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2023年04月06日
シンSSM
・新SSMはミサイル間通信能力や自立型の脅威回避能力を持っているかもしれない
・エンジンのターボファン化により長射程が期待され、また様々な派生型も構想されている模様
ここ数日、アクセス数が通常の数倍になっていたので、何があったのかと思っていたら、またP-1関連記事がTwitterにリンクされていたようですね。相変わらずP-1ネタは人気でありますな(^^)
ところでATRA(防衛装備庁)からプロモーションビデオが公開されています。その中に開発中の新SSMの映像もありました。
ATLA R&D Projects Progress in FY2022(防衛装備庁の研究開発事業)
映像は陸海空のプラットフォームから発射された新SSMが回避機動をしながら目標へ命中する映像となっています。以前は、研究のみで開発へは移行しないとか囁かれていましたから、社運を賭けていると言われている某社さんにとっては喜ばしいことじゃないんでしょうか。
以前公開されていた画像とは随分外観が異なることと、相手の近接防御火器を避けるために回避行動を取るのが目を引きます。
ただ、従来のSSMが目標手前で機動しないのかと言えばそんなこともなく、例えば88式地対艦誘導弾(SSM-1)の制式要綱にはこんな文言が出てきます。
引用元: 制式要綱 88式地対艦誘導弾(B)
この表の中に「揺動開始距離」という文言が確認できます。世間一般に揺動とは、ゆれ動くこと 又はゆり動かすことを意味すると思いますので、SSM-1はこのような機動を事前に設定できることになります。
88式地対艦誘導弾(SSM-1)試験映像
こちらの映像の0:29辺りにミサイルが変針する映像が確認できます。これが揺動なのか、ウェイポイント通過後の変針なのかは良く分かりませんが、恐らくこんな感じなのでしょう。
(それにしても懐かしい映像。ミサイルが掠ったブイ型標的のポールは暫く立川で野ざらしになってました。当時はレーダーリフレクターではなく、ルネベルグレンズを使っていたのですね。)
まぁ実物でもなくCGで判断するのもなんですけど、この新SSMの映像で関心させられることがあります。それはそれぞれ陸海空の別々のプラットフォームから殆ど同時に発射されたミサイルが、狭い海域にあるそれぞれ別々の目標へ命中していることです。ご存じの通りミサイルは直近の目標か、最もシグネチャが大きな目標へと向かいます。
一度に多数発射されるSSM-1では確率論を応用した精緻なアルゴリズムを用いてミサイルが同じ目標へ集中するのを防いでいると伝えられますが、新SSMではどの様な方法を用いてるのでしょうか。恐らくですが、ミサイル間通信能力を持っているんじゃないかと推察します。
また、映像中の回避行動は単なる機動ではなく、相手の防御火器を避けるように機動しているように見えることから、ミサイル側で脅威を認識して最適な回避機動をするようになっていると考えられます。となると、ミサイル側のセンサーでどのような防御火器を認識して判断しているのでしょう。短距離弾道弾の例ですが、最近のミサイルには相手を欺瞞するため、デコイを搭載したものすらあります。
エンジンの試作が始まっていると映像の中で述べられていますが、これは開発中の小型ターボファンエンジンKJ300のことでしょう。原型であるKJ14は標的機である空対空用小型標的J/AQM-2に使われていますが、元々はMPMS(ATM-4)のジェットエンジン化を目論んで開発されたエンジンです。むしろ、J/AQM-2はこのエンジンの有効活用の為に世に出たものといえます。ターボファン化されたということは、それなりの長射程が期待できます。
新SSMは目標観測弾を始めとして、様々な派生型が構想されているようですから期待したいですね。
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2023年03月10日
首振りミサイル
・指向性弾頭でも従来型の近接爆破での弾片散布は無駄が多い
・散布される破片や子弾を目標の方向に直に向けることが出来れば、効果は大きい
3月に入って暖かくなってきましたが、花粉の量も尋常ではないようで、花粉症で塗炭の苦しみです(T_T)
自分の場合は目と皮膚の痒み、鼻づまり、頭痛もちょっと来ます。
さて米国空軍研究所が面白いものを開発しているようです。正直、この発想はありませんでした。
AFRL Missile Utility Transformation via Articulated Nose Technology MUTANT
巡航ミサイルや高速の対地ミサイルなどの目標に対しては、近接起爆による弾殻の弾片により破壊する形になるのですが、ただ爆発するだけだと弾片の大きさが不揃いになったりして散布密度にムラが出来てしまいます。そこで予め弾殻に弾子重量・形状を調整された格子刻みを入れて均一化を諮ったり、タングステン等の硬くて重い金属で予め加工された弾子を入れたりします。所謂、調整破片弾です。
他に弾頭に複数の信管を備え、起爆する際に目標と反対側の象限の信管を起爆させ、爆発威力に指向性を持たせる指向性弾頭も存在します。
An AIM-120A advanced medium range air-to-air missile warhead detonates during a test
画像引用元: Public Domain Media The U.S. National Archives
https://nara.getarchive.net/media/an-aim-120a-advanced-medium-range-air-to-air-missile-warhead-detonates-during-1aa428
中距離空対空誘導弾AAM-4の外観
画像引用元: 日本語版ウィキペディアのShiftさん - 原版の投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=107674464による
上の写真のAAM-4では指向性弾頭と近接信管として4象限アクティブ・レーダー近接信管を備えています。写真では中央翼の前側に黒い長方形のものが見えますが、これがレーダーの窓です。
General Atomics - Blitzer Railgun Land-Based Mobile Combat Simulation [360p]
これはレールガンでの運用構想の映像ですが、散布された子弾が目標を破壊する様子が良く分かります。
ただ、このように破片や子弾をミサイルの同心円状に散布する従来の方法ではその大部分が無駄になることも良く分かると思います。そこで、散布される破片や子弾を目標の方向に直に向けることが出来れば、その効果を従来より大幅に高めることが出来ます。
このAFRL Missileの映像の中で、思わず笑ってしまったシーンがありました(w
