2020年07月10日
【万全を期す】食品メーカーの異物混入対策
食品メーカーでは、異物混入に対し、さまざまな対策を講じています。即席めんの具材となる乾燥野菜などの農産物の場合は、振動するふるいによる小さな異物の除去、比重選別機による小石や泥土の除去、風力選別機による重量の軽い異物などの除去、色彩選別機による色の異なる個体の除去を行います。最終的には、長さ3メートル、幅1.5メートル程度のテーブルに4〜6人が並んで立ち、人海戦術による目視検査をおこないます。このテーブルは、工場1室に100以上置かれていることもあります。食品に異物混入があった場合は、人命にかかわる致命的な事件にまで発展する可能性があります。このような状況下で、HACCP(ハサップ)、つまり食品メーカーなどが自社で異物混入や食中毒などの危害要因を把握し、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために、特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法が広まりつつあります。この手法は、 国連の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格 (コーデックス) 委員会から発表され,各国にその採用を推奨している国際的に認められたものです。
このように食品メーカーでは万全を期して、非常に厳しい品質管理体制を整えていますが、現在でも食品の異物混入は、一向になくなっていません。実際に、さまざまな異物混入についての事例が見受けられます。この事例の一部を紹介します。
表が示す通り、食品メーカーで発生しやすい異物混入の事例は、昆虫や金属片などの鉱物、カビや細菌などの微生物、従業員由来の髪の毛などです。
食品メーカーの異物混入を防ぐためのさまざまな対策を紹介します。
昆虫の混入は、工場中に侵入した昆虫が製品に混入する場合と工場で使用する原材料に付着している場合とがあります。工場に原材料を搬入する際、あるいは製品を搬出する際にトラックを横付けし、工場側に2重に設置しているシャッターを互い違いに開閉して、フォークリフトやハンドリフターで作業を行いますが、さまざまな対策にもかかわらず、ここでの混入も考えられます。また、原材料に付着した昆虫が食品に混入する場合は、原材料受け入れ時と製品出荷時のさらなる検査体制の確立が求められます。
金属片などの異物は、工場内で使用している加工設備が劣化により摩耗、製造工程中に破損することで混入します。工場としても早めの部品交換や万が一の発生に備え、後の工程でマグネットによる除去、X線異物検出機や金属探知機を設置し、混入の防止対策を図っています。
付着しているホコリや微生物の混入も、食中毒など健康被害に繋がる危険性があります。製造に従事する作業者は、作業場所に入る前にホコリなどが付着し難い素材の作業服に着替え、帽子、マスク、ゴーグルをつけ、長靴に履き替えます。粘着性のあるローラーでさらに作業服のホコリをとり、次亜塩素酸ナトリウムなどの入った5p程度の水位のプールのようなところで長靴を除菌洗浄し、水道前でマニュアルにそって徹底的に手を洗います。さらにエアシャワー室で念入りにホコリなどを取り除き、やっと作業場所に入ることができます。 製造に従事する作業者は、異物混入を防ぐための教育を受け、爪や髪の長さ、健康状態に注意を払い、作業場所に入る前にチェックする取り組みを行っています。
防虫対策
1 段ボールやクラフト袋は作業場所に持ち込みこまず、前室で開封する
2 ゴミは蓋つきで密閉度の高いゴミ箱に捨てる
3 シャッターやドアは短時間で開閉し、確実に閉めたことを確認する
4 空調設備の吸気口、送風口にフィルターを取り付ける
髪の毛やホコリ対策
1 帽子に髪の毛を入れる
2 粘着ローラーで毛髪やホコリをとり、エアシャワーを通って工場内に入る
微生物対策
1 紫外線やアルコールなどで設備を消毒する
2 原材料は、適正な温度、適正な場所で保管する
3 原材料の使用期限の遵守する
4 作業者の健康管理や手洗い、マスクの着用を徹底する
設備や備品の対策
1 点検リストを作成し、定期的に点検を行う
2 私物は一切持ち込まず、筆記用具は最低限とし、どうしても必要な場合は、持ち込み数のチェックリストを作成の上、作業終了時に点検を行う
製品及び原材料の対策
1 金属片などの鉱物性異物を取り除くために、マグネットやX線異物検出機、金属探知機を設置し、チェックする
2 異物などが付着している可能性がある原材料には、目視選別に加え、振動ふるいや比重選別機、色彩選別機、風力選別機を用いてチェックする
食品メーカーは、異物混入や食中毒などの危害要因を把握し、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去するために、さまざまな対策を講じて、製品の安全性の確保を図っています。
しかしながら、現在も食品への異物混入を完全に防ぐことができていません。異物混入経路は多岐にわたりますが、製品は人が口にする食品であるかぎり、異物混入対策に終わりはありません。
私も含め、食品メーカーのひとりひとりが、製品に異物を混入させないという意識を常に持って、取り組まなければならないと考えています。
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