2018年12月04日
膝痛にコンドロイチンやグルコサミンはどのくらい効くのか?
実費と保険診療で,1〜3割
薬のほうが効くし,併用禁忌もはっきりするから,鎮痛剤のほうに軍配が上がると思うけど・・・
膝痛にコンドロイチンやグルコサミンはどのくらい効くのか?【論文で探る服薬指導のエビデンス】
公開日:2018/10/25 企画・制作 ケアネット
世の中に数多ある臨床論文のなかには、
日々薬局で行っている服薬指導に役立つエビデンスが
隠れています。
このコラムでは、山崎 友樹氏が薬局業務に役立つ臨床論文を
ピックアップして根拠がよくわからない指導内容を
裏打ちしてくれるエビデンス、
服薬指導に厚みを与えるエビデンスなどを解説します。
コンドロイチンとグルコサミンは関節痛などで服用される、
とてもポピュラーな成分です。
コンドロイチンは、軟骨、結合組織、粘液に分布する
ムコ多糖の一種で、骨の形成を助けるといわれており、
グルコサミンは動物の皮膚や軟骨、甲骨類の殻に含まれる
アミノ糖で、
関節の動きを滑らかにしたり、
関節の痛みを改善したりするといわれています1)。
両成分を含有する市販薬やサプリメントは多く、
説明を求められる機会も多いのではないでしょうか。
今回は、これらの効果を検討した文献をいくつか紹介しましょう。
まずは、痛みを伴う変形性膝関節症患者への
グルコサミンとコンドロイチンの効果を検証した
有名な論文のGlucosamine/chondroitin Arthritis Intervention Trial (GAIT)です2) 。
平均年齢59歳の症候性変形性膝関節症患者1,583例
(うち女性64%)を、
(1)グルコサミン1,500mg/日(500mg/回を1日3回)、
(2)コンドロイチン1,200mg/日(400mg/回を1日3回)、
(3)グルコサミン+コンドロイチン併用、
(4)セレコキシブ200mg/日、
(5)プラセボ
の5群にランダムに割り付け、24週間観察しました。
各群、有害事象や効果の実感がなかったなどの理由により
20%前後の患者が脱落していますが、
intention-to-treat解析はされています。
プライマリアウトカムは24週時点で膝痛が20%減少したかどうかで、結果は下表のとおりです。
プラセボ群と比較すると、
いずれの群も痛みがやや減少する傾向にありますが、
有意差が出ているのはセレコキシブ群(鎮痛剤)のみでした。
プラセボ群においてもかなり痛みが減少していることが特徴的で、成分を問わず何らかの製品を服用している方はある程度の効果を実感しているのではと推察されます。
続いて、2007年にBMJ Clinical Evidence誌で発表された論文を紹介します3)。
BMJ Clinical Evidence誌は臨床研究の結果を統合して種々の治療法を評価し掲載している媒体で、
該当トピックの出版から2年経つとMEDLINEに無料で公開されるので有用な情報源となりえます。
この論文における変形性膝関節症の各種治療法(非手術)の効果を整理したのが下表です。
コンドロイチンとグルコサミンは、
変形性膝関節症に対する効果は不明ないし
わずかで、
とくにグルコサミンは疼痛軽減にプラセボ以上の効果が期待できない可能性が示唆されています。
なお、Beneficialに分類される運動療法としては
「脚上げ体操」や「横上げ体操」などの
太ももの筋肉を鍛える体操が知られているので、
覚えておくと患者指導で役立つと思います。
可もなく不可もないので継続もアリだが、相互作用には注意が必要
ここまであまり芳しい結果ではありませんでしたが、
最近はコンドロイチンが有用であったという報告もあり、
2015年にコクランよりコンドロイチンとプラセボまたは他の治療法を比較検討したランダム化比較試験43件を評価したシステマティックレビューが発表されています4)。
含まれた研究の大部分は変形性膝関節症患者を対象としたもので、先に紹介したGAIT試験も含まれています。
コンドロイチン800mg/日以上を6ヵ月服用した時点における痛みの程度で有意差が出ていて、
0〜100ポイントの痛みスケールで、
コンドロイチン群が18ポイント、
プラセボ群は28ポイントでしたので10ポイント低下しています。
膝の痛みが20%以上改善した人は
コンドロイチン群では100人当たり53人、
プラセボ群では100人当たり47人で、
その差は6名(6%)です。
また、画像診断により、
2年後の最小関節裂隙幅の減少は、
コンドロイチン群(0.12mm)が
プラセボ群(0.30mm)に比べて0.18mm少なく良好でした。