画像引用元: https://www.youtube.com/watch?v=J81iY6APmtQ&t=232s より抜粋して加工
これは地上滑走試験の様子ですが(タマはHellfireのようです)、発射前に赤丸内のコネクターがミサイルから射出されて外れています(3:52辺り)。レール型ランチャーから発射されるミサイルの場合、接続されているアンビリカルコネクターが上手く外れるようにしないといけません。
画像引用元: David Monniaux - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2272437による
上の写真のAIM-9のアンビリカルケーブルは180度半周して接続されて、発射時に前方へ抜けるようになっています。
また、AGM-65の場合は尾部にアンビリカルコネクターがあり、これも発射時に前方へ抜けます。
画像引用元: By Varnav - Own work, CC0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=103517331
ただ、ミサイルによっては弾体の横にコネクターがあるものがあります。例えば空対空誘導弾であるAIM-7です。ちなみに写真内で接続されている白いケーブルはMISSILE MOTOR FIREWIREです。
画像引用元: By Tech. Sgt. Ben Bloker - http://www.af.mil/shared/media/photodb/photos/060509-F-2295B-025.jpg, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=780008
このようにミサイルの弾体のサイドにコネクターがある場合、レール式で発射する場合は頭を捻るわけです(w
なので、発射前にぴょんと外れてくれる動作を見た時はすごく感心しました。
では、例えばF-2でAIM-7やAAM-4をレール式ランチャーから発射する際は、ミサイルと繋がっていたアンビリカルケーブルはどうなるのでしょう。答えはご想像の通りです(w
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2023年03月05日
AIM-9X-2 vs AAM-5B
・特にミサイルへのdigital ignitionの導入は注目に値する
・航空事業部は赤外線誘導空対空ミサイルを対ステルス機用として重要だと考えている
3月となり、大分暖かくなってきたように感じます。
暫く、PCから遠ざかっておりました。
気球騒動の際に使用されたこともあって、俄かに赤外線画像誘導空対空ミサイルであるAIM-9Xに注目が集まっています。
画像引用元: Public Domain US Navy - https://acquisition.navy.mil/content/view/full/4705
個人的にAIM-9X-2は世界中で最も先進的なミサイルの一つだと思っています。
製造メーカーのウェブサイトで最新型のBlock IIの記述を見てみます。
Block II variant
The AIM-9X Block II missile adds a redesigned fuze and a digital ignition safety device to improve handling and in-flight safety. It's equipped with updated electronics, including a lock-on-after-launch capability using a new weapon datalink to support beyond visual range engagements.
引用元: https://www.raytheonmissilesanddefense.com/what-we-do/naval-warfare/advanced-strike-weapons/aim-9x-sidewinder-missile
この中で注目されるワードはdigital ignitionとnew weapon datalinkです。
通常、AIM-9のような短距離空対空ミサイルの発射は、ランチャーよりミサイルのロケットモーターへ大電力を流して発火させます。そのため、短距離空対空ミサイルのランチャーにはパワーサプライと呼ばれる専用機構があります。ランチャーからはストライカーポイントと呼ばれる突起状の電極がバネの力で2つ飛び出しており、ミサイル側には柔らかい金属で出来た受電用の電極が2つあってそこに刺さるようになっています(この電極が刺さる圧力には厳格な規定があり、専用のテストセットも存在します)。
ちょっと見難いのですが、拡大していただくとミサイルの前方フック(赤丸)内に円形の電極が2つあることが確認できると思います。
画像引用元: David Monniaux - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2272437による
パワーサプライがどんなものかと言うと、こんな感じのモノです。
https://aerospacellc.com/wp-content/uploads/2020/01/F-16-AIM-9-CAPABILITIES-25JUNE2019.pdf
なお、パワーサプライは高い信頼性を要求されることから、ランチャーの構成品の中でも非常に高価なシロモノであります。そしてこんなこともありました。
百里基地F-15のミサイル、スクランブル直前に暴発!! (1986年9月4日)
http://komatsuairfield.web.fc2.com/page152.html
この事故の原因は表向きパワーサプライとされていますね(棒)
話を戻してミサイル側にdigital ignitionを備えるということはミサイル側でロケットモーターへの点火が行える=パワーサプライが要らなくなるということになります。
こうなるとミサイルランチャー側は大幅な簡素(軽量)化とコストダウン及び安全性の向上、メンテナンスコストの低減が図れることになります。大雑把に言えば、ランチャーにはミサイルのレールとレール上のロック解除機構(ソレノイド)、ミサイルへ接続するデジタルデータバスさえあれば良いことになります。
これは武器屋さんにとっては垂涎のアイテムでしょう。
さらにこのミサイルにはweapon datalinkを搭載するとされています。日本語風に言うと指令受信装置ですね。所謂、UTDC(Up-To-Data-Command)を実現するものです。これにより、目標の大体の位置に発射しておいて、途中コースの変更の必要が生じたらコマンド指令によりコースを修正することが可能になります(指令自爆も可能かもしれません)。これにより、多目標同時発射や射程の延伸、オフボアサイト能力の向上が期待できます。
