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2020年07月11日

【注意】食中毒とその予防対策

食中毒の発生状況

 厚生労働省の2019年の食中毒統計資料によると全国で1,061件発生し、患者数は13,018名、亡くなった方は4名となります。亡くなった方の内3名は家庭、1名は仕出屋の食品によるものです。

abdominal-pain-2821941_1920.jpg



図1.jpg


 食中毒の主な原因は、カンピロバクターやサルモネラ属菌、黄色ぶどう球菌、セレウス菌、腸管出血性大腸菌O157などの細菌、ウイルス、寄生虫、化学物質、自然毒です。

図2.jpg



 食中毒とは、食中毒を起こす細菌やウイルス、有毒な物質が付着した食品を食べることによって、げりや腹痛、発熱、吐き気などの症状が出る病気です。食中毒の原因によって、症状や病気になるまでの時間はさまざまです。時には命にもかかわります。






 食品メーカーだけでなく、飲食店やホテル、学校、病院など食品を加工及び提供する事業者は、食中毒予防に徹底した対策をとっています。しかしながら、食中毒の事件は、毎年多数報告されています。全国に販売を展開する食品メーカーが食中毒を発生させてしまうと、被害者数は甚大です。2000年に起きた大手乳業メーカーの集団食中毒事件では、被害者数は14,780人にものぼります。工場の停電により冷却装置が停止し、黄色ぶどう球菌が増殖、毒素が発生したことが原因です。被害者は、嘔吐や下痢、腹痛など比較的軽い症状が多いものの、入院となったケースもあります。





 患者数がもっとも多い食中毒の原因は、ウイルスとなり、そのほとんどはノロウイルスによるものです。ウイルスが付着している食品や感染者を介して、ウイルスが口に入ることで引き起こされます。次いで細菌となります。細菌による食中毒は、食中毒を引き起こす細菌が食品と共に口に入り、腸粘膜細胞内に侵入する感染型と腸管内で毒素を産生する毒素型とがあり、下痢、腹痛、嘔吐、発熱、頭痛などの症状を引き起こし、数日から2週間程度続きます。感染型の代表的な細菌としては、サルモネラ菌、カンンピロバクター、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌などがあります。毒素型はさらに2つに分類されます。生体内毒素型は、細菌が腸管内で増殖し,産生された毒素により食中毒を引き起こします。代表的な細菌は、腸管出血性大腸菌O157やセレウス菌などです。食品内毒素型は、食品中で細菌が増殖し、産生された毒素によって、食中毒を引き起こします。代表的な細菌は、黄色ぶどう球菌、ボツリヌス菌などです。



食中毒の予防対策


 食中毒は、原因となるウイルスや細菌が食品に付着し、体内へ侵入することによって発生します。食中毒を防ぐためには、食品や調理器具などに付着させない、アルコールや次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤に含まれています)、加熱などで消毒することです。





・ノロウイルスの予防対策





 ノロウイルスは感染力が強く、腸管で増加します。次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤に含まれています)による調理器具の消毒に効果が認められます。





・腸炎ビブリオの予防対策





 腸炎ビブリオは海に生息している細菌です。食塩濃度3%前後で温度20℃以上になると増殖します。水道水で洗い流せば死滅します。腸炎ビブリオは、以前は発生頻度の高い食中毒でしたが、生食用魚介類の保存温度を10℃以下にする法規制もあり、著しく減少しています。原因となる食品は、刺身や寿司です。症状は、腹痛、下痢、発熱、嘔吐です。





・サルモネラ菌の予防対策





 サルモネラ菌は自然界に広く分布しています。特に卵、卵焼きや親子丼などの卵を使用した食品、鶏肉などで増殖し、食中毒の原因となります。サルモネラ菌の増殖を防ぐには、卵は冷蔵庫にて10℃以下で保存すること、賞味期限を守ること、調理時にはよく加熱すること、調理器具を消毒することです。症状は腹痛、下痢、発熱、嘔吐です。





・腸管出血性大腸菌O157の予防対策





 特に牛で保菌率が高く、肉や肝臓が汚染されていることがあります。原因となる食品は、焼肉やハンバ−グ、レバーなどです。対策としては、肉が褐色になるまで加熱すること、取る箸と食べる箸の区別をすること、調理器具を消毒することです。症状は腹痛、下痢、発熱、嘔吐に加え、ベロ毒素という強力な毒素が大腸の血管壁を破壊します。





・カンピロバクターの予防対策





 カンピロバクターの分布は、家禽や家畜などです。カンピロバクターは、酸素がわずかな環境を好み、酸素が十分にある大気中では増殖できません。増殖する温度は、30〜46℃で、家禽や家畜の消化管内で生息しています。原因となる食品は、鶏肉料理、ササミ、レバーなどです。対策としては、肉を褐色になるまで加熱すること、調理器具を消毒することです。症状は発熱、倦怠感、頭痛、吐き気、腹痛、下痢です。





・黄色ぶどう球菌の予防対策





 人や動物に広く分布しています。エンテロトキシンという毒素を産生し、毒素は100℃で30分の加熱でも無毒化されません。主な原因となる食品は、乳製品や卵製品、畜肉加工品、おにぎり、水産練り製品などです。冷蔵庫にて10℃以下で保存すること、賞味期限を守ること、調理時にはよく加熱すること、調理器具を消毒することが予防対策です。症状は吐き気、嘔吐、腹痛、下痢です。





・セレウス菌の予防対策





 自然界に生息し、農産物を広く汚染しています。毒素を産生し、芽胞は90℃で60分の加熱でも死滅せず、家庭用消毒剤も効きません。原因となる主な食品は、ピラフ、スパゲッティ、食肉、野菜などです。対策としては、作り置きしないこと、冷蔵庫で保存することなどです。症状は嘔吐、吐き気、下痢、腹痛です。





・ボツリヌス菌の予防対策





 自然界に広く分布しています。酸素のないところで増殖し、強い芽胞を作りますが、120℃で4分以上の加熱で完全に死滅します。ボツリヌス毒素は、80℃で30分の加熱で活性を失います。原因となる食品は、輸入キャビアやレトルトに類似した真空パック食品(辛子レンコン)、瓶詰食品、蜂蜜、いずしなどです。症状は、吐き気、嘔吐、筋力低下、脱力感、便秘、呼吸困難などが挙げられます。なお、レトルト食品は、あらゆる菌が死滅しています。




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まとめ

 厚生労働省の2019年の食中毒統計資料によると全国で1,061件発生し、患者数は13,018名、亡くなった方は4名となります。食中毒を引き起こすウイルスや細菌は、自然界に広く分布しているので、常に汚染の危険をはらんでいます。しかし、調理時によく加熱すること、調理器具を消毒すること、食品の保存条件を守ること、賞味期限を守ることなどの予防対策を実践することで、食品や調理器具の汚染を防ぎ、食中毒から身を守ることができます。


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