Forest plotを見てもコンドロイチンまたはコンドロイチン+グルコサミンのほうがやや良しとする研究が多く、
目立った有害事象はありませんでした。
2017年に出た試験では、
コンドロイチン800mg/日の継続が
セレコキシブと同等の有用性であった
という結果も出ています5)。
経済面との兼ね合いもありますが、
痛みが改善している方はそのまま続けてもよい場合も
あるのではないでしょうか。
ただし、薬物相互作用に注意が必要で、
コンドロイチンは抗凝固薬のヘパリンと
化学構造が似ているため、
抗凝固作用を増強するのではないかといわれています。
ワルファリンとグルコサミンの併用によりINRが上昇した
(つまり出血傾向が強く出た)という
20例の報告もあります6) 。
メリットがそれほど大きくないことを考えれば、
ワルファリン服用中は
コンドロイチンやグルコサミンの服用を避けるほうが
無難だと思われます。
参考文献
1)国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所ホームページ 「健康食品」の安全性・有効性情報 「グルコサミン」「コンドロイチン硫酸」
2)Clegg, et al. N Engl J Med. 2006;354:795-808.
3)Scott D, et al. BMJ Clin Evid. 2007 Sep 1. pii:1121.
4)Singh JA, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015;1:CD005614.
5)Reginster JY, et al. Ann Rheum Dis. 2017;76:1537-1543.
6)Knudsen JF, et al. Pharmacotherapy. 2008;28:540-548.
ページTOPへ
山崎 友樹 ( やまざき ゆうき ) 氏
株式会社カケハシ
[略歴]
水野薬局における勤務を経て、2017年に(株)カケハシへ参画。 同社では電子薬歴システムに搭載する薬剤関連コンテンツのレビューや、薬局向けのカスタマーサクセス業務に従事。 所属勉強会は、EBM-Tokyoなど。
薬のほうが効くし,併用禁忌もはっきりするから,鎮痛剤のほうに軍配が上がると思うけど・・・
膝痛にコンドロイチンやグルコサミンはどのくらい効くのか?【論文で探る服薬指導のエビデンス】
公開日:2018/10/25 企画・制作 ケアネット
世の中に数多ある臨床論文のなかには、
日々薬局で行っている服薬指導に役立つエビデンスが
隠れています。
このコラムでは、山崎 友樹氏が薬局業務に役立つ臨床論文を
ピックアップして根拠がよくわからない指導内容を
裏打ちしてくれるエビデンス、
服薬指導に厚みを与えるエビデンスなどを解説します。
コンドロイチンとグルコサミンは関節痛などで服用される、
とてもポピュラーな成分です。
コンドロイチンは、軟骨、結合組織、粘液に分布する
ムコ多糖の一種で、骨の形成を助けるといわれており、
グルコサミンは動物の皮膚や軟骨、甲骨類の殻に含まれる
アミノ糖で、
関節の動きを滑らかにしたり、
関節の痛みを改善したりするといわれています1)。
両成分を含有する市販薬やサプリメントは多く、
説明を求められる機会も多いのではないでしょうか。
今回は、これらの効果を検討した文献をいくつか紹介しましょう。
まずは、痛みを伴う変形性膝関節症患者への
グルコサミンとコンドロイチンの効果を検証した
有名な論文のGlucosamine/chondroitin Arthritis Intervention Trial (GAIT)です2) 。
平均年齢59歳の症候性変形性膝関節症患者1,583例
(うち女性64%)を、
(1)グルコサミン1,500mg/日(500mg/回を1日3回)、
(2)コンドロイチン1,200mg/日(400mg/回を1日3回)、
(3)グルコサミン+コンドロイチン併用、
(4)セレコキシブ200mg/日、
(5)プラセボ
の5群にランダムに割り付け、24週間観察しました。
各群、有害事象や効果の実感がなかったなどの理由により
20%前後の患者が脱落していますが、
intention-to-treat解析はされています。
プライマリアウトカムは24週時点で膝痛が20%減少したかどうかで、結果は下表のとおりです。
プラセボ群と比較すると、
いずれの群も痛みがやや減少する傾向にありますが、
有意差が出ているのはセレコキシブ群(鎮痛剤)のみでした。