AIM-9Xで自分が評価するのは、開発時に低高度目標への射撃試験をちゃんと行っていることです。以前にも述べましたが、赤外線画像誘導で地表を這うように進む超低高度目標を狙うことは、レーダー誘導に比べても技術的に高度なものが要求されます。それは地上には様々な赤外線ノイズ源が多く、その中で真目標を見分けて追尾することは困難を極めるからです。
AIM-9x SIDEWINDER Trial
このビデオではフレアを撒きながら超低空を飛行する標的機(QF-4)を上空から見事に撃墜しています。
翻って我らがAAM-5Bです。
画像引用元: Hunini - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=44536075による
上が従来のAAM-5、下が改良型のAAM-5B。AAM-5Bにはシーカー部に冷却ガスのゲージが無いことが分かる。
実は微力ながら、管理人はAAM-5の開発のお手伝いをしております。なので、思い出深い装備の一つでもあります。また、AAM-5Bの開発の主任はかつて岐阜の誘導武器開発実験隊等でお世話になった方です。
さて、開発元である技術研究本部のGM2室のご担当者から以下のような話を聞いたことがあります。
「レーダーが全く使えないような強度な電子戦の下では、赤外線誘導空対空ミサイルが主兵装になる。」
「ステルス機同士の戦いでは、お互い近づくまで相手を発見出来ない。よって赤外線誘導空対空ミサイルが重要だ。」
以上の話から、航空事業部が赤外線誘導空対空ミサイルを重要だと考えていたことがお分かりかと思います。
また、ご担当者から以下のようなお話もお聞きしました。
「AAM-5の最大の売りはLOAL(発射後ロックオン=空中ロックオン)が出来ることだ。」
LOALの最大のメリットは射程の延伸です。上記のこともあり航空事業部は赤外線誘導対空ミサイルの射程の延伸に重きを置いていたと感じられます。これは初期案には翼の大きさをもっと大きくした案が存在していたこともそれを裏付けると思います(機体側のランチャーアダプターの強度上の問題で断念されました)。
ただ、AAM-5ではAIM-9のような超低高度目標に対する実射試験は行われていません(訓練でやりたいという話はありましたが。。)。
いづれにしても、AAM-5BでもAIM-9X-2ではちょっと差をつけられてしまいました。F-35やF-15能力向上型へのインテグレーションは行われないようですし、AIM-9XやIRIS-T、ASRAAMのようにSAM化も行われる様子もないので、AAM-5はこのままフェードアウトしていくかもしれません。
ただ、F-15在来機へAAM-5Bの搭載は、在来機の手っ取り早い能力向上策として評価したいと思います。
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2023年02月05日
あのバルーンを撃て
・気球をレーダーで捉えるのは難しい
・出来るPはより確実な状態(条件)を作ってミサイルを発射する
珍しくナウでホットな話題を掘り下げます(^^)
U.S. downs suspected spy balloon
某国のものとみられるバルーンを、大西洋上でF-22がAIM-9Xで撃墜したとされるシーンです。このシーンから思うところを述べてみます。
まず、F-22はかなり近距離でミサイルを撃っています。これはミサイルのロケットモーターの燃焼が終わってから余り間を置かずに命中しているところからも分かります。意外に思われるかもしれませんが、一般的にミサイルの燃焼時間はそれほど長くはありません。(参考例: 81式短SAM-1C 5.5秒)
では何故近距離で撃ったかというと以下の理由が考えられます。
(追記)
こちらの記事では5nm(約9km)先から発射したようです。映像をストップウォッチで測ってみましたが、発射から命中まで6.5秒程度、モーターの燃焼時間は3-4秒程度なので、距離的にはそんなもんだろうと思います。
1. 確実を期すため相手を目視できる距離まで接近した。
2. LOBL(発射前ロックオン)で発射した。
3. 上記に関連して相手がコールドガスを使ったバルーンだったためロックオンレンジが短かった。
まぁ1は兎も角として、2と3について説明します。
LOBLで発射するのは確実を期すためです。その際、シーカーポジションが目標に向いているかどうかをHUD上で確認します。なお、一般的に赤外線誘導の空対空ミサイルでは、特に周囲にノイズ源がある場合などの際は意図する目標へのロックオンを確認するため、UNCAGE(レーダーとの連動を解除する)してシーカーをセルフ・トラックさせるべきとされています。これによりHUD上でシーカーポジションが意図した目標へ向いているかどうかを確認出来ます。これでレーダーとシーカーのロックオンが確認出来ればFCSからシュートキューというお墨付きが得られます。
SRMモードの画像が無かったので、以下の写真で雰囲気だけ味わってください。F-18がGunモードでF-22を捉えている様子です。Pipperはオンターゲットしていますが、タマの残弾0なのでGunは使えない状態です。IN LARはLaunch Acceptability Regionの略で、既に選択した兵器の有効範囲内にあることを意味しています。
引用元: By e2a2j - US Navy, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4280111
3のロックオンレンジが短かった件については、相手が赤外線をガンガン発生するジェット機ではなくコールドガスを使ったバルーンであるため背景との赤外線コントラスト差が少なく、シーカーがロックオンし難かったと考えられます。ただ、目標の高度が高いため背景の温度は低く、また雲のようなノイズ源も少ないこと、昼間の為に太陽の輻射熱によりバルーンの赤外線を捉えやすかった面もあります。
あと、もう一つ気にかかるのは機上のレーダーでこのバルーンを捉える件です。バルーンですから高速で移動している訳でもなく、通常のパルスドップラーモードではノイズとして処理されてしまいます。従って目標をを捉えるためにはパルスモードでサーチしたのでしょう。パルスモードの場合は目標をルックアップで見る必要がありますが(クラッター防止のため)、この場合相手は高空ですからこの辺りは問題ありません。
では、管理人が考えた今回の迎撃手順です。
1. データリンク又は管制官の誘導により目標へ向かう。
2. 目標より高度を下げ、レーダーをパルスモードで目標を捜索する。
3. 目標を捉えた後に目視で確認する。
4. 司令部より撃墜の許可を得て、Master ArmをオンにしてSRMモードにてロックオンさせる。
5. ミサイルを機外へ出し、シーカーをアンケージしてセルフトラックでシーカーポジションを目標へ向けさせる。
6. ミサイルが目標を捉え、チャーピングトーンが鳴り出す。
7. HUD上のシーカーポジションから確実にシーカーが目標を捉えていることを確認する。
