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2021年02月26日

【効率的なエネルギー源】脂質代謝


 動植物は脂質を不溶性のトリアシルグリセロールの形で大量に蓄え、エネルギーが必要になるとすみやかに動員し、分解してエネルギーを取り出します。代表的な脂肪酸であるパルミチン酸が完全燃焼すると、自由エネルギーは大幅に減少します。





 C16H32O2+23O2→16CO2+16H2O





 ΔG=−2,340kcal/mol





 この減少は脂肪酸の飽和アルキル基が酸化されるためです。食品の内、これほど大きなエネルギーを与えるのは長鎖脂肪酸だけで、脂質は栄養素のうち最も高いカロリー値を持ちます。動物細胞は、エネルギーを主としてトリアシルグリセロールとして貯蔵します。動物が大量に蓄えうるのは脂肪だけで、カロリー摂取が消費量を上回ると超過分は脂肪として蓄えられます。





 トリアシルグリセロールは、小腸で胆汁酸と酵素リパーゼの作用を受け、遊離脂肪酸とモノアシルグリセロールに分解されます。遊離脂肪酸、モノアシルグリセロールは、ミセルとして小腸上皮細胞に吸収され、小胞体で酵素の作用を受け、トリアシルグリセロールとなります。新たに合成されたトリアシルグリセロールとリン脂質、コレステロール、たんぱく質などが上皮細胞の小胞体で組み合わさり、キミクロンとして胃腸のリンパ管に分泌されます。エネルギーが十分なときは、キミクロンは脂肪組織に運ばれ、脂肪として貯蔵されます。





 脂肪組織に入った遊離脂肪酸は、さまざまな酵素の作用で、トリアシルグリセロールに変わります。成熟した脂肪細胞では全容の99%がトリアシルグリセロールの滴粒で、それを包む薄皮状原形質の中に真核細胞としての全オルガネラがあります。人では皮下組織、筋肉、腸間膜組織に脂肪が沈着します。トリアシルグリセロールの貯蔵量は、40日間の絶食にも耐えられる量に達します。脂肪は、沈着したままでなく、絶えず溶出と沈着を繰り返しています。





 脂肪酸を分解するβ酸化系の酵素は、動物ではすべてミトコンドリア内膜と内部マトリクスに局在しています。これは長鎖脂肪酸のエネルギーを効果的に取り出し、ATPにするのに極めて重要です。パルミチン酸が完全酸化でCO2とH2Oになると、遊離するエネルギーの41%は細胞が仕事をするために利用できるATPとして保存され、残りは熱として放出されます。食品の栄養素として、脂肪が効率的なエネルギー源であることは明らかです。



体内でのエネルギーの貯蔵


 動植物は脂質を不溶性のトリアシルグリセロールの形で大量に蓄え、エネルギーが必要になるとすみやかに動員し、分解してエネルギーを取り出します。代表的な脂肪酸であるパルミチン酸が完全燃焼すると、自由エネルギーは大幅に減少します。





 C16H32O2+23O2→16CO2+16H2O





 ΔG=−2,340kcal/mol





 この減少は脂肪酸の飽和アルキル基が酸化されるためです。食品の内、これほど大きなエネルギーを与えるのは長鎖脂肪酸だけで、脂質は栄養素のうち最も高いカロリー値を持ちます。



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 脂質は組織境界膜としても重要です。神経組織、形質膜、ミトコンドリア、細胞核など細胞内オルガネラの膜には複合脂質が必須です。また、複合脂質はミトコンドリアの電子伝達系や光合成が行われるクロロプラストの複雑な構造体の基本構成成分でもあります。





 動物細胞は、エネルギーを主としてトリアシルグリセロールとして貯蔵します。動物が大量に蓄えうるのは脂肪だけで、カロリー摂取が消費量を上回ると超過分は脂肪として蓄えられます。糖質はグリコーゲンとして貯蔵されますが、その量はわずかです。通常、肝臓のグリコーゲン平均含量は全重量の5〜6%、骨格筋ではわずか0.4〜0.6%です。グリコーゲンのもとになる血中ぶどう糖は、血液100ml中60〜100mg、病気のとき以外は大きく変化しません。正常状態で、動物はいろいろな組織の糖濃度をホルモンや代謝調節で一定に保っています。エネルギー貯蔵物質としての糖質の役割は大きくありません。





