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2024年11月04日

空対空機関砲はオワコン

■ロシア機の領空侵犯への警告にフレアを使用したことが話題となった

■これは航空事業部での機関砲射撃訓練が大幅に減少したことと関連があるのかもしれない

■Gunは空対空装備として既に終わったのではないか


先日、ロシアのIL-38が北海道礼文島北方の領海上空を侵犯した事案がありました。それに対して航空事業部が対領空侵犯措置を行いましたが、その際にスクランブル機(F-15J)がフレアによる警告を行ったことが話題となっています。

ロシア機による領空侵犯について(防衛省)
https://www.mod.go.jp/j/press/news/2024/09/23a.html

23a_02.jpg
画像引用元: https://www.mod.go.jp/j/press/news/2024/09/23a.html

1987年に発生した対ソ連軍領空侵犯機警告射撃事件ではスクランブル機(F-4EJ)は搭載する20mm機関砲で数百発を発射して警告しています。

まぁ、礼文島北方と沖縄本島ではその緊迫度が違うとはいえ、今回の領空侵犯事案で何故従来通りの機関砲による警告射撃を行わなかったかは疑問が残るところでしょう。その理由として色々考えられるところですが、管理人は航空事業部が空対空任務で機関砲を使用することを余り重視していないことが要因ではないかと考えています。

航空事業部が空対空機関砲射撃を軽視している証左として、近年の機関砲標的装置(A/A37U-36)関連の調達状況を調べてみました。すると興味深いことが分かります。
機関砲標的装置(A/A37U-36)関連の調達を調べるにあたって、機関砲標的装置(A/A37U-36)の製造会社である日本飛行機さんの契約実績を確認してみます。最初は防衛省の公開情報(落札・契約情報の公表)から調べようと思いましたが、経済産業省が公開している法人プロフィールで近年の契約実績が網羅されているため、こちらから見ていくことにします。中央、地方問わず会社の契約実績が一覧になっているので、非常に分かり易いです。

法人プロフィール(日本飛行機株式会社)
https://info.gbiz.go.jp/hojin/ichiran?hojinBango=1020001006613

機関砲標的装置(A/A37U-36)
1620px-JASDF_A_A37U-36(AGTS-36)_right_side_view_at_Komatsu_Air_Base_September_17,_2018.jpg
画像引用元: By Hunini - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=72819822

機関砲標的装置(A/A37U-36)は大まかに分けて以下の3つで構成されます。
@TOW SET(RMK-35)
AFOREBODY(TDK-39)
BVisual Augmenter

@は標的えい航装置本体で、既に調達は終了しており、現在の契約は修理関連のみです。なお修理は航空自衛隊第4補給処が契約しています。
Aは曳航されるターゲットセットで、使い捨てではありませんが被弾したら投棄されるもので、所要に応じて新規製造されます。製造請負契約は航空自衛隊第4補給処が行っています。
Bは視認性拡大スリーブで、FOREBODYの後部に付属するもので、1回限りの使い捨てで新規製造されます。製造請負契約は防衛装備省が行っています。契約品名は機関砲標的装置(A/A37U-36)。

FOREBODYとVisual Augmenter
JASDF_AGTS.jpg
画像引用元: Gala8357 - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=24423789による

FOREBODYとVisual Augmenter の調達実績を記載してみます。(2015年から2023年における調達実績)

FOREBODYの契約実績
2019年08月30日 FOREBODY ASSY,TARGET SET20EA 157,872,000円
2017年12月21日 FOREBODY ASSY,TARGET SET7EA 63,292,320円
2017年03月29日 FOREBODY ASSY,TARGET SET7EA 67,397,400円
2016年02月05日 FOREBODY ASSY,TARGET SET8EA 68,224,680円


Visual Augmenterの契約実績
2016年12月16日 機関砲用標的 8,042,976円
2016年03月02日 機関砲用標的 17,184,960円


Visual Augmenterの調達数量は記載されていませんでしたが、単価は10万円程度だったと記憶していますので、最大でも計250EA程度と思われます。

そして、FOREBODYの調達は2019年度以降行われておらず、2015年から2023年の8年間での調達実績は合計44EAだったことが分かりました。平均にすると年間8EA足らずです。
AGTSの導入当初は年間400EA程度調達していたことも考えるとこれは驚くべき数字です。単純に考えて調達規模は1/50になっています。

FOREBODYは損耗率の高さから、従来のダートターゲット(使い捨てで80万円/EA程度)に比べて運用経費が高く、マル検から「ダートに戻しませんか。」お小言を頂いたこともあって、被弾しても簡易修理を行ったりして損耗の低下に努めていたのですが、これはいくら何でも減り過ぎでしょう。近年、AGTSを搭載した機体が殆ど見られないというのも分かる気がします。

また、TOW SETの修理契約も2019年を最後に行われていないことから、2019年以降に航空事業部は機関砲標的装置の調達を実質的に取止めているのかもしれません。

このような状況から行くと、航空事業部は現座、空対空機関砲射撃訓練を殆ど行っていないのではないかと推察されます。かつて、スクランブル任務に就くパイロットは射撃検定の合格を求められましたが、現在はそのようなことは無いのでしょう。領空侵犯期の警告にフレアを用いたのもある意味当然かもしれません。何せ訓練していないのですから。。。

F-35Aは GAU-22/A 25mm機関砲を装備しておりますが、搭載弾数はF-15J(940発)やF-2(500発)に比べても大幅に少ない180発であり、恐らく数バーストで使い切るでしょう。兵装としては極めて心持たなく、恐らく有効な空対空装備としては考えられていないのではないでしょうか。

今まで機関砲が担っていた近距離の格闘戦における主兵装はHMDやオフボアサイト性を備えた最新のSRM(AIM-9X、AAM-5B等)が担うことでしょう。また、近距離の格闘戦自体が今後は生起し得ないかもしれません。ただ、最後の手として機関砲は残るかもしれませんが、他の手段、例えばレーザーや高性能ロケット弾等が出てくれば、駆逐される可能性もあるかもしれません。

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2024年11月02日

あなたの仕様書見せてください(基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾(その1))

■基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾(その1)の仕様書が大火力リークスで公開された

■MANPADSベースでLOALが出来るのはゲームチェンジャーに成りえる

■有人攻撃ヘリはこれで完全に終わった


新sam.png
画像引用元: https://www.mod.go.jp/j/press/news/2021/12/24b.pdf

大火力リークス 基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾(その1)
https://drive.google.com/file/d/1MPEOrv0084n_-fyeb5Tx--pZ3LpZ17wj/view?usp=sharing

実は「あなたの仕様書見せてください」シリーズはこれを取り上げたかったら始めたようなものです。管理人の意見として、このミサイルは非常に画期的であり、もっと注目されて然るべきものだとと思います。

基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾につきましては、防衛省から開発計画がパブリックリリースされてますので、こちらの文言を引用してみます。

令和3年度(最終公表)レビューシート 基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾
https://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/rev_suishin/r02/pdf/03-0008.pdf