8. シュートキューが出ていれば発射する。
なお、出来るPはより確実な状態(条件)を作ってミサイルを発射しようとします。
しかし、偵察のため相手国へバルーンを飛ばすってのはどうなんでしょうね。
<追記>
鮮明な映像がありました。これを見るとバルーンと釣り下がっている観測機器の間で爆発しているように見えます。ここを狙って撃ったという言説もありましたが、恐らくはmiss distanceじゃないかと思います。ミサイルがバルーンと観測機器のどちらを捉えていたのかは分かりません。
https://twitter.com/rawsalerts/status/1621980596346953729?s=20&t=4854B7r2enH3tK_rfrskMQ
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2022年12月03日
シースパローの吊るし方
CRLに搭載されたAIM-7とAAM-3を各4発ずつ装備したF-2戦闘機
引用元: Jerry Gunner, CC BY 2.0
以下の写真では翼下内側のパイロンに装着されている
引用元: Hunini, CC BY-SA 4.0
これは元々、英国フレーザー・ナッシュ社(当時。その後Flight Refueling社からCobham Mission Systems社、現在は米国EATON社)の製品であり、英国のシーハリアーやカナダのCF-18等に搭載されていたもので、本邦では日飛さんでライセンス生産されています。(当時、LAU-128と機種選定が行われ、AIM-7搭載能力の有無でCRLが選定されたとの話を聞きましたが、元々LAU-128にAIM-7搭載能力が無かったことを考えると、ちょっと眉唾な気がします)余り知られていませんが、このランチャーはレールを交換することによりAIM-7のようなMRMだけでなく、AIM-9やAAM-3のようなSRMをも搭載が可能です。機体に搭載されている時は余り感じませんが、間近で見ると結構ごつい代物です(w
There are two Frazer Nash common rail launchers manufactured by Nippi. The aircraft is capable of deploying the Raytheon AIM-7F/M medium-range Sparrow air-to-air missile, the Raytheon AIM-9L short-range Sidewinder and the Mitsubishi Heavy Industries AAM-3 short-range air-to-air missile.
引用元: https://www.airforce-technology.com/projects/f-2/
このAIM-7をどうやってレールへ引掛けるのかというと、以下の写真にあるLAUNCH LUGとLAUNCH HOOKをそれぞれランチャーの内側と外側のレールへ引掛けるのです。
引用元: https://forums.vrsimulations.com/support/index.php/AIM-7_Sparrow
こちらの映像でその作業が確認できます。結構大変な作業です。
今回のお題は航空機のレール式ランチャーではなくて、AIM-7の艦載型であるRIM-7(Sea Sparrow)の艦船のランチャーのお話です。RIM-7の発射装置であるMk29箱型8連装ミサイルランチャーもレール式ですが、洋上で木の葉の如く揺れる艦上で上記のような精密な搭載作業は極めて困難です。
引用元: U.S. Navy photo by Ensign Kristin Dahlgren. - パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=8201696による
では、どうやってランチャーへ搭載するのでしょう。これはそのものズバリの映像がありました。何とミサイルを装着したレール式ランチャーごと、ボックス型ランチャーへ装填するのです。
引用元: By Uploaded by Nova13 - http://www.navy.mil/management/photodb/webphoto/web_020216-N-5607S-001.jpg, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3013405
確かにこの方法なら、あまり精密な作業は要らないかもしれません。ただ、何れにしろ大変な作業であることは変わりありません。このRIM-7のランチャーとして異彩を放つのは、カナダのイロクォイ級ミサイル駆逐艦でしょう。こちらも映像がありました。
2:28辺りから始まる映像を見てください。このビックリドッキリメカぶりはヤッターマンも脱帽です(古い
一つ気になるのは、ランチャーを装着したミサイルがリロードされているシーンです。次弾4発がランチャーごと装填されるように見受けられますが、最初に発射した際に使ったランチャーはどうしたのでしょう。まさか海上へ投棄したんでしょうかね(^^)
この奇抜なランチャーも近代化改装の際にMk41VLSへ更新されたそうです。VLS登場以前のランチャーは百花繚乱で時代に咲いた徒花だったのでしょう。
まぁ本邦のこれも(2:40辺り)相当なもんだと思いますがね(w 故エバケン先生は戦場でこんなまどろっこしいことしてられるかと批判されていましたが、次作の11式では通常のボックス型ランチャーへ改められました。
<追記>
このリンク先の写真なら分かり易いんじゃないでしょうか。ボックスランチャーのレールにアダプターを介して挿入されるランチャー付きのミサイルです。(お金掛かるんで写真を直接貼れません(T_T))
https://www.alamy.com/stock-photo-020626-n-6268k-001-at-sea-aboard-uss-george-washington-cvn-73-jun-129991316.html?imageid=018A1240-0B8C-41A3-AF28-3FDC9A68FB66&p=370272&pn=1&searchId=e88a111e4f698210fa267c634f9753d8&searchtype=0
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2022年11月27日
S-300は何故地上で爆発したのか
さて、今月15日にポーランドにミサイルが着弾して犠牲者が出るという事態が発生しました。この後、WWVという検索ワードがバズッたそうです。今回はどこの誰が撃ったミサイルとかは別にして、発射された地対空ミサイルが地上で爆発したのかという点に限って愚考してみたいと思います。
What is the S-300 missile that reportedly struck Poland?
管理人は浅学のため、旧東側の地対空ミサイルについては余り詳しくはありませんが、このミサイルはS-300の5V55ではないかという話があるので、5V55という前提で話を進めます。みんな大好き英語版wikiによると、5V55は主にSARH(Seni-Active Radar Horming)のようです。
まず、疑問に思うのはミサイルというのは自爆機能が付いているのではないかということだと思います。仰る通りで、通常対空ミサイルには自爆機能が備わっています。自腹で情報開示請求をした様々な文書をネットで共有されている大火力太郎先生(@Military_Hobbys)のサイトから、本邦の比較的最近の地対空ミサイルである11式短距離地対空誘導弾についての自爆機能を確認してみます。
11式短距離地対空誘導弾の仕様書からの抜粋
k)安全性 安全性は次による。
)1 射撃統制装置のコマンドアップリンク機能によって、飛しょう中の飛しょう体への自爆指令を送信し、自爆させることができるものとする
2)敵機と識別して射撃した目標を、射撃後に味方と判別した場合、コマンドアップリンク機能によって、自爆指令を飛しょう中の飛しょう体へ自動的に送信し、自爆する機能を有するものとする。
3)飛しょう体はタイマ自爆機能を有するものとする。
参照元: 11式短距離地対空誘導弾
https://t.co/KZS6GR6QO2
以下は以前公開されていた制式要綱からの抜粋です。
91式携帯地対空誘導弾からの抜粋
6.1.3 機 能
(1.4) 自 爆 弾頭付飛しょう体は,目標に命中しなかった場合,所定の時間経過後,自爆する。
引用元: 制式要綱 91式携帯地対空誘導弾
90式空対空誘導弾からの抜粋
3.2.2 母機搭載中の安全性・発射後の安全解除 母機搭載中の安全性及び発射後の安全解除は,次のとおりである。
(3) 誘導弾は,発射後目標に遭遇しない場合には,所定時間経過後自爆する。
引用元: 制式要綱 90式空対空誘導弾
ちょっと纏めると以下のような感じです。
誘導弾の自爆方式
(1)タイマによる設定時間で自爆
(2)指令による自爆
あと、最近のモノになると内蔵電源が切れたらとか様々な設定条件があるようです。以下はアイアンドームでの射撃映像。どうもSLS(Shoot Look Shoot)射撃している感じですが、幾つかのミサイルは自爆しているようにも見えます。
Iron Dome Intercepting a huge rocket wave Israel Gaza 2022 conflict
上記(2)についてはUTDC(Up To Date Command)付きのミサイルでないと実装出来ない機能ですが、これについては面白い話があります。勝手に姉妹サイトである 改自衛隊で奏でた交響曲 の管理人であるペンギン先生から教えていただいたのですが、AAM-4の艦載版であるXRIM-4が採用されなかったのは、以下のような背景があったとのことです。自分もXRIM-4関連で三宿にモノを収めた経験があるのですが、この話を聞いて長年の疑問が氷解しました。
AAM-4艦載型(XRIM-4)については、かなり完成度が高く使えるミサイルだったのですが、運用者側(特に射撃マーク)の迷走が原因でお蔵入りしてしまったところがあります。
中間の指令誘導方式はAAAM-4にも存在する仕様ですが、終末誘導のARHについて、味方誤射防止の自爆機能追加を要求されたのが響いています。
射撃特に大砲屋さんが、FCS-3の開発が進んださなかに「撃ちっぱなし機能」を嫌がり、「敵味方識別で最終的に味方と判明したとき自爆させる機能がないと安心して使えん!」とクレームが付きました。
XRIM-4側については、簡単に機能改修で対応できたのですがFCS-3及びATECS側で機能追加がなかなかうまくいかず、開発遅延の要因の一つになりました。
結局、大蔵省からコスト削減を要求されたときにFCS-3・ATECSを優先して一番完成していたXRIM-4を切り捨ててしまったのが要因です。
その後シースパローの老朽化更新の必要があるため、FCS-3搭載が必要なXRIM-4より慣れ親しんだシースパローの発展型ESSMを採用する判断が出たと聞いています。
ESSMだと、FCS-2でも機器の改修で発射が可能というのも影響しました。
当時はFCS-3自体が切り捨てられそうな状況だったので、何とか存続を願ってXRIM-4を犠牲にした状況です。
引用元: 改自衛隊で奏でた交響曲
https://fanblogs.jp/sstd7628/archive/266/0#comment
かなり話が脱線しました。以上のように通常は対空ミサイルには自爆機能が備わっています。旧東側の兵器を同じ基準で考えてよいのかという疑問も無いことはないですが、ここは備わっていると考えときます。
では、何故外れた筈のミサイルが空中で自爆ぜず地上で爆発したのかという点です。
SARHの5V55が指令自爆機能を持たないとしたら、やはり自爆の設定秒時以内に地上に落ちてしまったと考えられます。つまり、この際の射撃は目標を下から上に見ていたのではなくて、上から下に見ていたのではないかという考えが浮かびます。ただ、自立航行できない単なるSARHでは地上から見通し線外射撃が出来ません。となると目標は比較的低高度にありながらミサイルの射撃レーダーには捉えられる(イルミネーターで送信波を当てられる)高度だったということになります。
ミサイルは比較的低高度の目標へ向かいましたが、運悪く目標から逸れてしまったため自爆の設定秒時前に地上へと達して着発信管で起爆したのではないかと考えます。
以上は管理人の愚考に過ぎませんが、今後調査が進めば全容が明らかになるかもしれません。何れにしろ、今回の紛争が出来るだけ早く終了し、当地の人々が一日も早く日常の生活に戻れることを願ってやみません。
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2022年10月01日
アクティブ・デコイはミサイルへと向かう
その中で、セミアクティブレーダー誘導の対空ミサイルには曳航式デコイ(ジャマー)が有効であること、またアクティブレーダー誘導に対して曳航式は余り有効ではないことを述べました。
航空事業部某技術幹部殿曰く
「曳航型はセミアクティブレーダー誘導には有効だが、アクティブレーダー誘導には有効ではないので、射出型デコイが必要だ。」
浅学な自分は最初この意味が分かりませんでした。しかし、現在はこうではないかと推測しています。
航空事業部には射出型デコイとしてJ/ALQ-9というものをF-15j/DJに装備しています。これは珍しいもので、部隊の方も名前は聞いたことあるけど見たことが無いと言わしめる程です。"F-15用射出型ECM装置"で検索すると入札公告等で結構ヒットします。そして特筆すべきはこのJ/ALQ-9の性能については特定防衛秘密に指定されていることです。
参議院情報監視審査会の活動経過
戦闘機用射出型 ECM 装置(J/ALQ−9)の J/S 比、初期設定値、ドップラー周波数及び妨害可能時間に関する定量的データ(試験により得られたデータを除く。)
引用元: 参議院情報監視審査会の活動経過
(注)J/S比のJはミサイルが受信する妨害波の電力、Sはミサイル自身のレーダ受信電力のことで、これが1を下回ると妨害が有効ではなくなる。
さて、このJ/ALQ-9ですが、前方型と後方型があります。これも何故デコイに前方型と後方型があるのか、またこのデコイは外観の写真等が全く出てきません。従って一般的にはどんな形なのかも分からないのです。
それは何故なのか。
実はこのデコイは飛翔体という名称で、主契約会社である富士通さんから特許が取られています。そちらの特許情報からこのデコイがどういうものなのかを知ることができます。
飛翔体
https://patents.google.com/patent/JP4237873B2/ja?oq=JP4237873B2
全体の外観図
引用元: 飛翔体
収納状態
引用元: 飛翔体
なお、以下の特許も関連するようです。
小型電子機器用カートリッジアセンブリ
https://patents.google.com/patent/JP3904727B2/ja?oq=JP3904727B2
飛翔体および射出装置
https://patents.google.com/patent/JPH08207898A/ja?oq=JPH08207898A
電波妨害装置
https://patents.google.com/patent/JP3660773B2/ja?oq=JP3660773B2
航空機
https://patents.google.com/patent/JP2005114457A/ja?oq=JP2005114457A
自分は以前、某所にてこのデコイを拝見したことがありますが(実物は鮮やかな赤色で塗装されています)、外観図よりももっと細長い感じです。直径は大人の親指よりちょっと太い程度の大きさです。
このデコイはF-15J/DJのチャフ・フレアディスペンサー であるAN/ALE-45に搭載されており、必要時に射出されます(まず機体搭載型ECMで妨害を開始し、ミサイル側が妨害に引っ掛かったのをトリガーとして、射出型デコイを発射してその後に内装型ECMの妨害を停止するか徐々に弱める。従って、射出式デコイはECMコントローラの判断で自動的に射出される)。射出されると展開翼を開いて飛翔し、熱電池を動力源として電波を発信して電波妨害を開始します。この際にこのデコイは射出されて単純に直下に落下するのではなくて、水平方向に飛翔する。そして、前方用では前方に、後方用には後方にアンテナが付いており、そこからそれぞれの方向へ妨害波を発信します。
AN/ALE-45J
左側筐体がチャフ及びデコイ用、右側筐体がフレア用
引用元: By Hunini - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=72818798
つまり、このデコイは相手のミサイルの方向へ送信アンテナを向けて飛翔する形になります。これが前方用と後方用が存在する所以です。
聞き及んだところによると、一度に4器のデコイが射出され、それそれの方向へ電波妨害を行いながら飛翔することになります。なお、曳航式の場合は母機と一緒に飛翔するため母機と同じ速度となるため、速度欺瞞の必要はありませんが、射出型になると発射母機と飛翔速度がことなるため、最適な△f(母機とデコイのドップラ周波数の変位分)を算出し、妨害成分に乗せてやる必要があります。
以上のことから、航空事業部某技術幹部殿の発言の真意はこういうことじゃないかと推察しています。
この射出型デコイは電波妨害を実施しながら、ミサイル側へ向かって飛翔し、状況によっては相手ミサイルと発射母機の間に割り込んで妨害を実施し、より実効性が高い妨害を実施することができる。それに対して母機の近辺を飛翔する曳航式は射出型に比べて送信出力を大きく出来る利点があるが、自らレーダー波を送信するアクティブレーダーホーミング誘導に対しては、距離が近くなるとミサイルが受信する妨害波の電力がミサイル自身のレーダ受信電力よりも低くなってくる(J/S比が1以下になる)ため、妨害の効果が無くなり妨害対処可能な距離範囲が短くなってしまう。つまり母機との距離が曳航索によって固定されているが故にアクティブレーダーホーミング誘導に対して脆弱であると言えます。
そしてこのJ/ALQ-9の姿が余り公に晒されないのは、元々配備数が多くないこともさることながら、この形態による飛翔性能を外観から余り類推されたくない意図があるのかもしれません。
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2022年08月21日
wikiにASM-2の解説を少し追加しました
運用側からのASM-2の評価
技術研究本部の開発計画
巡航ミサイル型標的
特に開発計画については、数字を入れられなかったので、若干消化不良な内容です。
巡航ミサイル型標的も運用高度やレーダー反射面積等の数字は省きました。巡航ミサイル型標的には恐らく、指令受信装置も搭載されていたと思われるのですが、裏が取れないため書かないでおきました。ただ、スモーク発生装置の搭載については追記しています(とある資料で確認できたため)。
次は主要構造について書いてみるつもりです。
ああ、恥かしながら長らく気づかなかったのですが、ASM-2の制式要綱の用途の項目にはこう書かれているのですね。
1.用 途 93式空対艦誘導弾(以下,誘導弾という。)は,戦闘機(以下,搭載母機という。)に搭載し,主として侵攻する戦闘艦艇を攻撃し,その防空能力を無力化するために使用するものである。
引用元: 制式要綱 93式空対艦誘導弾
つまり、用途としてはASM-3と丸被りなわけです(ASM-3はパッシブレーダーによる個艦識別能力を持つ)。ASM-2が戦闘艦、特に広域エリア防空艦をターゲットにしているというのは銘記しておくべきでしょう。
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2022年08月14日
HARMをMigから撃てるのか
どうやって(どのプラットフォームから)発射されたかが謎となっています。
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この記事では、ウクライナ空軍が保有するMig29から撃ったのではと推定されており、それ自体は難しくないと述べています。
Ukrainian Jets Are Firing American Anti-Radar Missiles
It’s not hard to imagine American technicians remotely assisting Ukrainian engineers to add the HARM gear as the latter rebuild their aging MiGs for the DEAD mission.