プラセボ群においてもかなり痛みが減少していることが特徴的で、成分を問わず何らかの製品を服用している方はある程度の効果を実感しているのではと推察されます。
続いて、2007年にBMJ Clinical Evidence誌で発表された論文を紹介します3)。
BMJ Clinical Evidence誌は臨床研究の結果を統合して種々の治療法を評価し掲載している媒体で、
該当トピックの出版から2年経つとMEDLINEに無料で公開されるので有用な情報源となりえます。
この論文における変形性膝関節症の各種治療法(非手術)の効果を整理したのが下表です。
コンドロイチンとグルコサミンは、
変形性膝関節症に対する効果は不明ないし
わずかで、
とくにグルコサミンは疼痛軽減にプラセボ以上の効果が期待できない可能性が示唆されています。
なお、Beneficialに分類される運動療法としては
「脚上げ体操」や「横上げ体操」などの
太ももの筋肉を鍛える体操が知られているので、
覚えておくと患者指導で役立つと思います。
可もなく不可もないので継続もアリだが、相互作用には注意が必要
ここまであまり芳しい結果ではありませんでしたが、
最近はコンドロイチンが有用であったという報告もあり、
2015年にコクランよりコンドロイチンとプラセボまたは他の治療法を比較検討したランダム化比較試験43件を評価したシステマティックレビューが発表されています4)。
含まれた研究の大部分は変形性膝関節症患者を対象としたもので、先に紹介したGAIT試験も含まれています。
コンドロイチン800mg/日以上を6ヵ月服用した時点における痛みの程度で有意差が出ていて、
0〜100ポイントの痛みスケールで、
コンドロイチン群が18ポイント、
プラセボ群は28ポイントでしたので10ポイント低下しています。
膝の痛みが20%以上改善した人は
コンドロイチン群では100人当たり53人、
プラセボ群では100人当たり47人で、
その差は6名(6%)です。
また、画像診断により、
2年後の最小関節裂隙幅の減少は、
コンドロイチン群(0.12mm)が
プラセボ群(0.30mm)に比べて0.18mm少なく良好でした。
Forest plotを見てもコンドロイチンまたはコンドロイチン+グルコサミンのほうがやや良しとする研究が多く、
目立った有害事象はありませんでした。
2017年に出た試験では、
コンドロイチン800mg/日の継続が
セレコキシブと同等の有用性であった
という結果も出ています5)。
経済面との兼ね合いもありますが、
痛みが改善している方はそのまま続けてもよい場合も
あるのではないでしょうか。
ただし、薬物相互作用に注意が必要で、
コンドロイチンは抗凝固薬のヘパリンと
化学構造が似ているため、
抗凝固作用を増強するのではないかといわれています。
ワルファリンとグルコサミンの併用によりINRが上昇した
(つまり出血傾向が強く出た)という
20例の報告もあります6) 。
メリットがそれほど大きくないことを考えれば、
ワルファリン服用中は
コンドロイチンやグルコサミンの服用を避けるほうが
無難だと思われます。
参考文献
1)国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所ホームページ 「健康食品」の安全性・有効性情報 「グルコサミン」「コンドロイチン硫酸」
2)Clegg, et al. N Engl J Med. 2006;354:795-808.
3)Scott D, et al. BMJ Clin Evid. 2007 Sep 1. pii:1121.
4)Singh JA, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015;1:CD005614.
5)Reginster JY, et al. Ann Rheum Dis. 2017;76:1537-1543.
6)Knudsen JF, et al. Pharmacotherapy. 2008;28:540-548.
ページTOPへ
山崎 友樹 ( やまざき ゆうき ) 氏
株式会社カケハシ
[略歴]
水野薬局における勤務を経て、2017年に(株)カケハシへ参画。 同社では電子薬歴システムに搭載する薬剤関連コンテンツのレビューや、薬局向けのカスタマーサクセス業務に従事。 所属勉強会は、EBM-Tokyoなど。
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/8355069
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック