気がする奥深い茂みに囲まれた空地・・・また悪いことがおこるような予感がしてならなかったのだ。






しかしエリオットは頑固だった。
内心はびくびくしていたかもしれないが、無理に恐怖心を隠して、どうしてもこの謎をあばいてやると決意をみなぎらせて出て行った。






恐ろしい夜だった。
誰も眠れない。
警官がやって来たが、皆の話すべてに、あからさまな不信感を抱いたようだった。
ミス・アシュレイを尋問したいと言い張りましたが、シモンズ医師が強く反対・・・一度、意識を取り戻した彼女に強い睡眠薬を与えてあったので、翌朝まで彼女が目を覚ますことはなかった。






翌朝7時まで誰もエリオット・ヘイドンのことを考えもしなかった。






急にそのころになって、シモンズ医師が、エリオットがどこに言ったのか?を牧師に尋ねたのだった。
牧師は彼が森に行った経緯を説明をした。






医師は沈んだ顔をいっそう曇らせた。
「よせばよかったのに。そりゃ・・・無鉄砲だな。」






牧師は、何か悪いことが起こると考えた訳ではないのかどうか?医師に尋ねた。






シモンズ医師は牧師に二人で森にエリオットを見に行った方が良いと説得し始めた。






結局、医師の説得に負けた牧師は、全身の勇気をふるい起して、再び、あの縁起の悪い森に二人で連れ立った。






二人は二度、エリオットを呼んだが、二度ともむなしくこだまが戻ってくるばかりだった。






しばらくして、あの切り開いた例の場所に出て来た。






そこはまだ朝早いうすい光に青ざめたような雰囲気がただよい、幽霊でもでそうな感じだった。






その時、シモンズは牧師の腕をぐっとつかんだ。
牧師はかすれた叫び声をあげた。






昨夜は月の光で、草の上にうつぶせに横たわっていた男の死体を見たのだった。
おお、また今は朝の光の中で同じ光景に出くわしたのだ・・・医師と牧師はふるえあがった。






エリオット・ヘイドンがいとこのリチャード・ヘイドンと全く同じ場所に横たわっていたのだ。







(次号に続く)




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