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2019年07月18日

お客さんの言葉に苦労が報われたと思った件

非対面式のラブホテルで働いていると
基本的に利用客と顔をあわすことはありません。

ウェルカムドリンクやフードを運んでる時に
偶然、通路を歩く利用客に鉢合わせして
すれ違う程度です。

それもごくまれで以前、複数のフードを運ぶために
食事やドリンクを乗せたワゴンを押して
通路を歩いていたらデリヘル嬢と
その男性客らしき利用客に少し姿を見られた時、

遠くから女性が
「初めて(ホテル従業員を)見た」と
言ってた位ですから

非対面式ラブホテルの従業員というものは
ゲームのレアキャラ並みに
遭遇率が低い物なのかも知れません。
120991s.jpg
そんな中、いつものように
フロント業務に当たっていると

深夜の三時過ぎくらいに
男女の二人連れが客室に入っていくのが
防犯カメラ越しに見えました。

それ自体はごくありふれた
ラブホテルの日常ですから
全く問題ありません。

男性二人連れだったり、
利用客が18歳未満の場合は
ラブホテルの規約的にアウトですから

客室に入るのをフロントが止めないといけませんが
どう見ても成人済みの男女なら
ウェルカム。ご利用ありがとうございます。

といった感じなのですが、利用客が
客室に入ってすぐフロントの電話が鳴りました。

156108s.jpg

時刻は深夜三時すぎ
一般の利用客は皆様
ベッドで熟睡しているであろう時間帯です。

電子表示された部屋番号を見れば案の定、
ついさっき利用客が入ったばかりの客室番号です。

これはさっき客室に入った男女が
ウェルカムドリンクをオーダーするに違いない。
そう思いながら電話の受話器を取りました。

「はい。フロントです」
「料理、注文したいんですけど。いい?」
「はい。大丈夫です。ご注文どうぞ」
「カレーとラーメンと和定食と洋定食……」
「えっ」

私は慌てました。深夜三時すぎ
食事のオーダーがあるのは
分かりますが二人分にしては明らかに多い分量……。
と言うか四人前をオーダーされて戸惑います

ラブホテルで食事の注文がある場合、
たいていは一室につき二人前です。

二人で一部屋に入室してるのだから
それはごく自然な流れと言えます。


icon_141031_64.png


たまに大食漢の利用客が一回、
食事を注文して食べた後、時間を置いて
さらにもう一度オーダーを入れるということもありますが

大食い大会ではないですし
ラブホテルという場所の特性を考えても
一度に大量の食事をする利用客はまずいません。

「全部いっぺんにですか?」

暗にとりあえずカレーとラーメンを注文するのは分かるけど
どうぜいっぺんにそんなに食べきれないんだから
勿体ないし、こっちも一度に四人前を作るのは大変なんだ。
二人前にしてくれ!

内心、祈るような気持ちで尋ねると

「すっっっごくお腹すいてるから!」
「調理時間が●●分ほどかかりますが……」
「大丈夫〜!」
「分かりました……」

私の祈りは超絶空腹という利用客に通じず
平穏な深夜三時のフロントは一転、
四人前のオーダーが通り
慌ただしいキッチンへと移りました。

icon_148121_64.png

ワンオペフロントの哀しい所で
食事のオーダーが通るとフロントが
一人で作らねばならないのです。
私は大慌てで食事を作り始めました。

と言ってもラブホテルのフロントが作れる食事は
基本的に誰でも短時間で作れるようマニュアル化されています。

通ったオーダーも難しいメニューでは無かった為
ラーメンとカレーは比較的、短時間で出来上がりました。

ただ、次の和定食、洋定食が出来上がるまで
ラーメンとカレーを置いておくと
麺が伸びるし、せっかくの熱々カレーが冷めてしまう!

というわけで先に出来上がった二品を客室に持っていき、
あとの二品も出来上がり次第、
客室に持っていきました。
18621-101x101.jpg
深夜三時に思いがけないオーダーが入り
ぐったりとフロントの椅子に座り込んだ時、
再び先ほど四人分の食事を運んだ客室から
電話がかかってきました。

まさか食事に何らかの
ミスがあってクレームか!?
緊張しながら受話器を取りました。

「フロントでございます」
「食事なんだけど……」
「はい」
「すっごく美味しい」
「え?」
「ぜんぶ美味しい……」
「あ……。ありがとうございます……!」

今まで利用客から、
ねぎらいの言葉をかけられるということが
ほぼ無かった私は嬉しくて感激していると
電話をガチャ切りされました。

薄々、気づいていましたが
この利用客、かなり泥酔していた模様で
もともと呂律が怪しかったんですよね……。

とはいえ、急に四人前の食事を
深夜に注文されるという無茶振りや
疲労が蓄積したフロントの身体も

お客様の何気ない一言で
報われたと感じた瞬間でありました。


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