敵の巡航ミサイルによる我が国への同時多数攻撃に有効に対処するため、既存の基地防空用地対空誘導弾の改善型として基地防空用地対空誘導弾(改)を開発する。また、島嶼等防衛における各種経空脅威を撃墜するとともに、本土における重要防護施設に飛来する各種経空脅威を撃墜し、自ら機動性を発揮して部隊等に直接対空火網を構成して部隊等の安全を確保するため、93式近距離地対空誘導弾の後継として、低高度で飛来する巡航ミサイルへの対処能力を持った新近距離地対空誘導弾を開発する。

引用元: 基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾


つまり、航空事業部の基地防空用ミサイルと地べた事業部の近SAMを統合して対CM能力を持たせることになります。従来、基地防空用ミサイルは短SAMベースのものですから、MANPADSベースのものとなりダウンサイジング化を諮ると共に数が出ることでコストダウンも意図しているのでしょう。

このミサイルの一番のトピックは低高度で飛来する巡航ミサイルへの対処能力を持つことでしょう。つまり、MANPADSベースのミサイルに見通し線外射撃能力を持たせるという極めて意欲的なものです。見通し線外射撃能力を持つということは、このミサイルはLOAL(Lock-On After Launch 発射後ロックオン 分かり易く言うと空中ロックオン)が出来るということです。元々、歩兵が担ぐような超小型のミサイルであるMANPADSにこのような能力を持たせることは凄く画期的と言えます。

では、LOALというか見通し線外射撃能力、低高度で飛来する巡航ミサイルへの対処能力を得るためには何が必要かですが、

@低高度で飛しょうする目標を複雑な地表のノイズから判別して誘導出来るシーカー
A独力で航法を行える装置(INS、IRS等)
B目標位置のアップデートを外部から受信して更新する装置(指令受信装置等)


以上を頭に入れながら、この仕様書を拝見することといたしましょう。この仕様書ではミサイルの開発部分は誘導制御部のみとなっています。つまり、従来の91式携行SAMの誘導制御部のみを換装するかたちになっています。ASM-2やAAM-5の誘導制御部を換えてASM-2BやAAM-5Bにするのと同様な手法ですね。

@については黒塗りだらけで、全く内容を伺えないので先ほどのレビューシートから見てみます。

小型・低熱源目標抽出技術
誘導弾及び目標の双方が動的な環境下において、複雑背景下から小型・低熱源目標をシーカで抽出するための画像処理技術の確立

引用元: 令和3年度(最終公開レビューシート


ミサイルが超低高度で飛しょうする目標を狙う際は、上から下を見下ろすかたちになります。そうなると背景が地表になることから、非常に複雑な背景の中から低シグネチャの目標を識別して追跡する必要があるため、高度な目標類別機能が求められることになります。それをMANPADSベースの小さな筐体に収めるのは技術的に高度なものを求められるでしょう。

以下はAIM-9Xで低高度をフレアを撒きながら飛行するQF-4への実射映像


Aですが、仕様書の表3-1 構成及び数量にIMUという文言が確認できます。ではIMUというのは何なのか。こちらのページを引用させていただきます。

慣性計測ユニット(IMU)とは?
IMUとは慣性計測ユニット加速度、方位、角速度、その他の重力を測定し、報告する電子機器である。3つの加速度計、3つのジャイロスコープ、そして方位の要件によっては3つの磁力計で構成される。車両の3つの軸(ロール、ピッチ、ヨー)それぞれについて、1軸につき1つ。

引用元: SBG Systems https://www.sbg-systems.com/ja/inertial-measurement-unit-imu-sensor/


IMU(Inertial Measurement Unit)は最近の車やオートバイにも使われているので、お聞きになった方も多いかもしれません。基本はジャイロスコープと加速度センサーを組み合わせたものです。これにより姿勢・方位を得ます。INSのように高度な自律航法をもたらすものではありませんが、ミサイルの初期誘導には充分なものでしょう。

Bですが、同じく仕様書の表3-1 構成及び数量にコマンドアップリンク受信機コマンドアップリンク受信アンテナが確認できます。即ち、このミサイルはMANPADSベースにも関わらず、UTDC(Up To Date Command)機能を有することになります。

ではこの基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾は現在の戦場にどんな影響をもたらすか考えてみます。

まず、基地防の対CMの対処能力が向上することです。航空事業部は前世紀からCMを大変脅威と認識し、その対応を行ってきました。運用上の不利を承知でAIM-120ではなくAAM-4を採用したのもそのためです。このミサイルは従来の基地防SAMより安価で機動性も高いでしょうから、数を揃えることが出来て同時多数攻撃のような従来の構成では対応が難しかった事態へも対応出来ることになります。

さらに、このミサイルによって武装ヘリはもはや完全にトドメを刺されたと言えるでしょう。管理人は地べた事業部がAHを捨てる決断に至ったのは11式短距離地対空誘導弾の導入が大きかったと考えています。この優秀な眼を持つミサイルに狙われると、稜線からチラッと出たらもはやアウトです。それに匹敵するミサイルが大量に配備されれば、もはや攻撃ヘリは生き残れないでしょう。

11式短距離地対空誘導弾(発射) 陸上自衛隊
Type_11_(SAM)_firing,_Japan_GSDF.jpg
画像引用元: 衛省ホームページ https://www.flickr.com/photos/90465288@N07/39227773454/in/album-72157632230016328/

一つ期待したいのが、このミサイルのさらなる派生型が生まれることです。例えば、フランスのミストラルのように艦船へ導入したり、UAVのような無人航空機へ導入したら如何でしょうか。

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2024年10月29日

【見学記】てつのくじら館へ行ってきました

ご無沙汰しております(^^)

長らく更新をサボっておりましたが、少し暇になってきましたのでぼちぼち再開したいと思います。
今回はちょっと趣向を変えて、広島県呉市のてつのくじら館を訪れる機会がありましたので、見学記など綴ってみます。

仕事柄、呉を訪れる機会は何回かあったのですが、こちらをを訪れたのは初めてでした。

残念ながら、内部は撮影禁止とのことでしたので(以前は撮影出来たそうなのですが)、他所様の写真をお借りしてちょっとしたレポートをお届けしたいと思います。

丁度、Youtube上で内部を撮影したものがありましたので、貼っときます。

【海上自衛隊】潜水艦内部へ潜入!てつのくじら館で見れる本物潜水艦!


展示されているのは退役したゆうしお型潜水艦7番艦の「あきしお」で、資料館の3階から船体に入る形になっています。外から見ると正にティアドロップ(涙滴)型で、よくこんなもの作れたなと感心します。余談ですが、浅草のアサヒビール本社ビルの隣にある金色のオブジェは鋼鉄で作られており、Kの潜水艦建造技術が生かされているんだそうです。

てつのくじら館
1440px-JMSDF_AKISHIO.jpg
画像引用元: Taisyo - photo taken by Taisyo, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4437162による

オブジェ「フラムドール」
1440px-Flamme_d'or.jpg
画像引用元: Tokumeigakarinoaoshima - 投稿者自身による著作物, CC0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=39364652による

内部に入れるといっても、ハワイで展示されているボーフィン・サブマリンミュージアム&パークのように潜水艦の内部全てを見られるわけではないのですが、興味深い展示が幾つかあり、中でも発令所・操舵室へ入れるのは圧巻です。

発令所・操舵室
js73020p.png
画像引用元: http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2007/2007/html/js603300.html

ゆうしお型は船体が複殻式ですので、よく映画とかで見る米帝の原潜の発令所・操舵室に比べたら相当狭いのですが、個人的な印象としては10名程度のクルーにとっては程好い狭さというか、一体感を醸成出来る広さのような感じがしました。

あと、これはセイルの直下にあるので当たり前なのですが、発令所の隣に艦橋昇降筒があることが確認出来ました。前部エアーロックという表札が掲示されていましたが、水中から出入りする際もここを使用するのでしょうか。スタンキーフード(イマーションスーツ)を被って水中から脱出するときは何処から出入りするんでしょうかね。

イマーションスーツ
Statoil_Überlebensanzug.jpg
画像引用元: CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1039921

蛇足ながら、GA隊の某部隊(習志野及び江田島)は海外製の水中スクーターを装備していますが、それらは潜水艦の魚雷発射管から出入り出来るそうで、何故か本邦の潜水艦との適合試験も既に実施しているそうです(w

BLACK SHADOW.
https://rotinor.com/black-shadow/

Rotinor BlackShadow and Divejet DPVs
http://www.hisutton.com/Rotinor%20BlackShadow%20and%20Divejet%20DPVs.html

あと、これも実際に拝見するのは初めてですが、SINS(Submarin Inertial Navigation System)も発令所付近にて確認することが出来ました。電波も届かない深海にて行動する潜水艦にとっては、SINSは非常に重要な機器です。こちらのSINSの表札には破壊責任者?みたいな文字が刻まれており、万が一の際にはこれを破壊してから退艦するのでしょう。

現在のSINSは契約品名: 慣性航法装置ZSN-1Eとなっており、契約金額は約3.3億円で東京計器さんが契約されています。なお、これはRing Laser Gyroscopeを使用しているようです。RLGはミサイルやUAVなどによく使われるFOG(Fibre-optic gyroscope)に比べると高価ですが、高い航法精度を期待出来ます。

アーセナル社製のリングレーザージャイロ
960px-Ring_laser_gyroscope_at_MAKS-2011_airshow (1).jpg
画像引用元: Nockson - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=16233800による

呉資料館の建物の中では各種魚雷も展示されていました。

80式魚雷
PXL_20241027_070350168.MP.png
管理人撮影

写真は開発名G-RXこと80式魚雷です。てっきり米国のMK37のコピーかと思ってましたが、有線誘導が可能であることなど、MK37より優れた点もあるようです。ただ、最大速力30ktじゃ原潜相手じゃ心持たないですね。次作の89式魚雷(G-RX2)はMK48と同じくオットー燃料を使用し、最大速力も50kt以上と伝えられます。

一度、魚雷関係の話を聞いたことがありますが、ミサイルとはまた違った難しさがあるそうです。例えば、航空機から投下される短魚雷では外殻の重量が全体の20%にも達すると聞きました。そのためか、魚雷を国産している国はミサイルと比べて非常に少なく、国連常任理事国5カ国を除くと日本、ドイツ、イタリア、スウェーデン、韓国位なものでしょう。台湾が魚雷の入手に非常に苦労したことは良く知られていますが、戦前から魚雷を作り続けている本邦の魚雷は各国の垂涎の的だそうです。

今回の訪問は余り時間が無くて、掃海機器のコーナー等は見学できませんでしたが、また次回はゆっくり訪問したいですね。

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posted by keenedge1999 at 23:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 艦船

2024年08月05日

F-15在来機へのAMRAAM搭載改修を考察してみる

■F-15在来機にAMRAAM搭載は不可能ではない

■ただ費用対効果的には疑問が残る

■F-15在来機は出来るだけ早く退役させ、最新機種へ更新させるべき


ペンギン先生の掲示板において、F-15在来機へAIM-120(AMRAAM)搭載の可能性を論じられていたので、こちらでも考察してみることにします。ネタを提供していただいたペンギン先生で感謝であります。

まず、F-15在来機にAMRAAMを搭載するには以下の改修が必要になります。

1.ランチャ改修
2. 畿内配線追加
3. バスインターフェイスモジュールの追加
4. RADAR/OFPの改修
5. アダプタ・パッド/ストレージボックスの追加


1. ランチャ改修
ランチャの改修ですが、まず胴下ランチャであるLAU-106AをLAU-106A/Aに改修します。これは改修キットが用意されており、既存のランチャから改修できます。

外観等について、よく纏められたサイトがありますので、こちらをご覧ください

EAGLE応援団 F-15J/DJ MRM改修機の識別ポイント
http://www.f-15j.com/archive/mecha/mrm/mrm.htm

写真を比べてみると、銘版があった部分に新たにコネクターが追加されているのが確認出来ると思います。これがAIM-120用のアンビリカルコネクタで、既存のAIM-7用のものとシーソーのようにつながっており、どちらかが突き出すと、もう一方が引っ込むようになってます。なお、ミサイルとランチャのコネクタはシアウェハと呼ばれる板の上下にコネクタがある器材を挟みます。あと、AIM-7では必要だったミサイル・モーターファイアリングケーブルがAIM-120では不要になります。これは一長一短があるのですが、一手間省けるという点ではメリットでしょう。

ランチャで問題となるのは内弦ランチャです。ここは既存のLAU-114をAIM-120運用可能なLAU-128へ変更しなくてはなりません。その際はランチャアダプタも既存のADU-407からADU-552へ変更します。
ここで一つ問題があります。在来機には後述するデータバスの配線が無いこと、LAU-128へ国産ミサイルであるAAM-3及びAAM-5を適合させる必要があることです。現在も生産されているAAM-5を適合させることはそれほど難しくはないと思いますが、AAM-3を適合させるのは難しいかもしれません。そうなると、AAM-3との適合は諦める等の判断が必要となるでしょう。

無人機研究システム無人機及び90式空対空誘導弾(AAM-3)
1280px-JASDF_UAV(1001)_&_AAM-3_at_Gifu_Air_Base_October_30,_2016_02.jpg
画像引用元: Hunini - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=53091006による

2. 機内配線追加
機内配線追加ですが、MSIP機へのAIM-120搭載改修においてもLAU-106へデータバスの機内配線追加は行われていますので、在来機で行うこともそれほど難しくないかもしれません。問題は内弦ランチャへの機内配線追加です。これは少なくても本邦では実績が無いので、慎重な検討が必要になると思います。

3. バスインターフェイスモジュールの追加
F-15在来機の元々のデータバスはH009ですが、AIM-120とのインターフェイスはMIL-STD-1553/1760が使われています。AIM-120は発射の際にこのデータバスを介してミサイルへ目標までの慣性データを送信し、この慣性データを元にミサイルは慣性誘導で目標へ向かいます。そのため、H009とMIL-STD-1553の間をやり取りさせるインターフェイスモジュールが必須となります。