 たんぱく質は、糖質や脂肪と生物学的な意味が異なります。すなわち、生体のたんぱく質合成に必要な20種類のアミノ酸を供給し、プリン、ピリミジンなど窒素化合物の合成に必要なアミノ酸を与えます。成長が止まった成人では、窒素の排泄量は摂取量に等しく、余分に食べたたんぱく質はまったく貯蔵されません。



脂質の消化吸収


 トリアシルグリセロールは、小腸で胆汁酸と酵素リパーゼの作用を受け、遊離脂肪酸とモノアシルグリセロールに分解されます。胆汁酸(タウロコール酸とグリココール酸)は、脂溶性のステロイドと水溶性のタウリンやグリシンが結合した分子で界面活性剤です。





 胆汁酸、脂肪酸、モノアシルグリセロールでできるミセルは、非極性部分が中心に、極性部分が表面に向いています。ミセルは、脂溶性ビタミンやコレステロールの吸収も助けます。吸収されたミセル中の胆汁酸は、リンパ腺を通らず門脈を経て肝臓に戻り、胆嚢から胆汁酸として再利用されます。





 遊離脂肪酸、モノアシルグリセロールは、ミセルとして小腸上皮細胞に吸収され、小胞体で酵素の作用を受け、トリアシルグリセロールとなります。新たに合成されたトリアシルグリセロールとリン脂質、コレステロール、たんぱく質などが上皮細胞の小胞体で組み合わさり、キミクロンとして胃腸のリンパ管に分泌されます。キミクロンは、直径200nmの安定な滴粒で、たんぱく質0.2〜0.5%、リン脂質6〜10%、コレステロール2〜3%、トリアシルグリセロール80〜90%です。この滴粒は、小腸乳麋管(にゅうびかん)からリンパ管系に入り、胸管を経て血管に乳液状で分泌されます。





 エネルギーが十分なときは、キミクロンは脂肪組織に運ばれ、脂肪として貯蔵されます。しかし、エネルギー不足で貯蔵に回せないとき、キミクロンは赤色の骨格筋、心筋、肝臓で消費されます。このときキミクロンは、酵素で加水分解されます。この酵素は組織の毛細血管壁にあり、エネルギーが十分なときは脂肪組織での活性が高く、キミクロンから脂肪酸を遊離させて取り込みます。反対に飢餓状態のときは、脂肪組織脈管系でも活性は激減し、エネルギーの必要な骨格筋、肝臓、心筋で活性が高くなります。結局のところ、血液中のキミクロンは、脂肪組織で使われず、エネルギーの必要な組織に回されます。



脂肪組織


 脂肪組織に入った遊離脂肪酸は、さまざまな酵素の作用で、トリアシルグリセロールに変わります。成熟した脂肪細胞では全容の99%がトリアシルグリセロールの滴粒で、それを包む薄皮状原形質の中に真核細胞としての全オルガネラがあります。哺乳類や鳥類の脂肪細胞は、エネルギー貯蔵庫としての役割を持ちます。人では皮下組織、筋肉、腸間膜組織に脂肪が沈着します。トリアシルグリセロールの貯蔵量は、40日間の絶食にも耐えられる量に達します。一方、魚類では肝臓に沈着します。





 脂肪は、沈着したままでなく、絶えず溶出と沈着を繰り返しています。空腹や長時間の運動、突然の恐怖による緊張などストレスがかかると血中アドレナリンが脂肪細胞表面の特殊なレセプター部位に結合し、酵素反応を引き起こします。まずホルモン感受性リパーゼが活性化され、すみやかにトリアシルグリセロールをジアシルグリセロールと遊離脂肪酸に変えます。遊離脂肪酸は血液に入って、血清アルブミンと安定な複合体をつくります。





