2020年07月12日
【複雑】アミノ酸と味
天然に存在するアミノ酸は二十数種あり、ほとんどすべてのアミノ酸が各種の食品中に存在します。このアミノ酸の量は、食品によってそれぞれ異なり、これに伴い、食品の味も相違します。食品それぞれが持つ遊離アミノ酸(たんぱく質の構成成分とならず、アミノ酸のまま存在しています)組成をアミノ酸パターンと呼びます。
緑茶中には、グルタミン酸が多く、お茶の特徴となります。
ウニには、グリシンやアルギニン、アラニン、リジン、メチオニン、グルタミン酸が多く含まれています。食品のアミノ酸パターンを見ると、その呈味成分中どのアミノ酸が重要であるかを指摘することができますが、その成分だけでは特有の味にはなりません。他の少量存在するアミノ酸も加わって、個々の食品特有の味となります。ウニからグルタミン酸を除くとうま味が減少し、グリシンとアラニンを除くと甘味が減少し、苦みが立ち、ウニの香りが弱くなります。バリンはウニ特有の苦みに不可欠な成分で、メチオニンはウニ特有の香りの発現に必要です。メチオニンを省くとエビやカニのような味になります。ウニの場合、グリシンやアルギニン、アラニン、リジン、メチオニンなどが主体となりますが、これだけでなくその他のアミノ酸が、一定の割合で加わってこそ、はじめてウニ本来の美味しさが出現します。食品メーカーでもウニなどのアミノ酸パターンを模倣して、アミノ酸の配合だけで、ウニを含まずにどれだけウニに近づけるかを検証していますが、ウニにはなりません。
ズワイガニには、グルタミン酸やグリシン、アラニン、アルギニンが多く含まれます。グルタミン酸を除くとうま味と甘味が減少し、カニらしい風味が消失します。グリシンは甘味とうま味に、アラニンは甘味に寄与しています。アルギニンを除くと味全体のバランスがくずれ、カニの風味が失われます。
ホタテ貝には、グルタミン酸、グリシン、アラニン、アルギニンが多く含まれます。ホタテ貝特有の強い甘味は、グリシンによるものです。グルタミン酸はうま味に、アラニンは甘味に寄与しています。また、ホタテ貝はグルタミン酸とシステイン、グリシンから成るトリペプチド(アミノ酸が3つ結合したもの・アミノ酸が50個以上結合したものがたんぱく質、2個以上50個未満のものはペプチドと呼ばれます)のグルタチオンを多く含みます。グルタチオンは活性酸素の除去など、高い抗酸化作用を有しています。
カツオ節の呈味成分は、グルタミン酸、リジン、ヒスチジンなどのアミノ酸とイノシン酸です。ヒスチジンはカツオやマグロ、サバなどの赤身魚に多く含まれる成分であり、だしに酸味とうま味を与える効果があります。
トマトの呈味成分は、グルタミン酸やアスパラギン酸などのアミノ酸とぶどう糖、クエン酸です。
かにかまは、主にスケソウダラを原材料とした風味や食感、形、色などをカニの身に似せて作られた蒲鉾です。スケソウダラのすり身にボイルしたカニの煮汁(香気成分やアミノ酸などが含まれます)とグルタミン酸やグリシン、アラニン、アルギニンなどのアミノ酸を加えることで、カニの風味が付与され、お馴染みのかにかまになります。
アミノ酸は様々な食品に含まれ、その食品の特徴的な味を形成しています。食品のアミノ酸パターンを見ると、その呈味成分中どのアミノ酸が重要であるかを指摘することができますが、その成分だけでは特有の味にはなりません。他の少量存在するアミノ酸も加わって、個々の食品特有の味となります。
また、ウニやカニ、ホタテなどを食べるときは、アミノ酸の味を意識して楽しんでみてはいかがでしょうか。
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/10024481
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。