これに関してはNASAが興味深い資料を公開しています。

NASA HiDEC F-15A with F-18
1387px-NASA_HiDEC_F-15A_with_F-18.jpg
画像引用元: Jim Ross - Cropped from EC91-677-1 from [1], パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3089363による

Predicted Performance Benefits of an Adaptive Digital Engine Control System on an F-15 Airplane
f15_deec.png
画像引用元: https://ntrs.nasa.gov/api/citations/19850007420/downloads/19850007420.pdf
Produced by the NASA Center for Aerospace Information (CASI)

これは在来機であるF-15AにMIL-STD-1553Bデジタルデータバスで制御されるデジタルエンジン制御システムとデジタルCAS(Control Augmentation System)を追加するにあたって、既存のデータバスであるH009へインターフェイスユニットを介して統合しています。このような機器を介すれば在来機へMIL-STD-1553Bデジタルデータバスを追加するのも可能でしょう。というか現状のMSIP機においてもH009と1553が並列で用いられています。従って、MIP機においてもこのようなインターフェイスユニットが存在すると思われます。1553を導入した場合、もう一つのメリットとしてLINK-16の端末であるMIDS-LVTの搭載もポン付けで可能になります。コクピットのディスプレイ追加も必要でしょうが。。。。

4. RADAR/OFPの改修
F-15在来機へAIM-120管制能力を付与するためには、レーダーや中央コンピューターのソフトウェア(OFP Operational Flight Program)の改修が必要となります。これに関しては平成10年度契約の『飛行教導隊F-15型機のAIM-120B搭載改修(その2)』において在来機用AIM-120管制OFPが米国ボーイング社から提供されたとの噂レベルの話があります。管理人はこの件についてGM関連の方に直接尋ねたことがありますが、その方もご存じないような感じでした。

あと、以下の写真の赤枠内のACS(Armament Control Set)の改修も必要ですね。MSIP機のように青枠内のAN/AWG-20 PACS(Progmable Armament Control Set)だとソフトの改修だけで済むのですが、ACSだとスイッチ等の物理的な改修が必要と思います。丁度、お店のレジスターとタッチパネルのPOSの違いを思い浮かべて頂ければ分かり易いでしょう。

ACSを装備したF-15のコクピット
A close-up view of an F-15 Eagle aircraft instrument panel.
F-15_Eagle_Cockpit.jpg
画像引用元: DoD DF-ST-82-05603 National Archive#NN33300514 2005-06-30
アメリカ合衆国連邦政府の著作物として、この画像はアメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。

PACSを装備したF-15Cのコクピット
F-15C_Eagle_cockpit.jpg
画像引用元: By SSGT. JAMES WILLIAMS - http://www.dodmedia.osd.mil/Assets/Still/2007/Air_Force/DF-SD-07-36540.JPEG, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3066785

5. アダプタ・パッド/ストレージボックスの追加
AIM-7とAIM-120では直径が1インチ違いますから、AIM-120をLAU-106へ搭載する際はパッドを介します。そのため、それらのパッドとパッドを機内に収納するストレージボックスが必要になります。

なお、海外にはMIL-STD-1553Bが搭載されていなかった機体に搭載改修を実施してAIM-120の運用能力を付与した例は幾つかあります。写真のドイツ空軍のF-4F ICEやシンガポール空軍のF-5Sなどはその代表例でしょう。

AIM-120を発射するF-4F ICE。ランチャから射出されたAIM-120の姿勢に注目。

F-4F ICE Phantom launches AIM-120
955px-F-4F_ICE_Phantom_launches_AIM-120.jpg
画像引用元: By U.S. Navy - U.S. Navy National Museum of Naval Aviation photo No. 1996.253.7324.035, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=24584829

シンガポール空軍のF-5S。同じく1553を介するAGM-65 Maverickを搭載しているところに注目。

Maverick armed RSAF F-5S
Maverick_armed_RSAF_F-5S.jpg
画像引用元: By Dave1185 at English Wikipedia, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6809201

どうでしょう? 在来機へAIM-120を搭載するのは結構大変なのがお分かりいただけると思います。F-15在来機は航空機としての能力は兎も角として、搭載電子機器が古く、電子戦能力も高いとは言えません。AIM-120を搭載してもその能力を生かしきれないと思います。だとしたら、現状は小改修(AAM-5搭載等)に留めて早期に新しい機体(F-35、XF-3)へ更新した方がコスパが良いんじゃないでしょうか。

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タグ:AIM-120 在来機

2024年07月27日

Nulkaはぬるかった?

■電波妨害弾1型は角度欺瞞と距離欺瞞を行う

■距離欺瞞を行えるEJは画期的

■将来的にはNulkaのような動力付きEJが主流となるだろう



お暑うございます(^^)

先日、wikipediaの「電波妨害弾1型」の記述を加筆・修正しました。余り分かっていない部分を削除し、新たに分かった部分を加えています。

電波妨害弾1型(wikipedia)

電波妨害弾1型は自艦のレーダーやESMの情報を元に相手のミサイルに対して距離欺瞞を実施します。これによって相手ミサイルのアクティブレーダーのレンジゲート内に偽目標を出現させ、電波妨害弾へ追尾転移させます。

アクティブレーダーのレンジゲートと電波妨害弾の位置
レンジゲート.jpg

イラスト画像引用元: https://www.ac-illust.com/

簡単な図を作ってみました。対艦ミサイルはアクティブレーダーで目標艦を追尾しますが、その際に目標艦との距離をベースとしてレンジゲート(黄色部分)を設定します。ミサイルから見てこの部分に入っているものを目標として認識し、入っていないものを無視します。

電波妨害弾は妨害波を遅延させて発信することにより、ミサイルから見た距離を目標艦との距離と等しくなるようにして相手のレンジゲートに入ってしまいます。さらに目標艦のエコーよりも強い信号をミサイル側へ指向することによりミサイルを電波妨害弾へ追尾転移させることになります。妨害波は一方通行だけに目標艦の反射波より遥に出力が大きく、また目標艦がもがみ型のようなステルス艦であれば、さらにその違いは大きい訳です。

レンジゲート内に入った偽目標のエコーが目標エコーより大きくなる
JPA 408200995_i_000005.jpg
画像引用元: 特許情報プラットフォーム 特開平08-200995 電波妨害装置 独立行政法人工業所有権情報・研修館

このように電波妨害弾1型は相手ミサイルに対して距離欺瞞を行うことにより、妨害当初から有効な妨害を行うことになります。これによりリアクションタイムの短縮と妨害持続時間を有効に確保することが期待出来るので、射出型妨害機の弱点である有効時間の短さを補うことが可能です。

なお、距離欺瞞を行わない妨害機はレンジゲートから外れているので、ミサイルは追尾転移を行いませんが、ミサイルが目標艦に接近するとレンジゲートが意味を為さなくなるため、レンジゲートから外れていた妨害機にも追尾転移する可能性が出てきますが、前述のとおりミサイルが相当接近しなくてはならず、貴重な時間を無駄にすることと、J/S比(ジャミング対信号比)が大きく悪化する(妨害が効かなくなる)ことになります。

さて話が長くなりました。以下のビデオをご覧ください。

BAE Systems Nulka - Advance Anti-ship missiles decoy defence system
https://www.youtube.com/watch?v=9j66ZvGGErQ

1:20と2:00付近で発射されたNulkaが発射母艦の進行方向の前方と後方に移動しているのが確認出来ると思います。つまり、相手ミサイル側から見て目標艦と同じ距離を保っている訳です。先ほどのお話を加味すると、Nulkaは相手ミサイルのレンジゲート内で移動していることになります。

発射されたNulka

Nulka.jpg

画像引用元: Di U.S.Navy Naval Research Laboratory - http://www.nrl.navy.mil/pao/pressRelease.php?Y=2003&R=16-03r, Pubblico dominio, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=120106211

アクティブレーダーのレンジゲートとNulkaの位置
Nulka.jpg


つまり、Nulkaでは最初から距離欺瞞を行う必要性が無いことを意味します。これはNulkaが自分自身の動力で自由に移動出来るので可能な芸当でしょう。電波妨害弾1型は Mk36 SRBOC チャフロケットシステムの固定式ランチ ャーから発射されてパラシュートで浮揚するので、このような真似は出来ません。なお、ペンギン先生によると電波妨害弾1型に関してもMk36 SRBOC ではなく、投射型静止式ジャマーランチャー 4連装発射機(FAJ)から発射しようという構想もあったそうです。

投射型静止式ジャマーランチャー 4連装発射機(FAJ)
1080px-Floating_Acoustic_Jammer_on_JDS_DD-116_Teruzuki_at_Harumi-pier,_Tokyo_(2013_Dec_1)_25.jpg
画像引用元: Yasu osugi - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=36555439による

個人的に有効な投棄型電波妨害機はNulkaのような内部動力を持ち、自由に移動できるものが望ましいでしょう。先日、艦載ヘリに妨害装置を搭載するような話も聞きましたが、今後はUAVのようなものに搭載する可能性も高いでしょう。

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2024年07月20日

あなたの仕様書見せてください(03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上 編)

■03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上の仕様書が大火力リークスで公開された

■仔細に見てみると、従来のSAMに無かった機能が確認できる

■本邦のミサイル開発は変わりつつある


JGSDF_Type_03_Chū-SAM_Kai (1).png
画像引用元: 防衛装備庁 - https://www.mod.go.jp/atla/soubi_system.html, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=113530740による

夏枯れでネタが無いので、毎度おなじみ大火力先生(@Military_Hobbys)のところから最近アップされた仕様書を見させて頂くことにしました。ということで、今回は「03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上」を取り上げることにします。

 防衛装備庁試作仕様書 03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上
https://drive.google.com/file/d/1KJMML6cp7JcyrCvxdm9304MhurS8yD91/view?usp=sharing

03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上はwikipediaによると令和5年(2023年)度から令和10年(2028年)度にかけて、新型の短距離弾道ミサイル (SRBM) と極超音速滑空体 (HGV) への対処能力を高めた中SAM改のさらなる改善型を開発する事業だそうです。

契約内容は以下の通りです。

品目 03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上
契約日 2023/04/07
契約相手方 三菱電機
契約額 59,790,390,000 円
中SAM(改)の能力向上の開発で期間は2023年度から2028年度まで。


しかし、仕様書は全体で200頁以上あります。管理人も仕様書のゴーストライターやったことありますが、さすがにこんなには書けないですね(w

開発は既存の改善弾に適用出来るBlock1と、より性能を向上させたBlock2の2つに分かれています。Block1はASM-2B改善弾のように既存品に対して主にソフトウェア改修や付属品の更新による改善弾みたいなものでしょう。

管理人の仕様書を一読しての面白いなと感じたのは以下です。

@UTDC(Up To Date Command)に拠る近接信管の動作停止機能

A電子戦対処機能を有すること


@についてミサイル側が射撃統制装置から、発射後においてもかなり統制されることです。指令自爆機能を持つのは勿論ですが、目新しいのは以下の機能です。

附属書4 誘導弾(B 1 o c k 1)

2 .6  機能 ・性能
2. 6. 1  機 能
b) 誘導制御部

ア.、、、なお、ホーミングヘッドは、 射撃統制装置から発射装置を経由して受信する目標の類別結果に基づいて、近接センサに対して弾頭 の起爆を制御する信号を出力できるものとする。

エ .、、、なお、 近接センサは、ホーミングへツドからの指示に基づき、弾頭を起爆させるための信号を出力しない機能も有すること。

引用元: 4−05−2004−582A−AD−0003
防衛装備庁試作仕様書
03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上


つまり、発射後にUTDCの指令によって近接信管の機能を殺す(=直撃)モードにすることが出来ることになります。これにより、航空機や巡航ミサイルのような目標には近接信管による起爆で弾片をばらまくことでPK率の向上を諮り、弾道弾のような目標には直撃の運動エネルギーをもって目標を確実に破壊するという2つの方式を選択できるようになります。

イスラエル ラファエル社製Iron Domeの発射シーン


Iron Domeは重要目標へ飛来する目標にはSTS(Shoot To Shoot)射撃で連射を行い、そうでないものは単発で対応するそうです。映像をよく見るとSTSで発射した場合、最初の1発目で目標を破壊した際は既に発射された2発目は指令自爆させているように見えます。

この仕様書の中に従来のミサイルの仕様書で余り見かけない文言が出てきます。

附属書6 対空戦闘指揮装置(Blockl) 用 ソフトウェア

2.4 機能・性能
2. 4. 1  機能

イ. 目標変換等幾能
(ア )射撃の禁止機能
発射指令を禁 止し て、目標指定を解除できるこ と。
(イ )射撃の控置機能
発射指令を禁止 して、新たな射撃を行わないよう指令できること。
(ウ) 目標変換機能
交戦を打切り、新たな目標へ交戦の指示ができるこ と。


これはSTS射撃の際に、次弾として待機しているミサイルを一旦発射禁止にして、目標指定を解除し新たな目標へ指向させるということでしょう。STS射撃は確実性が高い反面、無駄弾が出る可能性も高いですから、タマの消費を抑えるという意味で有効だと思われます。


Aについては以下の文言が出てきます。
附属書7 射撃統制装置(Blockl) 用ソフトウェア

2,4 機能・性 能
2. 4. 1  機能
f)情報収集機能
オ 電子戦対処能
(ア) ES情報及び電子妨害機情報を収集できるこ と。

用語及び定義
32 ES Electronic Supportの略
敵の電子的情報(電波)を分析し、電波諸元等を分析することにより、敵に対する妨害(ECM :Electronic Counter Measure) 又は対妨害(EP)の手段選択の支援のための機能


つまり、相手のレーダーや電子妨害波などの電子戦情報を収集して持ち帰れるようにするということです。戦闘機などに搭載されているRWR(radar Warning Receiver)、例えばF-15Jに搭載されているAPR-4はRECモードがあり、パイロットの操作により受信情報をデータとして持ち帰れるようになっています。F-2はRWRと言わず、わざわざESM(electric Support Measure)と呼んでいることから、もっと広範囲な情報を収集できると思われます。意外なのはC-2輸送機で、海外任務に従事する関係上、RWRを装備してそれなりの電子情報収集機能を持っているそうです。

特に地対空ミサイルシステムの場合は、レーダーを備えている訳ですから、レーダー情報と受信した電波情報の双方を持ち帰ることが出来ることから、より精度が高い情報を持ち帰れることになります。

令和6年度調達予定品目(中央調達分)で艦船用としてSAAB社製電波探知装置CRS−NAVAL、電波探知装置SME−150の導入が伝えられましたが、陸海空の各プラットフォームの電波情報収集機能を強化する動きは注目に値するでしょう。

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2024年07月06日

【祝】新型無人標的機Bansee Jet 80導入

■第101無人標的機隊 へ無人標的機Bansee Jet 80が導入された

■Banseeは小型無人標的機の世界標準たる存在

■最低飛行高度5mで巡航ミサイルも模擬できるBanseeは訓練の高度化をもたらすだろう


先日、Xにて第101無人標的機隊 がBanseeの飛行訓練を実施していることが公開されました。

https://x.com/NA_1AAB_PR/status/1809040720403312693

FireShot Capture 00x.com.png

写真を見ると、この機体はBanshee Jet 80又はその発展型であるJet80+のように見えます。後部から見るとジェットエンジンのノズルらしきものが2つ確認できるので、双発であるBanshee Jet 80シリーズなのは間違いないと思いますが、+か無印かどうかは外観では余り分かりませんでした。+の方は静止推力が無印の40kg x2から、45kg x2へパワーアップされていて速度や航続時間も向上しています。

Banshee Jet 80+(写真はBanshee Jet 80)
https://www.qinetiq.com/en/what-we-do/services-and-products/banshee-jet-80-plus

1080px-QinetiQ_Jet_Banshee_80_Lippujuhlan_päivän_2017_kalustoesittely_2.jpg
画像引用元: By MKFI - Own work, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=60041234

管理人のような古い人間はBanseeは各種えい航標的でおなじみのMeggitt社の製品だと思っていたのですが、Meggitt社は2016年に無人標的機部門( Meggitt Target Systems)を英国QinetiQ 社へ売却しており、現在は QinetiQ社の製品のようです。

浅学のため、QinetiQ社という会社は存じ上げなかったのですが、、英国ハンプシャー州ファーンバラに本社を置く多国籍防衛技術企業なんだそうです。まぁ、民間軍事会社みたいなものですかね。

QinetiQ社
https://www.qinetiq.com/en/

管理人はBansheeとは若干の係わりがあり、本邦へ導入されないものかなぁと常々思っておりました。何しろ、この機体はその優秀さから英国本国のみならず世界各国で採用されていますし、値段もCHUKARIII(BQM-74E)なんかと比べてもかなり安いんじゃないでしょうか。

そんな中、第101無人標的機隊がBansheeしかも最新型のBanshee Jet 80を導入したのを知って驚いたと共に、このBansheeはどういう位置づけ何だろうと考える訳です。というのは、第101無人標的機隊は短SAM等ミサイル射撃時用の高速標的機として既に2つの機種を運用しています。

一つはお馴染みの高速標的機 CHUKAR-V

cyaka3.jpg
画像引用元: 第1高射特科団 https://www.mod.go.jp/gsdf/nae/katudou/1aab/butai_syoukai/equipment.html

もう一つは新高速標的機(FB型) 航空事業部のJ/AQM-2の陸上発射版です。

fb.jpg
画像引用元: 第1高射特科団 https://www.mod.go.jp/gsdf/nae/katudou/1aab/butai_syoukai/equipment.html

つまり、既に高速標的機が2つも存在しているのに新たに高速標的機を導入しようというのです。

こちらの写真を見ると、翼端に赤外線バーナーのようなものが見えます。ということは、こちらの標的は主に短SAMやMANPADSの標的となるようです。

GRsAu2QaUAEoYUx.png
画像引用元: X 第1高射特科団【公式】@NA_1AAB_PR

さて、新たな高速標的機を導入する理由ですが、以下ではないかと考えています。

●米陸軍がJet 80+を MQM-185Bとして導入している
これが影響した可能性はあるでしょう。(訓練などで相互に融通できる)

 QinetiQ to deliver unique Banshee Jet 80+ target system to US Army
 https://www.qinetiq.com/en-gb/news/qinetiq-to-deliver-unique-banshee-jet-80

●巡航ミサイルを模擬できる
Banshee Jet 80+の最低飛行高度は5 metres (16ft) ASLであり、また統合GPS、自律航法ポイント・ナビゲーション、デジタル・テレメトリーシステムを搭載している。現状の本邦の無人標的機で巡航ミサイルを模擬できるのはASM-2から派生した巡航ミサイル模擬標的位じゃないでしょうか。

今後、本邦の高射特科には11式短SAMや現在開発中の新近SAMなど、見通し線外射撃能力を持つミサイルが主力となっていくので、超低空で飛行して巡航ミサイルを模擬できるBanshee Jet 80+のような無人標的機は重宝されるでしょう。

また、製品カタログでは以下のように謳われています。
Banshee have been used by customers to test the
effectiveness and operational readiness of weapon systems including:

-Air-to-Air Missiles: Meteor, AMRAAM, Aim-7 Sparrow, Aim-9 Sidewinder, IRIS-T, MICA, Aspide, and R550 Magic Missile

– Ground/MANPAD/Surface-to-Air Missiles: Stinger, AKASH, Sea Wolf, Mistral, Sadral, Rapier/Jernas, HVM,
Simbad, Crotale, Blowpipe, Javelin, Starburst, Starstreak, Sea Sparrow, ESSM, SPYDER, NASAMS, SM1, SM2 Hawk,and Patriot

– Guns/Cannon Systems: Phalanx, Sea Zenith, Seaguard, AHEAD, Goalkeeper, plus a range of large/medium cal naval guns and cannon systems (20mm-155mm)

引用元: Banshee Jet 80+ Product Sheet

陸海空の数多くのタマの訓練に対応できる多用途ぶりです。無人標的機の機種を統一して大量に調達すればコストも下がるでしょう。序に運用は民間へ委託しても良いかもしれません。

最後に気になったのは巨大なラウンチカタパルトです。

GRsAqVebMAIfy5g.png
画像引用元: X 第1高射特科団【公式】@NA_1AAB_PR

こちらはRobonic Ltd Oy というフィンランドの会社の製品のようです。

ROBONIC KONTIO (MC2555LLR) PNEUMATIC UAV LAUNCHER
https://www.robonic.fi/wp-content/uploads/2012/10/MC2555LLR_RGB.pdf

ハセガワ 1/48 UF-104 スターファイター(J型) 航空自衛隊 硫黄島無人機運用隊 07527スタ-フアイタ-イオウジマムジンキ [07527スタ-フアイタ-イオウジマムジンキ]

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2024年06月15日

令和6年度調達予定品目(中央調達分)

■令和6年度調達予定品目(中央調達分)が公開された

■無人機やネットワーク、自己防御機材、情報収集機材などの項目は注目に値する


ネタが無いので、公開された令和6年度調達予定品目(中央調達分)の中身でも確認してみようと思います。一見すると、時代の移り変わりを感じますね。目についたものを挙げていきます。

令和6年度調達予定品目(中央調達分)
https://www.mod.go.jp/atla/souhon/pdf_choutatsuyotei/13_yuchou_r06.pdf

〇精密砲弾(試験用)用信管測合・射撃統制装置(陸自)
これがM982 エクスカリバーなのか分かりませんが、精密砲弾は契約先がヨーロッパの商社の日本法人(GTAj社)なので、M982 エクスカリバーなのかもしれません。元はボフォース社とレイセオンとのジョイント事業なので、ボフォース社に近い商社が商権を得たのでしょう。
本邦でも信管型の精密誘導砲弾の研究をしていた筈ですが、タマの融通を考えると、 エクスカリバーの運用能力を持つのはアリでしょう。

M982 エクスカリバー
XM982_Excalibur_inert.jpg
画像引用元: United States Army - http://news.cnet.com/2300-1008_3-6243124-4.html [1] (credits U.S. Army), パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4329097による

<追記>
これはイタリアの軍需企業Leonardo社の155mm誘導砲弾VULCANOの可能性が高そうです。

https://www.mod.go.jp/gsdf/dc/cfin/html/img/i206-R6.7.17.pdf

VULCANO 155
https://electronics.leonardo.com/documents/16277707/0/Vulcano+155+%28MM08723%29_HQ.pdf?t=1671440640166

〇84mm無反動砲(M4(試験用))(陸自)
そりゃそうでしょうという感じ。

カールグスタフ M4
1280px-Carl_Gustav_M4_(1)_(brightened,_no_background)_(leveled).png
画像引用元: By User:Reise Reise - File:Carl_Gustav_M4_(1).jpg, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=128424917

〇MDMSインストレーション・キット改1、高速えい航標的(海自)
日飛さんは曳航標的関連は撤退した筈なんですが、まだ続いているんですかね。なお、MDMSインストレーション・キット改1は標的に内蔵される射撃評価装置です。輸入品で、標的の製造会社へ官給されます。

高速えい航標的
1272px-JMSDF_JAQ-5_High-speed_guided_missile_target_system_at_Iwakuni_Air_Base_20150503.jpg
画像引用元: Hunini - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=39993393による

〇40mmてき弾(空自)
なんで、空が40mmてき弾を装備するんでしょう。基地警備用?

40mm×53弾
M430a1.png
画像引用元: CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=9663680

〇艦艇用リフレクタ型デコイ弾(在空型)器材、艦艇用リフレクタ型デコイ弾(浮遊型)器材(海自)
浮遊型はIHIさんのTOREROでしょうか。在空型というのは分かりませんが、従来のチャフ弾とは違うようです。

TORENO CORNER REFLECTOR
radar_decoy.png
画像引用先: http://www.chemringenergetics.co.uk/~/media/Files/C/Chemring-V3/documents/countermeasures/updated%20datasheets/naval%20datasheets/58684.pd

〇輸送機搭乗員用暗視眼鏡(空自)
C-2やC-130H用でしょうか。今からコックピットの適合化改修するとしたら、C-2用かもしれませんね。しかし、輸送機パイロットがNVGを装備するとは時代も変わりましたね。

C-130のNVG適合化コクピット
United_States_Air_Force_C-130_08-3174_Position_of_the_NVG_Case.jpg
画像引用元: By United States Air Force - http://aerossurance.com/safety-management/c130j-control-restriction-crash/, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=112615501

〇ハイブリッドえい航索、えい航標的、標的えい航装置RM−30A1(海自)
UP-3D用新型曳航標的機材です。今後は米国メギット社からの輸入になります。

多用途機UP-3D
Up-3d_01l.jpg
画像引用元: 海上自衛隊, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=57297802による

〇12.7mm狙撃銃用徹甲弾(その1) 、12.7mm狙撃銃用徹甲弾(その2)、12.7mm狙撃銃用普通弾(海自)
某蝙蝠サソリ部隊が装備しているM82とGM6用ですかね。

GM6 Lynx
GM6Lynx.jpg
画像引用元: By Author - https://www.deviantart.com/marcusburns1977/art/GM6Lynx-1018618575, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=145096712

〇MK52(共通戦術装輪車(歩兵戦闘車))(陸自)
7.62mm機関銃Mk.52ブッシュマスターです。機関銃は輸入品へ置き換わりつつあるようです。

7.62 mm Bushmaster Chain Gun Mark 52
http://www.navweaps.com/Weapons/WNUS_762_Chaingun_mk52.php

〇ミサイル警報装置(ALTAS−2QB・SH−60L用)
レーザー関連 (Laser Range Finder or Laser Target Designator and Laser Beam Rider)に対する警報装置です。陸なら兎も角、海の機体に積むとはビックリです。

ALTASレジスタードマーク-2Q
https://dam.hensoldt.net/m/243a32a2570b39b3/original/ALTAS-2Q-English.pdf

〇電波探知装置CRS−NAVAL、電波探知装置SME−150(海自)
かなり以前からテストを行っていたSaab社製コミント、エリント機材です。これで護衛艦に通信情報収集手段が与えられることになります。

CRS-NAVAL
https://www.saab.com/globalassets/markets/colombia/press-releases/sitdef/crs-naval.pdf
SME-150
https://www.saab.com/contentassets/5e2c4f2d362241feba49ba7cd320716d/surface-tactical-esm-and-elint-product-brochure.pdf

イタリア海軍パオロ・タオン・ディ・レヴェル級哨戒艦「フランチェスコ・モロシーニ」のマスト頂上に見えるのがCRS-NAVAL
1082px-Francesco_Morosini_(P-431)_right_front_view_at_JMSDF_Yokosuka_Naval_Base_June_27,_2023_04.jpg
画像引用元: By Hunini - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=134228992

〇戦術データ交換システム端末(UH−60J用STT)(空自)
STTはSmall Tactical Terminalの略でヘリ、車両などに搭載可能なLink-16 + VHF/UHF データ無線機。MIDS-LVTより安価で軽量。単体でゲートウェイが可能なので、地上へ展開したattack controllerを無線中継するなんて芸当も可能だと思われます。

SMALL TACTICAL TERMINAL (STT) KOR-24A
https://www.l3harris.com/sites/default/files/2023-02/cs-bcs-kor-24a-small-tactical-terminal-stt-sell-sheet.pdf

USAF TACP JTACs calling for close air support at Contingency Operating Post Jaghato, Afghanistan, May 1, 2010
1080px-USAF_TACP_in_Afghanistan.jpg
画像引用元: https://www.flickr.com/photos/39955793@N07/ (DoD photo by Spc. De'Yonte Mosley, U.S. Army/Released)

〇対空射撃標的(CM)地上支援器材借上、対空射撃標的(CM)補用品(装備庁)
基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾の試験用の標的なんでしょうね。なお、このミサイルはどうやらUTDCによってLOAL能力を得ているようです。

基地防空用地対空誘導弾(改)及び新近距離地対空誘導弾
https://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/rev_suishin/r02/pdf/03-0008.pdf

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2024年05月26日

SM-2は何故外れたか

■紅海で作戦中のドイツ海軍のフリゲート艦ヘッセン(F221)は2発のSM-2を発射したが両方とも目標を外した

■目標は味方機(MQ-9)だったので外れたこと自体は幸運であった

■高価なSM-2が無人機に無力であったことは深刻

■本件の背景にはドイツ海軍の抱える深刻な問題が伺えれる


1080px-Fregatte_Sachsen_(F_219).jpg
SM-2MRを発射する同型艦「ザクセン(F219)」
画像引用元: By Bundeswehr-Fotos - originally posted to Flickr as Fregattee SACHSEN, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11538413


ご無沙汰してます。
新しい機体(バイク)が来たので、電子戦システムの装備作業とOFPの改修作業を行っておりました(^^)

最近、CIMSECのサイトに大変興味深い記事が掲載されました。

ANALYZING THE GERMAN FRIGATE HESSEN’S NEAR-MISS OF A U.S. DRONE IN THE RED SEA
(紅海でドイツのフリゲート艦ヘッセンが米軍無人機にニアミスした事の分析)


https://cimsec.org/analyzing-the-german-frigate-hessens-near-miss-of-a-u-s-drone-in-the-red-sea/

今年の2月26日に紅海で作戦行動中のドイツ海軍のフリゲート艦ヘッセンが接近する未確認航空機(実際は味方の無人機MQ-9)に対して2発のSM-2を発射したところ、両方とも外れてしまったというものです。こちらの記事ではこの事案の背景として現状のドイツ海軍が抱える深刻な状況について軍人らしい詳細な分析が為されていますが、本サイトではSM-2が何故外れたに絞って考察してみたいと思います。

1007px-MQ-9_Reaper_-_071110-F-1789V-991.jpg
MQ-9 リーパー
画像引用元: By U.S. Air Force photo by Master Sgt. Robert W. Valenca - http://www.af.mil/shared/media/photodb/photos/071110-F-1789V-991.jpg, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11200064

まず、みんな大好きwikiの記事を参照してヘッセンはどのような艦なのか確認してみます。

ザクセン級フリゲート

ヘッセンは2006年就役のザクセン級フリゲートの3番艦であり、対空レーダーはタレス社の以下の2種類が装備されています。
・SMART-L
・APAR 多機能型


また、艦載のt対空戦闘システムはNAAWS(NATO Anti-Air Warfere System: NATO対空戦闘システム)が搭載されており、これもタレス社の製品ですが、1番艦のザクセンの発注が1996年であること、及び仕様ユーザーがドイツ、オランダ、デンマークの3艦種のみであることを考えると若干古め(故にUAVなどの新しい脅威が余り想定されていない、、)で且つ余り流行らなかったシステム(故にアップデートも微妙、、)と言えるかもしれません。

発射されたミサイルは本邦でもお馴染みのSM-2MRですが、こちらはRTX社(旧レイセオン)の製品でNAAWSによって管制され、MK41VLSから発射されていたとなると、モノはSM-2MRブロックIIIA(RIM-66M-2)でしょう。

1048px-RIM-66_(SM-2)_being_assembled_.jpg
組み立て中のSM-2MRミサイル
画像引用元: U.S. Navy - http://www.navy.mil/view_photos_top.asp, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3271202による

ミサイルの誘導方法は初期・中期は指令(UTDC)付き慣性誘導で、終末誘導はAPARのICWI(Interrupted Continuous Wave Illuminator: 間欠連続波照射)によるセミ・アクティブ誘導です。これは本邦のFCS-3やOPY-1などと同様です。というか。本邦のシステムはAPARの技術を部分的に導入しています(これの導入の経緯は結構生臭い話があったりします)。

さて、ミサイルが発射された際の状況です。

・2/26にヘッセンが作戦行動中に未確認の無人航空機(UAV)が接近しているのを探知した

・無人航空機からIFFの返信は無かった

・上級司令部と協議後に2発のSM-2を目標に向けて発射したが両方とも外れた

・無人機は巡行飛行中(200kt以下)であり、ドローンは艦と平行に飛行していた( the drone flew parallel to the vessel)、

ミサイル2発の発射間隔は分かりませんが、恐らくSTS射撃(Shoot To Shoot)だったんじゃないかと思います。

ここまでピンときた方がおられるかもしれません。

つまり、まとめると

・目標は低速な無人機だった
・目標は艦と同航で飛行していた
・ミサイルはセミ・アクティブ誘導のSM-2
・対空管制システムはやや古めだった


ということになります。

実は考察するまでもなく、記事の中でクロスレンジ効果の影響として語られています。

11.jpg
ストリップマップ方式合成開口レーダ
画像引用元: 電気情報通信学会 「遠隔情報センシングシステムにおける信号処理技術」
     https://www.journal.ieice.org/conts/kaishi_wadainokiji/200202/200202-6.html

上の図は ストリップマップ方式合成開口レーダのものですが、感覚的に分かり易いと思い流用させていただきました。つまり、電波を発している母機と目標は平行で且つ低速で進行しており、その反射波には相手の速度成分(ドップラー偏移)が載り難い状況が分かると思います。

以前、本ブログでセミ・アクティブレーダー誘導ミサイルの誘導において、目標の速度成分が非常に重要であることを述べさせていただいておりますが(結局はデコイしかない)、ミサイルは発射する際に目標の速度レンジを設定してます。つまり目標の速度はこれ位だから、そこから外れた目標は無視せよと設定されている訳です。なので低速で且つ、平行に飛行する目標はセミ・アクティブレーダー誘導ミサイルは非常にやっかいな目標な訳です。

本来であれば、その辺りの差を射撃管制システムや熟練した乗組員が補完してくれるでしょう。しかし、記事によるとシステムは古めで且つ技術サポートやレーダーオペレーターなどの高度なスキルを持つ専門家は大幅に不足し、また軍縮のあおりで実射訓練等の機会も限られていたとなるとこの状況にうまく対応できなかったことが考えられます。

昨今のドイツ連邦軍の体たらくぶりは度々耳にしますが、本邦もこれを他山の石としなくてはならないでしょう。

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2024年05月01日

電波妨害弾1型のwikiを書きました

輸送機用機雷投下装置に続き、調子こいて電波妨害弾1型のwiki記事を書きました。

丁度、管理人が三宿に通っていた頃に船開でやってたんですね。これ。

主に特許情報から調べていたんですが、想像通り距離欺瞞を主に行うものでした。

航空事業部のJ/ALQ-9が主に速度欺瞞を行うものだったのに比べると面白いです。

GW中にでもご笑覧ください(^^)

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