引用先: https://www.forbes.com/sites/davidaxe/2022/08/11/ukrainian-jets-are-firing-american-anti-radar-missiles/?sh=281802c031a9
では、旧東側の機体にHARMを搭載することは簡単なのでしょうか?
ミサイルを機体へ搭載するには少なくとも以下の4つの検証(いわゆる母機適合性)が必要になると思います。
1. 機械的インターフェイス
2. 電気的インターフェイス
3. 搭載時の飛行特性
4. 発射する際の安全性(投下特性等)
1はHARMとその専用ランチャーであるLAU-118/Aが機体のパイロンへ装着できるかという問題です。通常、緊急時の投棄のために、エジェクターラックを介して機体に搭載することになると思いますから、適合するエジェクターラックが無い場合はミサイル、ランチャー、エジェクターラックを機体へ搭載できるかという話になります。そして、出来れば緊急時の投棄時の投下特性も検証したいところです。因みに、XAAM-5試験時にはパイロン、ランチャーアダプター、ランチャー、ミサイル(模擬弾)込みで投下試験を行っています。
2は厄介です。記事の中にも触れられていますが、HARMを発射するとしたらAN/ASQ-213 HARM Targeting Systems (HTS)を使わず、ミサイル自身が持つシーカーによりLOBL(発車前ロックオンで撃つことになると思います。では、機体とミサイルの間でどのような信号がやり取りされるかですが、残念ながらHARMのインターフェイス情報は見つからなかったので、手持ちのASM-2Bの仕様書を参考例として出してみます。
引用先: 93式空対艦誘導弾(B)仕様書(CP-Y-0067L)
余談ですが、この仕様書上からASM-2BはLOBL(発射前ロックオン)が出来ることが確認できます。
通常、ミサイルと機体ではこの位の信号のやり取りをしています。特にHARMの場合はMIL-STD-1553B/1760で機体とやり取りしてますから、機体側にはそれに対応したインターフェイスと機器が必要になります。
MIL-STD-1553Bについてはこちらのページをご参照ください。ナセルさんの非常に秀逸な解説があります。
データバスを既存の機体へ導入するのは今まで幾つか例がありますが、規模にもよりますが言われるほど簡単ではないというのが正直なところじゃないかと思います。
ところで、HARMの製造会社である米国レイセオン社は面白い特許を取得しています。
WIRELESS PRECISION AVIONICS KIT
引用元: https://patentimages.storage.googleapis.com/eb/b2/5d/b7d2d964b9a8e2/US20120150365A1.pdf
これは内容から行くとPaveway用みたいですが、機体と誘導爆弾の間をワイヤレスで繋げてしまおうというものです。実際にWiPAKとの名称で、西側と言えど若干毛色が違う(データバスも違うかも)フランス海軍のラファール戦闘機に搭載してテストされている模様です。
引用元: https://www.navyrecognition.com/index.php/naval-news/naval-news-archive/year-2012-news/july/490-raytheon-demonstrates-wipakr-wireless-paveway-avionics-kit-on-french-navy-rafale-aircraft.html
もし、今回のHARMにこの技術が使われているとしたら、非常に興味深い話になります。
3は機体にミサイルを搭載されたときにフラッターなど危険な現象が出ないかどうかの確認が必要になります。出るとしたらどのような状況で発生し、その回避策(飛行制限等)を確認する必要があります。
4はこのミサイルはレールラウンチですが、発射時に機体へ悪影響が無いかを確認する必要があります。特に発射の際にブルーム(噴煙)が機体を直撃すると非常に危険(特にエアインテイク)です。
射出式発射ですが、F-14はAIM-7の発射試験時に射出力不足でミサイルが充分に機体から離れず、その噴煙を吸い込んでエンジンがストールして墜落する事故を起こしています。
【写真】AIM-9Lの噴煙を浴びるF-14A
引用元: U.S. Navy National Museum of Naval Aviation photo No. 1996.488.022.053
以上を勘案すると、ウクライナでMigにHARMを搭載するなら米国側で充分な検討が為され、その整備マニュアルと共に機材が送られたのではないかと推測します。(必要ならエンジニアも)
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2022年08月04日
令和4年度概算要求
引用元: https://www.mod.go.jp/j/yosan/yosan_gaiyo/image/r04.jpg
内容をちらっと見ましたが、マルチドメイン対応、無人機の活用・無人機への対処、ISR能力の強化、持続性・強靭性の強化といったところで、まぁ普通の内容です。
その中で、ちょっと目についたものを挙げていきます。
標準型ミサイルSM−6の取得(207億円)
航空機や巡航ミサイルによる攻撃からの防護を目的としてイージス艦(「まや」型護衛艦)に搭載する長距離艦対空ミサイルであるSM−6を取得
引用元: 我が国の防衛と予算 Defense Programs and Budget of Japan 令和4年度概算要求の概要
SM-6高いですねぇ