 血清アルブミンは、血漿たんぱく質の50%を占める分子量69,000の可溶性たんぱく質で、主に血液の浸透圧を調整しています。しかも、1分子で7〜8分子の脂肪酸と結合するため、脂肪酸の輸送に重要です。脂肪酸は、アルブミンに結合しないと水に不溶な溶血毒ですが、アルブミンと結合すると無毒可溶となり、肝臓に運ばれて利用されます。こうして血漿中の遊離脂肪酸濃度は、低く保たれています。



β酸化


 脂肪酸を分解するβ酸化系の酵素は、動物ではすべてミトコンドリア内膜と内部マトリクスに局在しています。ミトコンドリア内膜には、電子伝達系などの酵素も集まっており、これは長鎖脂肪酸のエネルギーを効果的に取り出し、ATPにするのに極めて重要です。





 パルミチン酸が完全燃焼すると大きなエネルギーが生じます。パルミチン酸1分子を分解するのに先立ち、ATP1分子が活性化に必要ですが、分解することでATP130分子が生成します。エネルギーの保存効率は、130×7.3kcal/2,340×100=41%となります。





 つまり、パルミチン酸が完全酸化でCO2とH2Oになると、遊離するエネルギーの41%は細胞が仕事をするために利用できるATPとして保存され、残りは熱として放出されます。食品の栄養素として、脂肪が効率的なエネルギー源であることは明らかです。



まとめ


 動植物は脂質を不溶性のトリアシルグリセロールの形で大量に蓄え、エネルギーが必要になるとすみやかに動員し、分解してエネルギーを取り出します。代表的な脂肪酸であるパルミチン酸が完全燃焼すると、自由エネルギーは大幅に減少します。





 C16H32O2+23O2→16CO2+16H2O





 ΔG=−2,340kcal/mol





 この減少は脂肪酸の飽和アルキル基が酸化されるためです。食品の内、これほど大きなエネルギーを与えるのは長鎖脂肪酸だけで、脂質は栄養素のうち最も高いカロリー値を持ちます。動物細胞は、エネルギーを主としてトリアシルグリセロールとして貯蔵します。動物が大量に蓄えうるのは脂肪だけで、カロリー摂取が消費量を上回ると超過分は脂肪として蓄えられます。





 トリアシルグリセロールは、小腸で胆汁酸と酵素リパーゼの作用を受け、遊離脂肪酸とモノアシルグリセロールに分解されます。遊離脂肪酸、モノアシルグリセロールは、ミセルとして小腸上皮細胞に吸収され、小胞体で酵素の作用を受け、トリアシルグリセロールとなります。新たに合成されたトリアシルグリセロールとリン脂質、コレステロール、たんぱく質などが上皮細胞の小胞体で組み合わさり、キミクロンとして胃腸のリンパ管に分泌されます。エネルギーが十分なときは、キミクロンは脂肪組織に運ばれ、脂肪として貯蔵されます。





 脂肪組織に入った遊離脂肪酸は、さまざまな酵素の作用で、トリアシルグリセロールに変わります。成熟した脂肪細胞では全容の99%がトリアシルグリセロールの滴粒で、それを包む薄皮状原形質の中に真核細胞としての全オルガネラがあります。人では皮下組織、筋肉、腸間膜組織に脂肪が沈着します。トリアシルグリセロールの貯蔵量は、40日間の絶食にも耐えられる量に達します。脂肪は、沈着したままでなく、絶えず溶出と沈着を繰り返しています。





 脂肪酸を分解するβ酸化系の酵素は、動物ではすべてミトコンドリア内膜と内部マトリクスに局在しています。これは長鎖脂肪酸のエネルギーを効果的に取り出し、ATPにするのに極めて重要です。パルミチン酸が完全酸化でCO2とH2Oになると、遊離するエネルギーの41%は細胞が仕事をするために利用できるATPとして保存され、残りは熱として放出されます。食品の栄養素として、脂肪が効率的なエネルギー源であることは明らかです。




posted by Kaoru at 00:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 食品の成分
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