高出力マイクロ波(HPM(※))照射技術の実証(86億円)
(P28参照)
※ HPM:高出力マイクロ波(High Power Microwave)
引用元: 我が国の防衛と予算 Defense Programs and Budget of Japan 令和4年度概算要求の概要
マイクロドローンの欠点として比較的低出力なHPMでも行動不能になります。意外とドローンがゲームチェンジャーになり得ない要因の一つです。
滞空型UAV(※)の試験的運用 (50億円)
海上自衛隊における各種任務への適合性、有人機等との連携要領及び省人化/省力化に寄与する導入のあり方を検証するため試験的運用を実施
※ UAV:無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle)
引用元: 我が国の防衛と予算 Defense Programs and Budget of Japan 令和4年度概算要求の概要
これは既に話が出ていたMQ-4C トライトンなんでしょう。
艦載型UAV(小型)に関する研究(性能試験)(6億円)艦上運用可能なUAVの、海自艦艇に対する艦載適合性及び操作性を確認するため、民間企業が用意した器材を用いて性能試験を実施
引用元: 我が国の防衛と予算 Defense Programs and Budget of Japan 令和4年度概算要求の概要
これはペルシャ湾派遣で話が出ていたスキャンイーグル艦載版なのか、それともファイア・スカウトなのか、後者ならレンタルにしても安すぎる気もします。
そして一番気になったのがこれ、、
基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾の開発(26億円)
同時多目標対処能力を向上し、コスト低減を図った空自の基地防空用地対空誘導弾(改)及び機動展開能力に優れ、低空目標への対処能力の向上を図った陸自の新近距離地対空誘導弾を、ファミリー化により効率的に開発
引用元: 我が国の防衛と予算 Defense Programs and Budget of Japan 令和4年度概算要求の概要
これは以前から公開されていたのですが、携行SAMの発展型を基地防空に使うという話です。これは文書中でも明らかになっているように、超低高度を飛翔する巡航ミサイルが主な目標になります。
引用元: https://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/rev_suishin/r02/pdf/03-0008.pdf
本事業を実施することにより、誘導弾が予想命中点に飛しょうする環境下において、複雑背景下から小型・低熱源目標を抽出するための画像処理技術の確立が見込まれる。これらの成果については、試作及び技術試験により検証し、これらの検証結果が得られた場合には、我が国の技術力の強化に資することが見込まれる。これらは自衛隊のニーズに合致した高度な防衛装備品を創製するため重要な成果であり、最終的に政策目標である我が国自身の防衛体制の強化につながるものであることから、本事業に着手することは妥当であると判断する。
引用元: https://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/rev_suishin/r02/pdf/03-0008.pdf
この文章を素直に読むと、このミサイルはLOAL(発射後ロックオン)が出来るよと言っているように思えます。一般的にMANPADS(携帯式防空ミサイルシステム)は人間が背負える範囲の重量(発射重量で大体、20kg以下)という制約から、能力が非常に制約されています。そしてそれは旧東側製品において顕著になります。
浅学ながら、自分はLOALが出来るMANPADSを知りません。もし、この誘導弾がLOAL機能を備えるのであれば非常に画期的と言えます。
【LOAL出来るの】
LOALが出来ると何が良いかというと、
@見通し線外射撃が出来る(直接目標を見なくても発射可能)
A同時多目標に対応出来る(事前にロックオンする必要が無いためリアクションタイムが短くて済む)
B射程が延びる(直接目標を見る必要が無いため、最もエネルギー損失が少ない航法で飛翔することが可能になる。弾道飛翔等)
というように対巡航ミサイルには非常に都合が良いことになります。ただ、LOALで撃つためには光ファイバージャイロのような慣性航法に必要な装置を備える必要があります。果たしてそれを小さな筐体におさめられるのか。
【超低高度目標の困難性】
また、LOALで巡航ミサイルを撃つ場合は、ミサイルは高い高度から低高度を飛翔する巡航ミサイルを狙うことになります。つまり、上から下を見下ろす格好になるわけです。これは赤外線誘導ミサイルにとっては非常に難題です。高空のように背景が青空(しかも冷たいので目標とのコントラストがはっきり出る)の時と比べて地上の赤外線のバックグラウンドノイズは半端じゃありません。地上と非常に小さなホットスポットを見分けて相手を狙わなければなりません。これはある意味レーダーのクラッター対策よりも遥かに難題です。
【小さな弾頭と信管】
さらに言うと、相手が対巡航ミサイルの場合、有人機と違って相手を確実にkillしなくてはなりません(有人機なら任務の継続を断念させて引き帰させればよい=mission kill)。MANPADSは上記の制約により弾頭重量が小さくなりがちです。また、近接信管も備えていません(指向性弾頭は備えている)。高い誘導精度をもって相手に直撃し、且つ小さな弾頭で確実にkillしなくてはなりません。
いずれにしても、MANPADSベースで巡航ミサイルを狙うのは大変だと思います。
このミサイルは注視したいと思います。